Haydn ピアノ・ソナタ第3番 変ホ長調(第59番 Hob.XV1-49 )/ Mozart ピアノ・ソナタ第10番ハ長調K.330/
幻想曲とフーガ ハ長調K.394(グレン・グールド(p))
Haydn
ピアノ・ソナタ第3番 変ホ長調(第49番 Hob.XV1-49 )
Mozart
ピアノ・ソナタ第10番ハ長調K.330
幻想曲とフーガ ハ長調K.394(383a)
グレン・グールド(p)
1958年録音
SONY CLASSICAL ML 5274 80枚組28,340円にて購入
「21世紀は廉価盤の時代」「ここ数年、在庫CDの処分に尽力」話題は散々サイトネタとして使ってきました。グレン・グールドの「オリジナル・ジャケット80枚組」が出たときに、その入手を目指して棚中既存購入分をキレイに処分いたしました。ところが、処分が終わったところで熱は冷めて、「80枚組」再購入の意欲雲散霧消状態に。じつはそんなパターンって、けっこうあるんです。大昔、社会人になって最初の冬のボーナスで購入したのがグールドのBach ボックスLP(何枚組だったか?記憶なし/ゴールドベルク変奏曲の新録音以前)でした。Beethoven のピアノ協奏曲5曲も買ったっけ。閑話休題(それはさておき)。
2009年正月はどこにも行かなかったし、なにも買わなかったし、と、自分で自分に言い訳して(結局)「80枚組」注文しちゃいました。某通販で著名ルートより5,000円程安かった、というのは後付理由です。滅茶苦茶な相場じゃない限り、ワタシの購入するCDはほとんど安物ばかり。仮に少々高くても、たっぷりしっかり愉しめば、それは”安い買い物であった”ということでしょう。発売順にオリジナルの収録、ジャケットデザインというのが素晴らしい趣旨だと思います。後、「云々全集」としてまとめられるのだろうが、本来の趣旨はこうであった、というわかりやすい収録、そしてデザインの美しさ、味わい。(トラック/タイミング表示がないのは不便だけれど)
グールドを聴いていつも思うのは、曖昧模糊とした雰囲気作りの決然たる拒否であって、明快かつ乾いたタッチで作品旋律の神髄を浮き立たせます。Haydnはモウレツに速いテンポ、ヴィヴィッドに躍動し、うきうき疾走します。軽快軽妙な技巧の冴えがデリケートであり、”けれん”とか”シナ”皆無。明るく、幸せな旋律をのびのびとスタッカートで歌います。どうしてこんなに旋律に馴染んでいるんだろう?と不思議な気持ちで愉しんでいたら、それはホロヴィッツ体験であったことに気付きました。(あれはあれで”魔術”だ)
余談だけれど、BRILLIANTの全集では、担当はウルスラ・デュチュラー(fp)(2000年)であって、これは遅いテンポ、やや濃密にテンポも揺れて様相がエラく異なりました。古楽器のメカニック問題もあるのか知れないが、グールドのほうがずっとシンプルでモダーンな感じでした。
Mozart のピアノ・ソナタはグールドがマイ・ヴェリ・ベスト。デリカシーと彼特有のタメのあるリズムが(一見異形だけれど)見事な効果を上げていると思います。K.330のハ長調ソナタは、なんと懐かしい!第1楽章はゆったりと繊細に、ゆらゆら囁くよう。第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」には希望に充ちた憧憬を感じ、終楽章のタッチは足取りも噛み締めるようにしっかりして、安易に流さない。微笑みが浮かびます。この作品、1970年に再録音があるから、もしかして初耳音源かも。
幻想曲とフーガ ハ長調K.394(383a)は、ほとんどBach の世界。劇的であり、壮大なるスケールを感じさせます。かなり力みのあるタッチで、大柄に表現されております。前曲の床しい作品(そして表現)との対比も見事。フーガの決然たる様子は、ここだけ聴けば俄に我らがヴォルフガングとは気付かないバロック(Bach )風であります。
アルバム全体で「軽妙快活」〜「含羞抑制」〜「壮麗劇的」に構成され、聴き手を満足させてくださる一枚。お見事。 (2009年1月23日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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