エフゲニー・キーシン(p) Chopin 名曲集(1984/89年)


エフゲニー・キーシン(p) Chopin   名曲集(1984/89年)BRILLINAT  92118/4 CHIPIN

ワルツ第14番ホ短調「遺作」
マズルカ第40番ヘ短調 作品63-2/第20番変ニ長調 作品30-3/第17番変ロ短調 作品24-4/第51番ヘ短調 作品68-4/第32番嬰ハ短調 作品50-3
幻想曲ヘ短調 作品49(以上 1984年ライヴ)
ピアノ・ソナタ第3番ロ短調 作品58(1989年)

エフゲニー・キーシン(p)

BRILLINAT 92118/4  4枚組 1,280円にて購入したうちの一枚

 米PIPLINE社がロシア・オスタンキノ放送の音源の権利を買い取ったか、借りたかしたようでして、YEDANG CLASSICSとか、もう少し前だと「RUSSIA REVERATION」 というレーベルでも(おそらく同じ音源)CDが出ていたと思います・・・んな、余計なる蘊蓄はどーでも宜しいが、とにかく、こんな新鮮で素敵な録音が、格安で手に入る時代になったことを素直に感謝しましょう。

 ワタシとCHPINのお付き合いは長いが、ルービンシュタインが馴染みかな?正直、アルゲリッチもポリーニにもピン!と来なかった罰当たり者だし、ビレット(NAXOS)の全集も途中まで集めたけど挫折しました。彼女のタッチって、少々叩きすぎで鋭いでしょ?キツいというか。でも、ぼんやりと甘い旋律を聴いているのは好きだな。(アシュケナージのChopin は聴いたことはないんです)

 1984年といえばキーシン12歳でっせ。小学校6年生〜正直、若い頃の録音であるのは(現在だって若いから)当たり前だけれど、聴き終わって調べてから驚きました。「表現はまだ練り込みが足りないが、若々しいストレートな表現が・・・云々」とかなんとか、そんな水準じゃないっす。これはこれで完成度高く、瑞々しい情感が溢れます。洗練され、細部まで入念に描き込まれた旋律〜流したり、素っ気ない・・・弾くのがやっと・・・みたいな世界とは別物でして、自然な歌、間、揺れが、もう巨匠のワザの世界。試しに目隠しで聴いてみるとよろしい。

 マズルカのゆったりとしたリズム、抑制され寂しげな表情〜強烈な打鍵がやってきても乱暴にならず、有名なる幻想曲(「雪の降る街を」)の粛々たる落ち着きに驚いていただきたい。

 1989年だってまだ17歳〜高校2年生ですよ。こちらはピアノ・ソナタという大曲だし、冒頭ちょっと集中力を欠く、というか、録音の感じが前半とかなり違います。少々、音場が広がり過ぎ、少々乾き気味で残響が足りない。これが曲が進むに連れて白熱するんです。第2楽章スケルツォのモウレツなるテクニック、第3楽章「ラルゴ」は弱音部分がリリカルで美しい。逆に言うと、大音量のところで少々空虚なイメージが存在するのは音質問題故でしょうか。

 最終楽章は有無を言わせぬ勢いと流れに乗って、壮絶な盛り上がりを見せます。「若さの躊躇い」とか「突っ走り」など微塵も存在せず、少々のミスタッチものともせず、デモーニッシュな燃焼へと至りました。拍手は収録されていないけれど、これはライヴでしょ?正直、これほどの水準とは・・・思っても見ませんでしたね。しかも、天才は現在まで天才であり続けるという奇跡。(2004年10月21日)


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written by wabisuke hayashi