Bruckner 交響曲第6番(カイルベルト/ベルリン・フィルハーモニー)
カイルベルト/ベルリン・フィルハーモニー TELDEC WPCS 6052 1963年録音 国内盤で税込み1,000円(1962年頃録音との表記だけれど、1963年3月10-14日 Lichterfelder Festsaleにて録音) 第9番と並んでLP時代の愛聴盤であり、1997年に購入したもの。先日、外人さんから(英語で)「ユズッテクダサイ」とメールが来たCD。なぜか再発されないし、この素晴らしき演奏はひとに譲るべきものではないでしょ? これ鳥肌モンの演奏でした。ハンブルク国立フィルの誠実かつ頑固なる音色にも圧倒されるが、ベルリン・フィルの圧倒的な技量と、カイルベルトの、なんといいますか〜ガンコ一筋というか、融通がきかないと言うか〜指揮ぶりと、あまりにピタリとはまってしまって声も出ません。 正直、久々に聴いて「第6番って、こんなに美しい曲だったの?」といった印象。1963年と言えばカラヤンがベルリン・フィルとBeethoven 全集の第1回録音を終了した頃で、もっとも精力的かつ上り調子だった時期。「美しい曲」だけれど、ものすごく「美しい演奏」という印象もある。繊細と言い換えても間違いではないでしょう。とにかくオーケストラがべらぼうに上手い。 欧州の伝統あるオーケストラには、演奏者一人ひとりの技術だけではなくて、自発的な、ひじょうに細かいニュアンスが感じられるんです。あちこちで繰り返される旋律〜Brucknerの場合、シンプルで呼吸の深い和音が繰り返されることが多いが、この細部のこだわりがまったくもの凄くて、抜いたところ、流したところが見当たらない。 カイルベルトの指揮ぶりは、まったく虚飾がないというか、旋律に妙なクセやへんな色気がないのがよろしい。たしかにこれ、ベルリン・フィルの音色で、鈍く輝くシルクのような弦の輝きと厚み(ワタシの貧しい表現ではドレスデンと似たような比喩となるが、こちらはいっそうゴージャス)、透明で良く歌う木管、うるささをまったく感じさせない奥行きのある、柔らかい金管。世代が変わった1988年の交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」(マズア)の演奏でも共通しています。 でも、この演奏はなにかが違う。よくワカランが、甘さ〜カラヤン特有の砂糖甘さ〜皆無。フレージングが清潔。「上手すぎて、音がスルリとで過ぎる」現象もない。どこにも特別なワザはないようだけれど、じつに堂々として男らしい。(これ男女差別?許して下さい、最近絶滅した昔の男のことです)リキみとは威圧感はないし、先にも言ったようにむしろ「美しい」といった印象がある演奏だけれど、なんともいえない風格みたいなものがあるんです。 客演指揮者との録音だから、すべて主席が演奏しているわけでもないだろうが、嗚呼、これコッホ(系)の鼻声のオーボエだなぁ、ツェラー(っぽい)思いっきりヴィヴラートのきいたフルートだなぁ、この凄いホルンの割れかたはザイフェルト(風)のド迫力、とは思うが、音楽として出てきた結果はずいぶんと違うもの。 第9番のほうが、カイルベルトの個性は明確に出ていると思うが、こちらはベルリン・フィルと上手く融合していて、別な魅力が生まれていると思いました。それと、蛇足ながら、ほぼ理想的な録音状態も特筆すべきでしょう。少なくともこれだけは、同時期のDG録音とは比べものにならないくらいの水準。(2001年10月26日)
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