Haydn 交響曲第103番 変ホ長調「太鼓連打」/第104番ニ長調「ロンドン」
(アダム・フィッシャー/オーストリア・ハンガリー・ハイドン管弦楽団)


BRILLIANT 99925/33 Haydn

交響曲第103番 変ホ長調「太鼓連打」(Rainer Kuchl)
交響曲第104番ニ長調「ロンドン」(Erich Binder)

アダム・フィッシャー/オーストリア・ハンガリー・ハイドン管弦楽団

BRILLIANT 99925/33 1987/89年録音

 2009年8月以来の再聴。おそらくアダム・フィッシャーのHaydn交響曲全集中最初の録音。熱烈なアダム・フィッシャーの追っかけブログを拝見して久々に彼のHaydnを聴きたくなりました。(Austro-Hungarian Haydn Orchestraを”ハイドン・フィル”と和訳する所以は不明)ハイドン・ザール(墺太利東部ウィーンの南にあるアイゼンシュタット)での録音は残響豊かにオフ・マイクっぽくやや散漫な音質。アンサンブルもいまいち緻密さを欠いて、手探り状態なのは会場に慣れていない最初の録音だからでしょう。後年の音質とは(アンサンブルも)かなり違う。ちょっと辛口の印象となりました。

 交響曲第103番 変ホ長調「太鼓連打」は1795年61歳円熟の作品。Wikiには一番人気と書いてありますね。二管編成にクラリネット、ティンパニも入ります。第1楽章「Adagio-Allegro con spirito-Adagio」冒頭ののティンパニがニックネームの由来、楽譜を見るとシンプルな音符が並んでいるだけなのに、ここをいろいろ工夫する演奏はあちこちで聴けます(ここでは楽譜通り)。当時の演奏習慣としてアド・リブがあったのでしょうか。そして深刻に静謐な序奏が始まってこれがけっこう長い。やがて明るく闊達な主部に入って、溌剌としてやや力みを感じないでもない。優しい旋律が繰り返されて弦と管が呼応しあって、ラスト序奏のティンパニ連打が戻ります。音質の硬さが気になります。(9:25)

 第2楽章「Andante piu tosto Allegretto」はハ短調の緩徐楽章(クラリネットはお休み)。この主題が暗鬱に2/4拍子の行進曲風にリズミカル、それが繰り返され、ハ長調の主題も登場する二重変奏曲なんだそう。不安と明るさ、ノンビリと激性が陰影を対比して、美しいヴァイオリン・ソロも登場します。(コンマスはRainer Kuchl)(10:30)第3楽章「Menetto」は大柄なメヌエット。ここはアダム・フィッシャーの引き締めが足らんかな?と。トリオはクラリネットが活躍する優雅なレントラー、ここも最上の出来とは思えぬのはちょいと辛口ですか?(5:11)

 第4楽章「Allegro con spirito」。ホルンの導入を受けて闊達な主題がそっとつぶやいて、やがて全奏へ走り出しました。ここも響きの濁りが気になりました。(5:20)

 交響曲第104番ニ長調「ロンドン」も同じく1975年のラスト交響曲。(コンマスはErich Binder)楽器編成も同じ。堂々たる風情の傑作と思いますよ。第1楽章「Adagio-Allegro」はニ短調の序奏が壮麗に雄弁、これがけっこう長くて2分半ほど。提示部は溌剌と明るく優雅、スケール大きな騒動たる歩みとノリ。ここの晴れやかな表情、暗転は大好きなところ。前作ほどのオフ・マイク感はないけれど、豊かな残響に鮮明さを欠く印象がありました。(8:49)

 第2楽章「Andante」はト長調の変奏曲。主題は静謐な弦に始まり、ファゴットも加わって優雅そのもの。やがて遠いフルートを呼び水として劇的な変奏も出現、種々表情が変化するHaydnのワザを堪能できるところ。贅沢な感想だけど、ここも歩みは少々鈍く感じます。(8:24)第3楽章「Menuetto-Allegro-Trio」は3/4拍子の素朴に元気な舞曲となります。ティンパニの使い方が効果的。トリオはオーボエとファゴットが活躍して、ここはHaydnの一番美しいところでしょう。(5:18)

