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つまらん

実用的音楽

【♪ KechiKechi Classics ♪】 外伝


 「ノウハウ本」を買うのは恥ずかしい。例えば、息子と上手く行かないとき、「男の子を育てるにはどうすればいいか」みたいな本は買えません。女房はそのへんがわかりやすくて、そんな本ばかり買いますね。「家庭円満のための風水」なんてね、ワタシゃ付いていけません。音楽でも同じ。片桐 卓也 「悦楽クラシック音楽講座」という本があって、はっきりいって冗談としか思えない「ノウハウ本」なんです。恥ずかしい。

 よく、バカらしいほど高い値段のコンピレーションもののCDが出ているでしょう。「頭の良くなるMozart 」とか。ああいう素人騙しは資源の無駄遣いでしかありません。場末の小さなレコード屋さんには、こんな類のクラシックCDしかない場合もあるから悲しいもの。で、この際ワタシが「こんな時にはこんな音楽」という冗談話しを作ってみることにしました。

<年の瀬に>

Beethoven 交響曲第9番ニ短調 作品125「合唱」〜いかにも王道を歩むワタシの選曲。いったい毎年12月になると、全国各地でなんど演奏会があるのか知らないが、まだまだ食傷気味になるぐらい増えていただきたいもの。カナのふったドイツ語で「市民合唱団」に参加するともっとよろしい。日常、まったく音楽に縁のない人たちが「親戚が出るみたいだし、一回行ってみるか」とばかり、各楽章ごとに拍手をしたり、美しいアダージョ楽章で身体を前後に揺らせながら深く瞑想したり、というのも微笑ましい。

 これは日本の文化なんです。21世紀もこのままで行って欲しい。理屈は要りません。バレンタイン・デーにチョコレートを配るようなもの。外国のあまり知名度のない団体も、このさいもっと積極的に日本に出稼ぎして欲しいもの。2000年10月30日の「ハイデルベルク・フィル」演奏会も楽しかった。

 CDは、あまり古い録音でない方が楽しめるでしょう。ジンマン、ガーディナーのような、スッキリと脂肪を抜いたような演奏は好みの分かれるところ。正直言って、ワタシはこれといってお気に入りの演奏はありません。合唱が華々しくて、楽しくにぎやかなのが望ましいが。

<新年を祝って>

J.Strauss 円舞曲「ウィーンの森の物語」〜ますます正攻法に向かうワタシ。お正月はニュー・イヤー・コンサートに決まってるでしょ?この曲のポイントは、甘く軽快なツィターの音色です。ここをヴァイオリンで代用するのは言語道断で、実演の音量バランスで小さく収録されているCDも気に食わない。鄙びて、少々野暮ったいのが良いんです。だから、ライナー/CSOの演奏は立派すぎていけない。(シュワルツコップさん、ごめんなさい)

 ウィンナ・ワルツは、ローカルのウィーンのオケが一番に決まっているんです。LP時代からの愛聴盤は、エドゥアルド・シュトラウス/ウィーン国立歌劇場管弦楽団。(LPではPHILIPSレーベルだった。その後見かけません。DATに保存)これがノンビリしていて、えもいわれぬ味わい深し。CDではペーター・ファルク(刑事コロンボか!)/ウィーン・フォルクスオーパ管弦楽団(PILZ CD160 303-5)。このリズム感はウィーンならでは。ウィーン・フィル?そんな演奏も出ていましたかね。

<心機一転、新たな決意に燃えて>

Mozart 交響曲第41番ハ長調K551「ジュピター」〜これです。個人的にこの曲に決めております。ま、10年に一度くらい、そうとうハイ・テンションで決意を固めるときもあるでしょう。どの楽章も胸に染みるが、終楽章フーガのホルンが極めつけ。理論的裏付けはないのですが、そういう曲なのです。(文句あるか)

 ジュリーニ/ニュー・フィルハーモニア(DECCA録音)の、細部まで明快に歌われた演奏にトドメを(勝手に)刺しますね。録音も最高。カラヤン/ベルリン・フィル辺りだと決意が鈍りそうでいけません。

<官能的で、エッチな気分に浸りたいとき>

Mahler 交響曲第5番 嬰ハ短調より「アダージエット」〜これもいかにも、という選曲。(意外性まったくなし)Brucknerが女性に人気がなく、マーラーは人気がある、というのは、こういう音楽が書けるかどうかの違いでしょうか。むせ返るような、濃厚で甘美な世界が広がってドキドキします。ワタシは低音のハープがミソと思いました。よほどひどい演奏でない限り、効果があります。録音が良いものを選びましょう。

対抗でDebussy 「牧神の午後への前奏曲」〜これはカラヤンの演奏でもよろしい。なにせツェラーの色気タップリのフルートが聴けますから。ワタシは上品なモントゥー/ロンドン響のが好き。女性はフルートがお好きでしょう。高校の吹奏楽では、フルートのパートはたいへんな人気らしいですので。

<人生を深く反省し、頭を垂れるときに>

Bach マタイ受難曲〜これも「いかにも!」音楽だなぁ。これ、じつはバッハさんが流行歌あたりから引用した、(当時の人々には馴染みの)旋律から組み立てているらしいけれど、ワタシみたいな無宗教人にさえ「宗教的畏敬の念」を発生させるような名曲中の名曲。

 バッハの音楽は、どんな演奏スタイルにも音楽の骨格が崩れないんですね。メンゲルベルクの「これ以上ない」というくらい濃い演奏でも充分感動するし、昨今のスッキリ系古楽器演奏でも胸を打つ。でも、あまりに人生の後悔に満ちあふれてしまうので滅多に聴けません。演奏は、録音がまともだったらなんでも良いでしょう。

<深い悲しみに浸るときに>

Barber「弦楽のためのアダージョ」〜作曲者のバーバーは、この曲があちこちの葬儀に使われるのを嫌っていたそうです。ところが彼自身の葬儀もこの音楽が流された、という逸話には大笑い。(しちゃマズいか)そのくらい見事に「悲しみ」が表現されます。いかにもストレート勝負。オーマンディ/フィラデルフィア管の演奏で。(じつはこれしか持っていない)

 対抗はMozart ピアノ協奏曲第27番ロ長調K595〜で。この曲じゃなくても、クラリネット協奏曲も良いんですが、晩年のMozart には、虚飾を突き抜けた透明な悲しさがあって、もしかしたら聴き手の心境がそのまま反映するかも知れません。演奏はむずかしいですよ。ワタシはクリーン/スクロヴァチェフスキ/ミネソタ管(CarlTON 30371 00592)が、最近気に入っています。

 え〜、キリがないのでこのページ最後に

<恋人とともに>

Misia「EveryThing」〜ここんとこ、こればっかりなんですよ。MDをリピートにして一日10回は聴きます。7分弱かかるんですよ。ワタシは、演歌は趣味ではないが、その完成された節回しや声量、オリジナリティの水準には敬意を表します。若いアイドルも可愛らしくてじゅうぶん楽しみますが、Misia初のNo.1ヒットの完成度には打ちのめされた気持ち。

 歌詞は愛の確信に満ち、Misiaの心のこもったスケール豊かな歌唱力、囁くように、語りかけるように広がっていく歌。リズムに乗っているが、うるさくならない配慮あるバック。だいたい5年から10年に一度くらい、こんな名曲に出会いますね。


 う〜む、じつにつまらなく、内容のない一文でした。「云々するときはこの音楽」なんて、ホント意味ないというか、アホみたいですねぇ。そんなもん(CD、本)に金出すのはドブに捨てるのと一緒ですよ。(2000年12月22日)


「本で聴く音楽」


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi