Khachaturian/Kabarevsky/Tchaikovsky/Rimsky-Korsakov
管弦楽曲集(キリル・コンドラシン/RCAヴィクター交響楽団)


RCA LPデザインRCA LPデザイン Khachaturian

組曲「仮面舞踏会」

Kabalevsky

組曲「道化師」作品26

Tchaikovsky

イタリア奇想曲 作品45

Rimsky-Korsakov

スペイン奇想曲 作品34

キリル・コンドラシン/RCAヴィクター交響楽団/オスカー・シュムスキー(v)

RCA LPデザイン 1958年録音

  ヴァン・クライバーンのチャイコフスキー・コンクール優勝を受けての亜米利加凱旋公演に帯同した Kirill Kondrashin(1914ー1981露西亜→阿蘭陀)が米RCAへ録音を残したもの。オーケストラは東海岸の録音用団体、コンマスは著名なオスカー・シュムスキーでした。以前にネットより入手した音源は音がちょっと濁って残念、ようやくかつての輝きを感じさせる音質再入手出来、20年ぶりに再聴いたしました。

 Khachaturian 劇音楽「仮面舞踏会」からの組曲編成は1944年、ニ管編成だけどティンパニ、バスドラム、スネアドラム、ウッドブロック、シンバル、シロフォン、グロッケンシュピールが入るのはいかにも彼らしいリズムと色彩重視でしょう。 妖しく濃厚な官能を感じさせるWaltzに始まり(4:29)Nocturneはホルン先頭にしっとり静謐、ここにシュムスキーのヴァイオリン・ソロが切なく歌います(3:51)Mazurkaはいつもの素朴な民族的リズムより激情を感じさせ(2:43)Romanceは静かな嘆きの涙。ここはトランペットが印象的(3:47)Galopには馬鹿騒ぎっぽいユーモラスと熱気に溢れました。途中突っかかったような変拍子もオモロいところ。(3:06)ちょいと泥臭い、最高の旋律が続きました。オーケストラはパワフル、骨太に明るく鳴りきって表情豊かにアツい演奏。

 組曲「道化師」はユーモラスに軽快。児童劇「発明家と道化役者」付随音楽より1940年に初演された組曲編曲だそう。こども向け作品なのですね。Dmitri Kabalevsky(1904ー1987露西亜)ってこんな作風なのかと信じて、他の作品を聴いたらけっこうシリアスに晦渋な作風に驚いたものもありました。これも二管編成に+ティンパニ、シロフォン、トライアングル、タンブリン、スネアドラム、バスドラム、シンバル、更にピアノが入ります。浮き立つように軽快なPrologue: Allegro vivaceから始まって(1:09)Galop: Presto「道化師のギャロップ」は運動会に必須の音楽(Wikiにもそう書いてある)誰でも知っている駆け足(1:33)March: Moderato(1:16)Waltz: Moderato(1:22)Pantomime: Sostenuto e pesante(1:53)Intermezzo: Allegro scherzando(0:51)Little Lyrical Scene: Andantino semplice(1:10)Gavotte: Allegretto(1:45)Scherzo: Presto assai e molto leggiero(1:47)ラストは打楽器総動員掛けて、華やかにEpilogue: Allegro molto e con brio - Senza ritardandoにて終了。(2:18)どれも短くユーモラスに親しみやすく、賑やかな喧騒を感じさて、あっという間に過ぎ去る重量級演奏。

 残り2曲分、露西亜音楽の名曲はもともと別LPだったようです。イタリア奇想曲はトランペット(+コルネット)のファンファーレに始まって、やがて弦による葬送行進曲風に暗鬱な歩みへ至ります。そして一転イタリア民謡「美しい娘さん」旋律が木管により明るく歌われて、それは金管に引き継がれ、華やかに優雅に盛り上がってオーケストラの技量はなかなかのもの。(ここまでが第1部)続いて第2部は突然の爽やかに軽快な疾走、そして再び暗鬱な歩みへと収束します。第3部はMendelsshonの交響曲にお馴染み、ちょっと不安げに快速タランテラのリズムが躍動します。この辺りのノリも最高。第4部は「美しい娘さん」の旋律が堂々たる歩みに戻って、この辺りのタメも堂々たるもの。タンバリンの音もリアル。ラスト第5部はタランテラの快速リズムが戻ってテンポ・アップにクライマックスを迎えました。この作品のキモは金管の爆発でしょう。(15:55)

 スペイン奇想曲は、金管も賑やかなお祭り騒ぎっぽい「アストゥリアの舞曲(Alborada)」から開始(1:17)「アストゥリア民謡 夕べの踊り(Variazioni)」一転して静かな祈りの音楽。弦が切々と歌って、遠いホルンやフルートも効果的な変奏曲(5:02)そして再び「アストゥリアの舞曲(Alborada)」の喧騒が戻ります。ここにオスカー・シュムスキーのヴァイオリン・ソロ登場。(1:12)「シェーナとジプシーの歌(Scena e canto gitano)」これはBizetの「カルメン」を連想させる妖しい西班牙風旋律、再びヴァイオリン・ソロ、ハープもたっぷり見せ場を作って、ノリノリのリズムが熱狂するところ、最高の盛り上がり。ラストに向けてテンポを速めて(4:38)「アストゥリア地方のファンダンゴ(Fandango asturiano)」Soler辺りで馴染んだ熱狂するリズムにカスタネットも映えて、オーケストラは全員総動員、華やかに全曲を走り抜けて重量級サウンドにテンポ・アップして文句なしのラストを迎えました。(3:05)骨太なコンドラシンの統率、音質的にもRCAヴィクター交響楽団のパワーにも文句なし。

