Mahler 交響曲第6番イ短調
(ホルヴァート/フィルハーモニア・スラヴォニカ)


Classical Gold CLGLUX009    890円で購入 Mahler

交響曲第6番イ短調「悲劇的」

ミラン・ホルヴァート/フィルハーモニア・スラヴォニカ

Classical Gold CLGLUX009 890円で購入。録音年不明(MEDIAPHONのライセンス、となっております*後述 1981年の録音らしい

 このCDはずっと再聴してコメント付けたくてウズウズしていた一枚。おそらく4年ぶりくらいに再聴。一部では熱狂的な支持を得ているホルヴァート(1919年〜)の「隠れ名演奏」です。最近、売っていないかな?POINT CLASSICSではオーストリア放響とのクレジットだったので、そちらが正しいのでしょう。彼は1975年迄、このオーケストラのシェフだったのでその頃までの録音でしょうか。(DDD表示になっているが?)透明、自然で豊かなな残響が美しい。優秀録音。

 このオーケストラがおそらく「オーストリア放響である」というのは、ややカルめで素直な響きがいかにもそんな感じ。威圧感があって、深刻で重い曲調の第1楽章は、けっこうスッキリとして見通しがよろしい。意外や粘着質ではなく、しかも、アンサンブルがしっかりとして現代的で明快な感覚、というか、ややクールで美しい演奏だと思います。

 この曲って、いくらでも煽って「狂気すれすれ」みたいな切迫した表現可能でしょ?とくに第2楽章「スケルツォ」〜テンションに緩みはないけれど「金管の大絶叫」はありませんね。巨大編成オーケストラ大乱闘の混沌、みたいなことはなくて、鳴らないオーケストラではないが、ひたすら爽やか。バランス感覚有。弱い、ということではないが。おとなしい印象ありますか?勢いに不足はないでしょ。

 だから第3楽章「アンダンテ・モデラート」の静謐さ、涼やかさが光ります。ここもね、一発盛り上げ可能な中間部が存在します。ホルヴァートは「一発狙い」じゃなくて、小音量で、静かにていねいに、やがて切々と仕上げて下さいました。すべての音楽が遠方より流れてくるような錯覚。各パートに特別な艶や色気があるわけではない(ホルンもトランペットも素直すぎか)が、誠実な説得力〜涼風が吹き抜けるような〜には事欠かないでしょう。あれ?(楽しみにしていた)カウベルが良く聞こえない。

 人生の最終審判が、ハンマーによって下されるような悲痛なる最終楽章。ここも静かな〜弱いのではない。たとえティンパニが激打されても〜幻想的な味わいの開始です。「悲劇は忍び足で、そっと迫っている」といった風情か。第1楽章以上にいくらでも煽れる楽章だと思うけど、やはりブルー系淡色彩のクール。でもさ、29分でっせ、最終楽章だけでも。かなりテンション上げて、集中覚悟して聴くべき音楽だけど、ホルヴァートなら艱難辛苦せずラストまでちゃんと聴けます。

 物足りないですか?やっぱ、テンシュテットの劇的盛り上がり(狂乱か)が恋しい?チェレスタが妖しく聞こえないで、メルヘンしちゃマズいか。それでもやっぱりハンマーはショッキング!タイコが大騒ぎして、シンバルが派手派手しく鳴っても「うるさい!」とは感じません。(うるさいくらいのほうが、この曲では良いのか)テンポは最終版でようやく動き出します。ほら、ようやく火がついてきた。炎が上がってきた。

 ああ、そうか。このオーケストラは低音が弱いんだね。響きに芯と厚みも足らないか。録音原因かも知れません。先のカウベルなんかを代表に、小技の打楽器関係はもっと聞こえて欲しいなぁ、と、個人的願い有。やはり終楽章23:25でノイズが入りました。そんなこと別に気にもなりませんが。日本のマイナー系音楽愛好家は「爆演系」とか「狂気」とか好きだから、「爽やか端正」系は人気出ないかな?これは完成度の高いひとつの表現だと思います。(この勢いで「復活」も自分なりの再評価をしてみたい。2004年2月6日)以下は、このサイト開設初期のいい加減な文書、そのまま。

   


 79分という、CD限界までの収録は嬉しい。CDが金色しているのが「クラシカル・ゴールド」というレーベルの所以でしょうか。これはスタジオ録音。いくつかのレーベルから発売されていますが、いずれも価格が魅力。

 フィルハーモニア・スラヴォニカは幽霊団体名称らしいので、オーストリア放響あたりが実体でしょうか。(スロヴェニア・フィル?との情報あり)優秀な録音、オーケストラの艶やかなアンサンブル、自然に揺れ動くテンポ、どれをとっても一流の響きに間違いありません。目隠しテストで、オーケストラを言い当てられる人は少ないはず。

 マーラーのなかでも、ひときわヘヴィーで聴き応えのある「悲劇的」(この表記は日本だけの風習らしい)。カウベルやらハンマーやら凄い楽器勢揃い。この曲をスケール大きく表現できるかで、オーケストラと指揮者の真価を問われます。非情で切迫感あふれる第一楽章の行進曲、アルマのテーマとの対比は、充分な重厚さを持って表現されます。充実しきったアンサンブルによる悲痛な叫び。

 「重くどっしりと」という指示のある「スケルツォ」(諧謔曲)。不気味なリズム感。中間部のユーモラスな(シニカルではあるが)曲想の歌わせ方の上手さ。トランペットを中心とする金管の朗々としていること。緩徐楽章の安らぎに満ちた変奏曲はこのCD一番の聴きどころでしょう。オーケストラは濃厚な個性は感じさせませんが、清潔ですっきりとした響きが魅力。ホルヴァートの、細部まで配慮が行き渡った指示が誠実で、説得力もあります。

 文句なしの緊張感がラストまで維持しますが、終楽章にはもっと凄い演奏がほかにゴロゴロしている。どのパートも充実して鳴りきって、打楽器のド迫力、アンサンブルに文句は付けられない水準ながら、「狂気」のようなものが少々足りません。これは「復活」と違ってライヴならざるのが要因でしょうか。(終楽章23:25でノイズが入るのは、ワタシのCD特有の現象?)それにしても、ラストすべてが消えていったあと、全合奏の爆発が再来するところは何度聴いてもドキリとさせられます。

 ま、見かけたら、騙されたと思って買ってください。相当な高水準演奏で、満足させます。


比較対象盤

Mahler

交響曲第6番イ短調「悲劇的」 

テンシュテット/LPO  

EMI CMS 7 64476 2  1983年録音 12枚組8,990円で購入した全集より。〜最終楽章の迫り来る悲劇の結末に、一発で打ちのめされました。あまりのプレッシャーにそうそういつもは聴けません。彼の全集はどの曲も入魂の演奏で、EMI特有の腰の軽い録音、LPOのやや薄目の響きは気になりますが、それは枝葉末節なこと。

 但し、CD収録はメチャクチャで、第7番の終楽章が割り込んで、終楽章は第8番の前に押し出されて収録というお粗末さ。ま、85分でCD一枚に収録できないとはいえ残念。

【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi