Mahler 交響曲第7番(ハンス・ロスバウト/ベルリン放送交響楽団)
Bruckner 交響曲第4番(オットー・クレンペラー/ウィーン交響楽団)
Mahler 交響曲第7番ホ短調「夜の歌」
ハンス・ロスバウト/ベルリン放送交響楽団(1953年録音)
Bruckner 交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」
オットー・クレンペラー/ウィーン交響楽団(1951年録音)
VOX CDX2 5520 2枚組1,300円で購入(これは中古。今となっては高いね)
2005年再聴。VOXBOXのシリーズは結果的に世間相場の価格に落ち着いて、息長く販売されているようです。新譜も有(過去録音の寄せ集めが多いようだけれど)。但し、このCDが現役かどうかは不明で、(ネット検索では)2000年頃の通販カタログに登場するのみ。(南西ドイツ放響との録音もあるらしい)ワタシは第7番が大好きで、好んで聴く作品です。(歯磨き荒療治は酷い話しで、その後「ちゃんと再生できるプレーヤーもある」ことに気付いて、CDRにデータ焼いて保存。目出度し。傷音はあるけれどなんとか再生可能)
今回気付いたことがいくつか。まず、オーケストラの実体がわからない。1952年録音で、もし現ベルリン・ドイツ響であるベルリン放響(旧西ベルリン)だとすると、そのころの団体名称はRIAS交響楽団だったはず。じゃ、既に1945年「Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin」として演奏再開していた旧東ベルリンのオーケストラですか?ハンス・ロスバウトは東で指揮をしていたのでしょうか。VOXのチームは東ベルリンで録音ができたのか、それとも当時はまだ東西自由な往来があったのか・・・(このCD表記はSymphony Orchestra of Radio Berlin。単なる表記のいい加減さか?)
と、いうのもこのCD、録音は意外と明快で聴きやすいが、オーケストラがあまり(かなり)上手くないんです。(とくに金管。ティンパニも微妙にずれる。全体としてリズム感が良くない)ハンス・ロスバウトは、なかり怜悧にアンサンブルを整える人だから、彼の指揮技量に疑念はないはずなんです。フリッチャイのモノラル時代の録音って、こんな音でしたっけ?閑話休題(それはさておき)
気怠い、夜の闇に濃密な霧が音もなく広がるような・・・そんな演奏に間違いはない。第1楽章「ラングザム=ゆるやかに」の微熱に犯されたような歩み、第2楽章「夜の歌(1)」は遅く、妖しく、リズムのくっきりとした重い足取り。頓珍漢な打楽器の音色。第3楽章「スケルツォ」(影のように)は、流れるように微妙にテンポを変えながら、妙に落ち着かず、ぎこちなく早足で通り過ぎてしまう。木管の乱れも、異様さを強調するかのように響きました。バルトーク・ピツィカートも、ラスト、ティンパニも衝撃的なこと!
第4楽章「夜の歌(2)」は優美で甘いセレナード(ギターもマンドリンも入る。後のScho"nbergを連想させる)だけれど、どことなく流麗ではない、冷静な演奏ぶりか。この辺り、夢見るように美しい音楽だけれど、悪夢かも知れませんね。ホルンは自信なさげに吹いております。バカ騒ぎ終楽章はティンパニの「村祭り太鼓」風に始まるが、このリズム感がおおいによろしくない。しかも(録音故か)デリカシーに欠ける(鈍重なる)響き。勇壮なトランペットは高音で破綻し、結果、ノーテンキな音楽になりきらない、怪しさラストまで満喫させます。走らない。テンポは不自然に揺れ、むしろ遅く、しっかり足取りが重苦しい。そして喧しい。
先入観(モノラル録音、セピア色のジャケット写真)か、暗く、洗練されない、響きは濁って、まったくこの作品に相応しい色合いに仕上がりましたね。ワタシの「第7番嗜好」の原点にある録音でした。
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オットー・クレンペラーのBruckner 交響曲第4番は十八番(おはこ)だったんでしょうか。(ライヴ含めて5種ほどCDが出ている)1963年フィルハーモニア管との録音(これだってけっこう速い)より更に10分弱、速めのテンポで燃えるような”乾いた”演奏。そんなに急いでどうするんだ!的「ロマンティック」の欠片もない、疾風怒濤の世界。
でもね、アンサンブルはしっかりしているし、ノリノリで、聴いて楽しめる演奏になってますね。「鬱蒼とした独逸の森に響く狩りのホルン・・・」みたいな世界とはまったく無縁。ウィーン響は、先のベルリン放響(西?東?)よりずっとしっかりとして、演奏の造形に破綻はないんです。細部を流しているわけじゃない。でも、「間」などまったくなし、旋律の末尾をばっさり切って疾走するオットー・クレンペラー。かつて聴いたことのない異形のBruckner。
