Mozart 交響曲第41番ハ長調「ジュピター」(ヨゼフ・クリップス/イスラエル・フィル)
交響曲第40番ト短調K.550(ズービン・メータ/イスラエル・フィル)


BELART (英DECCA録音)461363-2 Mozart

交響曲第40番ト短調K.550

ズービン・メータ/イスラエル・フィルハーモニー(1978年録音)

交響曲第41番ハ長調K.551「ジュピター」

ヨゼフ・クリップス/イスラエル・フィルハーモニー(1958年録音)

BELART (英DECCA正規ライセンス)461363-2 300円

 以下の更新は1999年頃と思います。珍しい(珍妙なる?)組み合わせのCDであって、その後、続々と復刻されるヨゼフ・クリップス(1902〜1974)の音源(ほぼ現役です)に比べ、膨大なる録音を誇るズービン・メータのほうは、所謂人気売れ筋の古典的な作品のCD復刻がなかなか登場しません。あれほどの知名度と実績で、Beethoven の交響曲全曲録音が揃わないのも不思議です。結果的に、このMozart のト短調交響曲録音は貴重なCDとなりました。「廉価盤市場対応」である「BELART」は、もう製造中止かな?中古では、時になかなか興味深い出物もあります。

 じつは前回更新時(というかごくごく最近まで)メータ/「イスラエル・フィルハーモニー」を「ロサンゼルス・フィル」だとずっと信じておりました。(大恥)久々、スリーヴ表記を見て驚愕!コメントもエエ加減だったが。これが演奏評価として難物でして、どこも悪くはないし、作品を楽しむという点で不足もなし。でもね、細かいニュアンスとか、デモーニッシュな歌とか、そんな個性は感じさせない(意外と)フツウの演奏か。それは20年前の録音、少々音質的にも草臥れたクリップスの「ジュピター」が始まるとはっきりと比較できて、優雅ふくよかとは言いかねる管弦楽を率いて、優しい風情漂う”味わい”溢れました。メータにはそれが足りない?もっと色彩的で骨太な作品が似合うのか。

 名曲ト短調交響曲は、ウェットで骨太な響きであって、しかも第1楽章提示部を繰り返して下さるのも好みであります。アンサンブルの緊張感と力感が・・・が、音楽が筋肉質なんだなぁ。健康的すぎというか。これは好みの問題だから、メータのファンの方々には申し訳ない。これは第2楽章「アンダンテ」、第3楽章(劇的)「メヌエット」、第4楽章(やはり劇的)フィナーレでも味付けが変わらない。コース料理には味付け、食感の軽重メリハリがないと。どれもしっかりと濃いめ、似たような味付けではワタシには少々苦しい・・・

 大先輩筋のヨゼフ・クリップスは、少々録音が苦しい(ステレオ初期英DECCA特有の”ボワンとした”洞穴のような響き)し、後年コンセルトヘボウとの録音(1972年)との関係でも、少々不利な存在でしょう。こちら繰り返しなし。後年、それこそメータ辺りがアンサンブルを鍛えた成果かも知れないが、この時期のイスラエル・フィルは、強靱なるアンサンブルとは言いかねる水準であります。各セクションに色気が不足するのは録音のせいか。

 それでも馴染みの優しい、ふっくらとした旋律の歌を聴いていると、ほっとしますね。けっしてムリしない。柔らかいニュアンスの連続。緩叙楽章の適性はもちろんだけれど、終楽章の決然とした部分でも優しさを止めない。低音やアクセントを強調しない。「天上から天女が舞い降りてくる・・・」第3楽章の優雅なメヌエットは、シューリヒト以来の典雅なテイスト体験でありました。

 終楽章は、緩いワケではなくて、リズムはしっかりと的確に打ち続けました。音質さえ我慢すれば、これはこれで貴重なる気品気高い演奏であります。

(2006年12月15日)


 このレーベルは、老舗が蔵出しの旧い在庫を持ち出してくるから油断できない。
 同じ曲、BELARTレーベルで「フリッチャイ/VSO」の個性的演奏も出ているのが不思議、かつ多彩な音源の証明でしょう。行きつけのレコード屋の在庫処分で(ということはもう廃盤?)300円でした。(NAXOSみたいに系統的な在庫を持たないところが根性なしだ)

 40番は、メータがLAPO時代の最終盤に録音した興味深いレパートリーのはず。後のNYPO時代とは裏腹に、当時このコンビの評価は高かったのも夢のまた夢。

 このオケ特有の、ややウエットで肌理の粗い音色を効果的に歌わせています。
 輝くような響きはないものの、オーソドックスで骨太な音色、弦の泣かせかたは独特のおもしろさ。オケの響きは深くて技術的な水準は高いと思います。繰り返しの実行もメータらしい。3楽章メヌエットが白眉。

 この人は、ドイツ・オーストリア系の古典物の系統的な録音が少ないみたい。メータのCDはほとんど聴いたことはなくて(ウィーン・フィルとの「復活」とFM放送で数度)、廉価盤も出ているようだし興味が出てきました。
 何度も来日していて「ダメになった」との噂ですが、若くて勢いのあったLAPO時代の旧い録音を(格安で)もっとたくさん出してもらえないものでしょうか。

 「特定の演奏家は集めない」という主義の私としては、ほとんど唯一例外だったのはクリップス/ACOの交響曲第21番〜41番(Philips)。2〜3年かけて少しずつ、みつけては買い集めました。1枚当たりの単価は平均1,300円くらいになったと思います。
 6枚揃った翌年にセット物で格安な輸入盤が出たときは、少々ショックを隠せませんでした。ま、こういうのは少しずつ集めるのも楽しみのウチですから。(と、自分を慰めている)

 DECCAの旧い録音で、イスラエル・フィルとの「ジュピター」が存在することは知識としては知っていました。こんなかたちでCD化されているとは、という感慨。

 クリップスは、どんな曲でも肩の力が抜けて、自然体で味わい深い演奏だと思います。
 力が抜けすぎで弱い、スケールが小さい、個性が感じられない、といった評価もあるでしょう。薄味に見えながら、噛めば噛むほど味わいがあるのがクリップスの真骨頂。「ほんわかとして、口当たりのよいウィーン風」の演奏なのです。他には絶対ない個性のすばらしさ。

 ここでの演奏も、こんなにやさしい、力みのない演奏はもうこの世にないでしょう。第2・3楽章あたりが彼の特質に合っていますが、最終楽章のわざと抜いたような響きにも痺れます。

 音質とオケの状態は、コンセルトヘボウ盤より劣ります。1999年に国内盤でCD化され、帯に「世界初CD化」なんて書いてありますね。じゃ、このCDはなんなんでしょ?)
 イスラエル・フィルは昔からけっこう録音があるのですが、響きが薄くて巧いオケとは思えませんね。もっとも実演は聴いたことがありませんし、旧い録音ばかり聴いた感想なんですが。最近はメータと親しい関係ですよね。

 ほかのクリップスのMozart では、LP時代にはRPOとの「ハフナー交響曲」も持っていて、これも自然体のいい演奏でした。
 チェスキーでCDになっていたかどうか、私は見たことはありません。


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written by wabisuke hayashi