(2024年2月3日)

RCA(新星堂) ARC8  2004年再聴。このCDは現役です。「音の状態は、やや繊細さに欠けるもののしっかりとした優秀録音」(かなり以前の感想)〜いえいえ、ここまでの鮮明なる生々しい録音は滅多に出会いません。例えば「スペイン奇想曲」のカスタネット、トライアングルの位置関係の明確さ聴いてちょうだい。全体として「大爆発連続」の演奏だけれど、響きが濁ったりしないんです。

 「イタリア奇想曲」って、ドラティ/ロンドン交響楽団(1955年録音!)の目が覚めるのような演奏を聴いても思うけど、演奏・録音とも「進歩」ってなんなんの?という疑念ムクムク状態へ。いやぁ、なんたる鮮度。圧倒的ド迫力。オーケストラが骨太、明るくコクのある響き(これは木管に強く感じる)、そして集中したアンサンブルは非常に優秀です。絶好調時のニューヨーク・フィルによく似ている。金管の咆哮はもちろんだけれど、弦の繊細な味わいにも欠けておりません。

 選曲が凝ってますよね。アメリカ合衆国では「ロシアもの」は人気だそうで、「ソヴィエット(当時)の実力派・コンドラシンはんなら、こんな曲演ったら受けまっせぇ」的素晴らしき狙いピタリ・ど真ん中。「イタリア奇想曲」「スペイン奇想曲」も「ロシアもの」定番有名曲だし、押し出し立派だけれど、オーケストラの個性でしょうか、毒々しいほどの金属的エグい「ロシア系爆演」ではありません。センスとしては「チカラ一杯の西欧系」〜ちょっとリミッター外してみました、方面演奏だと思います。バランス感覚に支えられた爆発か。

 で、幼稚園・保育所・小学校低学年運動会定番の「道化師」でしょ?バカにしちゃいけないよ、的多彩な、楽しい作品です。だいたいほかに録音が存在するのだろうか?ネット検索してもコンドラシン盤しか出てこないけど。「仮面舞踏会」のワルツっていいですよね。帝政ロシアって、西欧フランス文化の影響モロだったらしいけど、こりゃ「哀愁のジンタ」でっせ。日本人にはこちらのほうが体質に合うかも。で、ラスト「ギャロップ」のニギニギしい大騒ぎ(途中けっ躓いて変拍子リズムになっちゃう)〜しっとり黄昏れるかな・・・なんて油断させつつ、やっぱり前進全速で終了。

 演る側も、聴く側も、けっこう体力勝負的作品であり、演奏です。

(2004年5月14日)


 ワタシにとって、LP時代からお気に入りでした。すが、4曲揃ってCD化されているのは珍しいようですね。(1999年始めにオリジナルCD化)おそらく、クライバーンがチャイコフスキー・コンクールで優勝し、凱旋公演に同行したコンドラシンがニューヨークで録音したものでしょう。

 オーケストラは録音用の優秀なオーケストラだそうで、シュムスキーがコンマスを務めているもの。「スペイン奇想曲」のヴァイオリン・ソロを勤めています。(立派!)音の状態は、やや繊細さに欠けるもののしっかりとした優秀録音。

 カバレフスキーとハチャトゥリアンが珍しい曲でしょう。「道化師」は保育所や小学校の運動会でよく使われる楽しい曲。ハチャトゥリアンの曲は親しみやすく、濃厚でもの悲しく、美しい名曲です。お楽しみ小品集なのですが、けっこう演奏も難しそうで、こういう曲はオーケストラは上手くないと楽しくありません。

 オーケストラはものすごく上手く、骨太で、明るい音色。 コンドラシンはロシア風の泥臭さとはちょっと違うけれど、スケールも大きく、オーケストラを目一杯鳴らして爽快。全体としてにぎにぎしい曲ばかりで、濃い墨で一気に太字で仕上げたような演奏。ぴったりハマるとはこんなことを指すのでしょうか。

 「イタリア」「スペイン」なんかは、これだけ迫力と勢いのある演奏は滅多にないはず。冒頭のトランペットの音のつぶれ方〜音質が劣化しているんじゃなくて、往年の名演歌歌手がサビでドスをきかせる感じ〜から、もうなまなましくてたまりません。節回しが、固有のコブシが決まっていて、もの悲しさが半端じゃない。もう、こんな熱い、コクのある演奏は最近聴けなくなりました。

 怒濤のニギニギしさに圧倒されます。ここまでくると、時代の違いというか、失われてしまった情熱というか、たいへんなものが残されていた、とか、感慨深い。

 経過や背景が良く理解できませんが、60年代には「録音用オーケストラ」が活躍していて、このオーケストラのほかにも「RCA交響楽団」「RCAイタリア交響楽団」、CBSの「コロムビア交響楽団」(ロスとニューヨークにあったとか)、最近でも録音が出ている「ナショナル・フィル」、LP時代にときどき見かけた「セント・ソリ管弦楽団」なんてのもありました。

 もしかしたら、じつは聴いたことのある団体が「録音用であった」ということがあるかもしれません。(フィルハーモニア・スラヴォニカ?)「ストコフスキー指揮の彼の管弦楽団」なんてのもその系統でしょうか。マイナー好きなワタシとしては、なんとなくネーミング的にいかがわしい雰囲気がして興味があります。

(2000年7月15日更新)

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written by wabisuke hayashi