 第4楽章「Spiritoso」は drone(楽曲の中で音高の変化無しに長く持続される音/Wikiより)が印象的なフィナーレ。速めのテンポに颯爽として、ここはなかなか熱の入ったカッコ良い演奏でしょう。(6:41)

(2022年10月1日)

 人生とは恥の連続であって、以下↓の2002年更新も読むに耐えぬおちゃらケぶり・・・こんなのがネット検索で突然登場するから心臓によろしくない。わずか数年、時代は遷ってデニス・ラッセル・デイヴィス(安い!)、そして御大アンタル・ドラティの全集が入手できることになりました。経済的問題ではなく、主に聴き手側の根性(前向きな意欲)のなさが追加購入を決意させません。これが”不況”か。閑話休題(それはさておき)アダム・フィッシャー全集をしっかり聴いてあげなくっちゃ。そういえばカラヤンも7枚分買ったじゃないか。

 ウィーン・フィルのコンマスを据え、全集中の初期録音となる一枚。やや残響過多であって、しかも金属的で刺激的、オケのサウンドもこなれていない印象を受けます(「太鼓連打」)。数年前のコメントにミュンヒンガー、モントゥーがウィーン・フィルを振った演奏に言及しているのも一理あって、ようはするに演奏も”こなれて”いない。昨今の古楽器系溌剌(過激?)リズムでもなく、優雅で牧歌的な方向でも徹底していない感じ。誠実な演奏は悪くはないが、やや単調な印象(とくに第2/3楽章辺り)を受けました。

 あらゆる演奏、知名度にこだわらず”美点をみつけること”を求めていたはずなのに、これは聴き手の堕落かな。それとも「太鼓連打」を以て録音を開始したこのコンビは、未だ方向性として手探り状態だったのか。録音スタッフも、アイゼンシュタット/エステルハージ宮殿ハイドン・ザールのセッティングに不慣れだったのか。

 終楽章は「ジュピター」交響曲フィナーレにちょっと似ておりますね。「特別優れているわけではないが、悪くない」とは7年前のコメントだけれど、なるほど・・・両端楽章には引き締まった勢いはあるでしょう。サウンド印象がマイナス・イメージか。

 「ロンドン」は2年後の録音、音質はかなり改善されております。「このオケにはアンサンブルに緻密さが足りない」とはかつての厳しい評価だけれど、いったいどんな演奏との比較評価だったのか?ウィーン・フィルが念頭にあったのか。現在聴けば、アンサンブルは充実してスケール大きな第1楽章「アダージョ〜アレグロ」の開始となります。楚々として、しっとりと落ち着いた第2楽章「アンダンテ」も悪くない。途中劇的な盛り上がりの対比もお見事。前曲同様の誠実な表現であります。相変わらずホルンの深い音色が素敵。

 第3楽章「メヌエット」はフツウなんじゃないか?トリオ部分の木管は良く歌っているけれど。終楽章は颯爽として速めのテンポ、ここの表現は軽快なリズムと響きで成功しておりました。

 この全集、後半の録音になるほど(知名度低い初期中期作品)出来がよろしいと思います。(コンマスはヴォルフガング・レディック担当)こればかり連続して、集中して・・・みたいな聴き方はできないけれど、必要に応じていつでも聴ける、棚中に待っていて下さる、そんな贅沢を楽しんでおります。(2009年8月21日)


 「どうすんの、またデカい箱買っちゃって」と、自分でも呆然とする一瞬。一万円でっせ。浪費は。女房にも思いっきりイヤミ言われました。「いやなに、ほんのレギュラー盤3〜4枚分」と自らに言い聞かせ、Haydn初心者としては良く馴染んだ後期の作品から・・・ということで、一番底から取り出した一枚。

 で、「音楽日誌」にも書いたけれど「既存音源の探索。[モントゥー、ミュンヒンガー]、ビョルリン、[シュナイト、エストマン、若杉]、[ラーク、ピタミック]、[ショルツ、リッツォ](2枚組)、リッツォ(2枚)、ヘルビッヒ、そしてワーズワース(5枚組)」〜Haydn交響曲の在庫を調べたらざっと15枚。待てよ、+歴史的録音があったな。トスカニーニの「時計」、ビーチャムも一枚、ワルターは「オックスフォード」、古便じゃないフルトヴェングラーは「びっくし」「倫敦」でしょ、ホーレンシュタインは「時計」「ロンドン」・・・これで打ち止めか!

