Mahler カンタータ「嘆きの歌」(ロジェストヴェンスキー/BBC交響楽団)


BBC RADIO CLASSICS 15656 91412 Mahler

カンタータ「嘆きの歌」

ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー/BBC交響楽団/合唱団/BBCシンガーズ/カヒル(s)/ベーカー(ms)/ティアー(t)/ハウェル(b)

BBC RADIO CLASSICS 15656 91412  1981年ロイヤル・アルバート・ホール・ライヴ  $1.99で購入

 7年ぶりの再聴であり、自分の音楽に対する緊張感の欠如を反省させさせられた音楽でした。

 子供の頃、若い頃は一生懸命”旋律”を丸々暗記しようと努力していたワケでして、お気に入りMahler の作品なのに7年を経て掌中に治まっていない事実。(じつはSibelius 「クッレルヴォ」でも似たような現象となっている)粘り強く聴き続け、長大・難解な作品にもいつしか一筋の光明を見出す〜そんな経験は稀有になっちゃいました。「おっ、これ安いじゃん」でキーボード操作/マウス・クリック一発で数日後帰宅するとブツ(CD)は届いている・・・で、聴き流し。罰当たり。

 ネット検索すると、どうやらこれは「最終稿の2部の前に初稿の第1部を置いた3部作の形でたびたび演奏・録音が行われるようになった」とのことで、この録音もそうじゃないか、と類推されます。「森の童話」(28:15)「吟遊詩人」(15:55)「婚礼の出来事」(18:37)の大規模作品であり、「第1交響曲の、憧れに満ちた旋律の片鱗が見え隠れします。ずっと後年の第6番の『悲劇的』な味わいも感じさせ」とは以前の感想だけれど、なるほど。作品の構成そのものがやや散漫であり、大爆発の”山”が見えないのもわかりにくいか(とくに長大なる第1部「森の童話」)。

 第3部「婚礼の出来事」の冒頭は、交響曲第1番ニ長調終楽章によく似ております。しかし、どーも中だるみがあって、うねるような昂揚感はついぞやってこない(激昂が単発で出現する印象がある)。声楽付き大編成オケ作品なら、「復活」「千人」のイメージがありますもの。ロジェストヴェンスキーのせいですか?声楽ソロには一流どころを揃え、BBC交響楽団も整って立派なアンサブルを聴かせていると思います。録音だって(ライヴだけれど)悪くない。

 息の長い、甘美で雄弁なる旋律があちこち絡み合い、最後は一体となってカタルシスへ〜という馴染みのスタイルではない。まだまだ”未整理”な感じ。声楽の分担も冗漫か?・・・などと傲慢なるコメント書き連ねたが、「嘆きの歌」はMahler を愛する者には必要です!でも、なかなか廉価盤では出現しないんですよ。

 ラスト、「じゃん!」と唐突に作品は終わって大拍手の嵐!置いていかれたのはワタシだけか。

(2007年10月12日)

 この曲、ブーレーズが早く取り上げていましたが、いまだに人気が出ません。新録音ボチボチという感じで、ましてや「廉価盤」となると期待薄。こうして、格安で出てくれるだけでも感謝しましょう。音楽は、まず音が鳴って、実際に聴かないと話しにならないのは当たり前。

 初稿は1880年に完成しており、この時Mahler はわずか20歳。自作のテキスト(といっても、グリム童話の焼き直しだそうだけれど)により「森の童話」「吟遊詩人」「婚礼の出来事」の三部に分かれています。ウィーンの音楽院で「ベートーヴェン賞」を取り損ねた作品だそう。(この辺りは 柴田南雄「グスタフ・マーラー」を参照)彼の、実質的な最初の大作でしょう。

 BBC響は、かなり合理化を進めている(特にBBCの地方オケ)らしいですが、それでもほかのオケに比べれば財政的に安定しているので、レパートリーは広く、大胆なのでしょう。ロジェストヴェンスキー時代の意欲的な取り組みのひとつ。音の状態は極上で、演奏も立派。

 この作品、あちこちに後年の成熟したMahler の響きが予感できます。数年後に完成される第1交響曲の、憧れに満ちた旋律の片鱗が見え隠れします。ずっと後年の第6番の「悲劇的」な味わいも感じさせて、約一時間それなりに楽しめます。でも、この作品がなかなか人気が出ないのは、わかるような気もする。

 ま、ひとつは言葉の問題もあるでしょう。でも、ドイツ語の通じる地域で盛んに演奏されている、という話も聞かないので、それが本質ではない。ワタシ、まだ数回しか聴いていないからこんな判断しちゃマズイのですが、この曲はとてもわかりにくい。全体像がつかみにくい。

 Mahler の交響曲は、どれもけっこう大編成で演奏時間も長いし、従ってLPもCDも高価でした。でも、CD〜円高時代〜価格破壊時代へと至って、手軽に聴けるようになると印象一変。バブル時代以降、ナマでの演奏会でも人気曲となって、すっかりお馴染みになってしまいました。聴き手の変化の問題でしょうか、また、演奏スタイル自体の問題でしょうか、スッキリとして、やたらと長々しいが、わかりやすい。美しい旋律が全編を支配していて、気持ちよく最後まで聴ける。

 いちど馴染んでしまうと、そうとうに旧い歴史的録音〜まだ、Mahler が前衛であった頃の〜も、楽しんで聴けるようになりました。ワタシが子供の頃は、第1番は別として、どの曲も、長く、苦しく、大音響で、混沌として、おどろおどろしくて・・・といった記憶でした。例えば、ワルター/ウィーン・フィル(DECCA録音)の「大地の歌」は、とてつもない歴史的証言を聴いているようで、エキセントリックな興奮を感じたものですが、いまだったらもっと別な感想がある。

 ロジェストヴェンスキーの演奏そのものは、明快で、旋律の歌わせ方もオーソドックス、アンサンブルも優秀。ジャネット・ベイカーの芯のある声質も最高でした。でも、この曲の全体像が見えないのは、ワタシの聴き方の浅さでしょうか。部分部分の美しさが、全体の見通しに結びつかない。ロジェストヴェンスキーが「Mahler のスペシャリスト」なんていう話しは聞かないから、彼の「構成感」の問題かも。

 ナガノの新しい録音が出たけど(未聴)、若手がこの曲の真の魅力を引き出していくのでしょうか。わかりにくい曲ではあるけど、ここで投げてしまわないで、もう少し聴き続けましょう。数年後に「開眼」するかもしれません。いずれ「Mahler の全集には”嘆きの歌”が不可欠」なんていう時代が来るかも知れません。(2000年9月22日)


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written by wabisuke hayashi