いやこれはけっこう楽しみましたね。元祖・爆演系Brucknerか。 (2005年5月19日)
Mahler やBrucknerの録音は、新しいに越したことはない。このCDも、中古で売っていなかったら買ってません。(新品で買ってもあまり価格は変わらなかった)ハンス・ロスバウトのほうは、たちの悪い傷がついていて、ちょうどLP時代に針傷の音がしたり、飛んだり(!金返せ)する感じ。歯磨き粉で荒療治したら、なんとか聴けるようになりました。(お勧めしない方法)
Mahler の第7番は一番人気がないそうですね。ワタシは8番以外はみんな好きで、7番とて例外ではなく、気に入っています。なんか、いかにもおどろおどろしくて、無定見で、ロマンティックで大好き。この曲はぜひもと上品、かつ不気味に演奏して欲しいもの。ハンス・ロスバウトの演奏は、イメージにピッタリ。
ところで、Mahler を聴くときに必須の教科書は、柴田南雄「グスタフ・マーラー」(岩波新書280)。ワタシのようなド・シロウトにも実にわかりやすく、深く、詳細。第1楽章冒頭の、なま暖かいような不器用な金管は「テノール・ホルン」だそうで、柴田先生は「下品で、安易に音が出すぎる。深みに欠ける」とおっしゃってますが、へへへ・・・ワタシゃ好きですね。
たしかに、第1楽章はなんかまとまりがつかなくて、ほかの曲の亜流のようでもあり、きちんと聴かせるのは容易ではない感じ。第2楽章と第4楽章が「夜の歌」と呼ばれる所以のセレナードであって、この曲の白眉。ホルンのやるせない旋律から、そろりそろりと重々しい足どりの行進曲風の第2楽章。テンポも揺れます。ギターやマンドリンが、夜の濃密な闇を感じさせる第4楽章。Mahler のほかの作品では聴けない、深い溜息のような美しい音楽。
第3楽章がこの作品の中心をなしてるそうで、まともで技巧的、鋭いワルツになっています。
最終楽章はノーテンキというか、バカ騒ぎというか、いままでの蓄積をすべて吹き飛ばしてしまうような、違和感溢れる明るさ。このCDでは2枚目にまたがっていて、結果的に鑑賞には便利。ハンス・ロスバウトはわざとギクシャクさせたような、不思議な演奏ぶり。(わざと下手に弾いたような・・・・もしかして本当にヘタクソなオーケストラかも)
旧西側のベルリン放送交響楽団(と思う)と、ハンス・ロスバウトの組み合わせは珍しい。この人のアンサンブルに対する神経質さは並ではなくて、旧い録音ながら「聴こえない音符はない」といった「明快」さ。「明快」は明るさを意味せず、冷徹な切れ味を感じさせますね。ケーゲルのような「不機嫌さ」「怒り」でもなく、もっと無感情でクール。美しく、怪しい、いままでこの曲を聴いたウチのベストの一枚と確信。
オットー・クレンペラーの「ロマンティック」は、Mahler の後に続けて聴く気力は沸きません。考えてみれば、かなり無理矢理なカップリング。
これはこれでひじょうに立派な演奏で、1950年代辺りの彼の録音はどれも感心しますね。この演奏がおもしろい。
快速のテンポ、勢いグングンで飛ばす情熱の演奏。後年のオットー・クレンペラーとはかなり違っていて、フレージングも明快。低音はよくきいて重心は低いものの、へんな貫禄とは無縁の疾走ぶり。そしてノリ。
VSOはいつになく芯の通った音色で鳴っていて、後半に行くほど熱くなって感動します。(管楽器の音色の深さはウィーン・フィルにかなわないけど)
第2楽章の途中でヴァイオリン・ソロになるのが珍しい。(これはオットー・クレンペラー独自の版のよう)全曲51分はかなり短いと思うのですが、Brucknerの版のことはよく知らないので、何とも云えず。
若々しいというか、晩年の熟成とはイメージ一新の元気な演奏で新鮮です。激演。旧い録音ですが、音の悪さは気になるほどでもありません。(少なくともワタシは)
かなり雰囲気は異なる演奏ですが、現代では絶滅してしまった個性的で、聴き応えのある演奏でしたね。1950年代って、まだ第2次世界大戦の余韻が残っていた頃でしょうか。ベルリンとウィーン、音楽都市の二番手のオーケストラによる貴重な録音。
更に・・・・・・・。傷が付いているMahler のほう(とくに第4楽章)が、音飛びしたり、ま、歯磨き粉というのも荒療治過ぎるので、ものは試しとCDRにコピーしてみました。すると、傷のノイズも正確にコピーしてくれて、これはこれとしてエラーは発生しなくなりました。「矛盾を固定した」みたいな感じですが、LPの傷と思えば懐かしい・・かも。演奏は最高。音質も悪くない。(2001年6月1日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】●愉しく、とことん味わって音楽を●
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