 む〜PILZでマズア/ベルリン放響という珍しい組み合わせで「奇跡」、ポマー/ベルリン放響で「ラウドン」なんてのもありました。おいおい、いい加減にしろい!ちゃんと聴け>って、ワタシのこと。これ集めたら全集33枚に匹敵する物量。そのうえ「Haydnは苦手」だって?罰当たるよっ。て

 じつはねぇ、数日前にクリップス/ウィーン・フィルのTchaikovsky 交響曲第5番聴いちゃって、心底痺れました。ついでに「驚愕」(びっくし交響曲)入ってましてね、エレガンスな風情にこれまた惚れ込みました。モントゥーの同曲も(AILE DISQUEの海賊盤で恐縮だけれど)「これ以上ない」といった自然体のあでやかさ。この辺りはホンマに名人芸。

 なにか禁断の箱を開ける期待を感じながら、A.フィッシャー全集との戦いの始まりがこの一枚。いままで何度も「NIMBUSのHaydnが安いですよ」というメールを無視して数年間、「あの人は、きっとこの全集発売で愕然としているだろうな、ウヒヒ」なんて思っているうちに流れてきた「太鼓連打」や如何に?(長い楽屋落ち)


 ・・・遠くから静かに鳴り出す太鼓の響き。音量がたいへん小さい。これは序奏を繊細に抑制したかったのか。ところがアレグロが始まったら、これ、思いっきり残響過多で奥行きありすぎなんですね。聴き方によっては、やや散漫な印象があるかも。先ほどの名人二人によるウィーン・フィルの名残が耳にあったのかも知れないが、集中力はもっと欲しいところ。

 爽やかで、鮮度もあるし、オケの質もそう悪くない柔らかい響き(ウィーン・フィルやハンガリーの腕利きを集めた、とはいえ、企画ものの臨時編成でしょ?)が、ややリズムがもたれる。モントゥーやクリップスを聴いた後にそう思うんだから、ほんまにそうなんでしょ。洞穴みたいな録音も問題か。

 アンダンテは独特の牧歌的な味わいが楽しい曲。往年の名匠達による恰幅の良い演奏方面じゃないが、流行(はやり)の古楽器系リズム強調パターンでもない。じっくりと各パートの残響を楽しんでいただきましょう。メヌエットはもう少し溌剌とした表情とか、ユーモアがほしいところ。終楽章のホルンは良い音ですね。どちらかというと、諄々と説得系の演奏でしょうか。

 特別優れているわけではないが、悪くない「太鼓連打」でした。音質はやや奇異だけれど。


 「ロンドン」は文句はほとんどありません。こちらは音録りがもっと明快で、芯があります。立派な曲だけれど、フィッシャーには威圧感を感じません。ワタシ、このオケにはアンサンブルに緻密さが足りないと思うんです。なんとなく、ザラついた細部の濁りを感じます。でも、爽やかさと「味」はある。けっしてツマらない演奏じゃない。

 ハズむようなリズムではありません。自然なノリはあって、暖かい手作りのような味わいがあるんです。リキまないところも好感が持てる。アンダンテは、ややソロリソロリとしていて、自信を持った「歌」がもっと欲しいところ。でも誠実さはある。メヌエットに野暮ったさは感じません。ここはゆったりと余裕の表情。

 終楽章は速いテンポで颯爽と軽やか。表情が細かく変わっていく様子も美しい。熱気を帯びて存分に盛り上がってくれました。ワタシはここが一番好き。


 さ、あと102曲分残っているのかな?長く、楽しい旅路の始まりです。NIMBUSはつぶれてしまったけど、こうして全集が廉価で発売されたことに、心より感謝しましょう。威圧感や、よけいな重さがないところが、これからを期待させます。(2002年5月24日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi