Berlioz イタリアのハロルド(インバル/フランクフルト放送交響楽団)


Berlioz イタリアのハロルド(インバル/フランクフルト放送交響楽団) Berlioz

イタリアのハロルド 作品16

インバル/フランクフルト放送交響楽団/バシュメト(va)

BRILLIANT 99999-2 1988年録音  11枚組3,582円で購入したウチの一枚。

 ま、安いし勉強だ、ということで購入したBerlioz11枚組ボックスより。「幻想交響曲」の自分なりの評価はイマイチでした。つい先日、オーマンディ盤(1965年)を聴いて、ずいぶんと楽しめました。この作品に出会っておそらく十余年・・・目覚めるのが遅すぎるぜ!幻想交響曲よりもっと旋律が素直で、金管の爆発も、ヴィオラ・ソロの妖しい音色も、あちこちたくさん聴きものでして、嗚呼、なにごとも先入観ではあかんなぁ、と反省しちょります。

 まず録音がはっとするほど新鮮で、タンバリンなどの打楽器もはっきりと位置関係を主張します。金管はクリアに濁りなく響き渡る。残響は短めだと思うが、どのパートも明快に分離し、しかも絶妙に溶け合って瑞々しさ、艶も充分。フランクフルト放響の精緻なアンサンブルは、この辺りがピークでしょうか。Berliozの個性が連想される旋律が頻出するが、シンプルというかわかりやすいというか、これは素朴な田園風交響曲か。40分という長さも適切です。

 第1楽章「山の中のハロルド、憂欝と幸福と歓喜の情景」〜冒頭、混沌としてようワカラン、ぐだぐだとした旋律でくじけちゃいけません。やがて、安寧に充ちたヴィオラ・ソロがしっとりと入って、これは絶妙なる美しさ。インバルもバシュメトも少々神経質ですか?いえいえ、繊細と表現してください。やがてオーケストラが絡んで(対話して)ゆったり、しっとり歌って、心象風景が移り変わる〜憂欝と幸福と歓喜ですな〜金管は「幻想交響曲」を想像していただければ、ちょうどあんな感じです。スパっとした切れ味有。

 第2楽章「夜の祈りを歌う巡礼の行進」〜この静かな歩みは巡礼だったんですね。旋律的には微笑みを絶やさぬような、敬虔な静けさが溢れました。オーケストラは洗練され、クール。あちこちに官能的なヴィオラ・ソロが登場します。第3楽章「アブルッチの山人が愛人に寄せるセレナード」〜楽しげにハズむように始まり、オーボエを先頭に牧歌的な旋律が続きます。この楽章のホルンはBeethoven の田園交響曲(終楽章)を連想しませんか。なんと平和な風景。

 第4楽章「山賊の酒盛と前の情景の想い出」〜幻想交響曲の「断頭台への行進」「魔女の祝日の夜の夢」に比べれば、もっと精気に満ちて明るい表情の音楽です。金管の切れ味、弦の細かい表情付け、打楽器の鮮度あるアクセント、ピタリとした集中した緊張感。お見事です。バイロン「チャイルド・ハロルドの巡礼」から霊感を受けた作品らしいが、そんなことは知らなくても(ワタシも筋は知らない)存分に、純管弦楽作品としても楽しめました。

 インバルの意図、オーケストラの響き、バシュメトのソロとも知的でクールでスリム、一糸乱れぬアンサンブルには”乱れてください!”、”もっと情熱を!”求める方もいらっしゃることでしょう。ワタシは、この少々神経質な演奏もなかなかよろしいと思いました。(2004年11月24日)

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written by wabisuke hayashi