Haydn 交響曲第50番/87番/89番
(ウルフ・ビョルリン/カペラ・コロニエンシス)


LASERLIGHT  15 830

Haydn

交響曲第50番ハ長調
交響曲第87番イ長調
交響曲第89番ヘ長調

ウルフ・ビョルリン/カペラ・コロニエンシス

LASERLIGHT 15 830 1983/85年録音  1,000円(?)で購入

 「The World Of The Symphony」(CD10)となっているから、シリーズものでしょうか。例のブロムシュテットのBeethoven 交響曲第9番(ライヴ)が(CD6)に当たります。1990年代の前半には購入していた記憶があって、もう手元に10年は存在するはず。選曲的にもずいぶんとマニアックだし、古楽器による演奏も(当時としては充分に)意欲的。デジタル録音。

 2002年とうとうA.フィッシャーの全集買ってしまいまして、あらためて手持ちのHaydnを点検したものです。(買う前に点検せよ、って?いえいえ、見る前に飛べ、ですよ。心境は)この辺りは苦手方面でして、わざわざ意識してCDは買ってこなかったんですよ。その中で、このCDだけは例外、ずいぶん聴きました。

 全体の演奏の雰囲気。過激派の極度にスリム・先鋭的なリズム感じゃなくて、暖かいアンサンブル。古楽器演奏の草創期にありがちだった技術的な未熟さもなくて、響きが薄かったり、濁ってしまうようなこともありません。素朴だけれどゆったりとした幅が感じられます。木管ソロなどしみじみと美しい。(特に奥行きのあるフルート)

 自由な節回しとか、即興性には欠けるでしょうか。真面目で穏健派なんです。瑞々しいが、オーソドックスで穏和な解釈。でもこれ、Haydnに相応しい(と、勝手にイメージを作っちゃマズいが)優しさが感じられて悪くありません。新鮮です。録音状態も良好。(いつもながらの甘い評価ながら)

 これ「疾風怒濤」時代の作品でしょ?〜1770 - 80年代に盛んになった、個性と感情の開放を主張する「シュトルム・ウント・ドラング (疾風怒濤)」と呼ばれる文学運動と機を一にして、・・・・感情の激しい爆発を思わせるような作品が現れ、交響曲というジャンルにも暗い短調で書かれた作品がいくつか生まれ〜って、これ、インターネットでテキトーに検索したら出てきたけど、第50番はハ長調でっせ。第87/89番も長調。「疾風怒濤」時代とは違うのかな?

 交響曲第50番ハ長調は全集ものを別にすれば、(少なくとも現代楽器では)ほとんどCDも出ていないみたい。1773年の作品。有名どころではアーノンクールくらいかな?演奏機会もそう多くないはず。というか、Haydnの交響曲は、後期の作品以外、ほとんど日常的には演奏されませんね。堂々たる序奏を伴った、ハ長調交響曲らしいスケール感と、Mozart 「リンツ」交響曲を彷彿とさせる明るく、ストレート曲調が楽しい。柔らかくて、素朴、勢いもちゃんとある。演奏も魅力的でしょ。

 ああ、アンダンテで気付いたけどチェンバロの通奏低音が入ってますね。気持ちの良い、ゆったりとしたノリもある。メヌエットはユーモラスで優雅な舞曲、終楽章はいつものHaydn節で、そっと始まって上機嫌で加速します。これ素直な名曲でしょう?もっと演奏会に取り上げて欲しいですね。

 交響曲第87番イ長調は1785年の作品で、これには御大カラヤンの録音が存在します。第1楽章の主題がいつも通りの躍動感ながら、陰りもあるし、曲弱の対比、思い切った休止もあって、作りはぐっと凝ってますね。Fl:1/Ob:2/ Fg:2/Hr:2だから、ハ長調交響曲からティンパニを抜いて、フルートを足した編成だけれど、こちらの方が多彩に聞こえます。

 フルートの活躍(古楽器ながら、なんと豊かでノビノビ)+オーボエの歌が効いております。(第2楽章アダージョ)Haydnのメヌエットは、どれも優雅でノンビリして素敵だけど、ここでは前出木管(オーボエの粗野な音色に泣ける)+更にホルンの勇壮なスケールが楽しみ倍増。終楽章はいつもパターン・・と思ったら、予期せぬスロウ・ダウンやら休止が工夫・精進の跡なんですね。ここでもフルートが存分に歌ってくださいました。

 第89番ヘ長調交響曲は、1787年の作品。最終楽章「リラ協奏曲第5番」から沢山の引用があります〜って、そういえば既にA.フィッシャー盤でワタシのサイトにも掲載済みでした。これも第87番と同じ楽器編成。録音はごくごく少ないみたい。全集除けばクイケン、ブリュッヘンくらいか。A.フィッシャー盤ではコン・マス/ブランディス担当で、ひときわしっとりとした味わいの演奏でした。

 傾向としては前の第87番と似ているが、木管ソロの自由な扱いより、合奏全体の充実した作風でよりオーソドックスか。第2楽章「アンダンテ」の牧歌的なやさしさ、底流にあるリズム感も快い。メヌエットも快活だけれど、先ほど大活躍をしたフルートはシンプルな音形だし、オーボエ、ホルンは「オーケストラの一部分化」しております。ちょっと地味な作品かな。ワタシは気に入ったけど。

 終楽章は主旋律冒頭に付けたアクセントが特徴ですね。これ、演奏のせいもあるかもしれないが「リラ協奏曲」のほうが、思いっきり粘っちゃうんです。全休符も盛大だった記憶もある。ソロ部分を抜いちゃったので、やや気が抜けた印象も持ちました。

(2003年6月13日)

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written by wabisuke hayashi