Mahler 交響曲第7番ホ短調
(リーパー/グラン・カナリア・フィルハーモニー)
Mahler
交響曲第7番ホ短調
リーパー/グラン・カナリア・フィルハーモニー
ARTE NOVA 74321 30475 2 1995年録音 890円で購入
以下の更新から5年以上を経て、数多くのMahler のCDを購入し、そして聴いてまいりました。必ずしも「第7番がとくに!」ということでもなくなったが、お気に入りの作曲家であります。言及しているロスバウト盤は”理想的”とはずいぶんの持ち上げ方だけれど、最近”オーケストラが弱いな”との不遜な考え方もするように。あきまへんな。怒濤の如く(いつのまにか)増え続ける音源に対して、敬意の念を忘れぬことを自戒に、このリーパー盤を再聴いたしましょう。(購入当時はこの価格でも存分に激安であった)
結論的に”端正な清潔系”Mahler か。NAXOS、ARTE NOVA、二大廉価盤レーベルに膨大なる録音を残すエイドリアン・リーパーは、名作に独自の隈取りを付けることなく、むしろ作品の持ち味を生かす指揮者だと思います。スケール大きくはないが、仕上げはていねいなんです。グラン・カナリア・フィルは本拠地スペイン領グラン・カナリア島ラス・パルマスのオーケストラだそうで、明るい響き、すっきり整った軽快なるアンサンブルを聴かせます。知名度で判断する以上の価値有。適度でクセのない残響と奥行きが美しい録音。
思いっきり気怠く、遣る瀬ない第1楽章だって清涼なる空気が流れるようでした。その代わり第2/4楽章の「夜の歌(セレナード)」には濃密官能的な闇は感じられない。少々さっぱりと美し過ぎて味付けが(あまりに)足りないか。第3楽章「スケルツォ〜影のように」は、淡彩なる管、そして弦がさらさら流れるようであって、これは演奏の個性と作品の方向が似合って悪くないと感じます。
これは「遣る瀬ない」とか「濃密官能的な闇」とか、聴き手が勝手に先入観を持つからの評価でしょう。第4楽章(第2セレナード)にはギターとマンドリンも入るが、これぞあるべき「窓下、愛の語らい」を表現していると考えれば、まさに清純派の「セレナード」そのものの密やかな”愛の歌”であります。自己主張は強くないが、グラン・カナリア・フィルの各パートはまったく見事な技量であって、弦の涼やかなアンサンブルなど特筆すべき洗練であります。木管のていねいな表情付けにも驚くばかり。(この楽章、このCDの白眉)
さて、問題の終楽章。華々しく金管が鳴り続けるが、威圧感は存在せず、もちろん”露西亜風刺激的大爆発”でもあり得ない。力感に不足するかもしれないが、この少々やかましい楽章にはそのほうが望ましいんです。かつてない清涼な味わいに充ちたMahler であり、大編成のオーケストラとは思えぬ風通しの良いアンサンブル。面白み、点では少々物足りないかもしれないが、あちこち(他の演奏を)聴いてきて、辿り着くような”無添加”のような存在感を持った個性だと思います。 (2006年1月13日)
このCD、おそらくARTE NOVAでは最初に買ったはず。NAXOSから移籍した(?)リーパーが、CD収録時間いっぱいの79:25頑張ってくれています。つまり、(もちろん)演奏家の珍しさと、価格狙いで買ったもの。
今年(2000年)の夏は激暑だけれど、体調は心身共にまぁまぁで濃厚なMahler でも平気です。昨年は夏バテで、つめたく冷やしたSibelius とか室内楽など聴いておりました。BRILLIANTの激安Mahler 全集を買ってしまったが、それを聴く前に在庫の棚卸しをしたら、いやもう、出てくること出てくること。これも、そんなこんなのウチの一枚なんですよ。
第7番はお好きですか。「Mahler のなかでは一番人気がない」とのことですが、ここ10年くらいは新しい録音が続いています。ワタシは好きです。この曲は、思いっきり怪しく、おどろおどろしく、不気味に演奏して欲しいもの。ロスバウトなんて理想的。でも、やはり新しい、明快な音質で聴きたい。オーケストラの力量ももちろん問われます。
リーパーはNAXOSで聴く限り、ややスケールがこじんまりしていたし、地味な印象でした。ましてや「グラン・カナリア・フィル」でしょ?このCDは買った当時聴いていたはずだけど、印象がない、というか記憶が飛んでいました。で、今回数年ぶりに確認してみて驚き。うん、こりゃ掘り出し物だ。
まずオーケストラが上手い。やや明るすぎではあるが、アンサンブルが上質でよく鳴っています。どのパートも自信を持って演奏しているようで、瑞々しい。少々軽めではあるが、こんな明快な演奏に仕上げてくれるとは、ちょっと信じられない気持ち。もちろんリーパー自身の熟成というか、修行の成果もあるのでしょう。録音極上。
この曲、第2・4楽章が「セレナード=夜の歌」なんですよ。だからその辺りは、夜の悩ましい闇、というか、湿度が夜霧のように充満するような演奏であって欲しいもの。で、リーパーさんはどうかというと、爽やかなんですね。陰影じゃなくて、常に柔らかな日差しがあたっているような演奏。とても気持ちよく聴けるが、こんな健康的なMahler じゃいけないかも。
でも、曲の構成はとてもわかりやすい。聴くのがツラかったり、いやになったりしません。Mahler 特有の美しい旋律、特異な音色が理解しやすい。繊細で、耳にとても快い。夾雑物がない。清楚。きれいすぎ。でも、こんな演奏も悪くない。80分に及ぶ長丁場も飽きさせません。
その後、リーパーは全集を完成したのでしょうか。(してないですよね)他の演奏も聴きたくなりました。第7番は、最終楽章のどうしようもなく内容のない音楽に愕然とします。彼がなぜそんな音楽を書いたのか、という理由は「グスタフ・Mahler 」(柴田南雄著。岩波新書)をご覧あれ。(2000年9月8日更新)
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