Grieg 「ペール・ギュント」/Ravel 「ダフニスとクロエ」第2組曲/
逝ける女王のパヴァーヌ (セル/クリーヴランド管弦楽団)


CBS/SONY FDCA 507 500円で購入したけど、贅沢行為 Grieg

劇音楽「ペール・ギュント」より(1966年)
朝/オーゼの死/アニトラの踊り/山の魔王の宮殿にて/ソルヴェイグの歌

Ravel

「ダフニスとクロエ」第2組曲
逝ける女王のパヴァーヌ(以上1963年)

ジョージ・セル/クリーヴランド管弦楽団

CBS/SONY FDCA 507  500円(中古)にて購入

 2008年再聴。前回「宿題が残りました」とコメント(Ravel の表現について)してから2年経過、岡山→尼崎へ転居、CDは大量に処分継続、購入はもっぱらオークションにて(それなりに購入)・・・と環境は変わりました。このCDはその後、悔しいことにBOOK・OFF@250にて2枚並んで売っているものを目撃・・・って、そんなことは音楽の本質とは無関係ですから。

 「ペール・ギュント」は嫌いな作品じゃないが、あまりにお付き合い(なんせ旧文部省推薦小学校の音楽)が長いと倦怠期が・・・ピアノ版のほうが新鮮ですよ、響きがピュアで。”寸分の狂いもない精緻なアンサンブルの集中力が、とことんクールで鮮度抜群です。ひとつひとつの旋律、それは内声部の目立たないものであっても、ていねいに、誠心誠意に”〜という感想はまったく変わりはない。”「オーゼの死」が、万感胸に迫る入魂の歌であることの発見”〜なるほど。この入念厳格なる集中力表現は凄いや。残念ながら5曲のみ収録、しかも声楽抜きだけれど、かつて聴いた中ではヴェリ・ベストか。昔なじみの作品を、これほど新鮮に聴かせて下さる演奏も珍しい。

 (Griegとの組み合わせの可否ともかく)宿題のRavel はどうか。「ダフニス」は録音品質が重要かも。ハイティンク盤は目の覚めるような録音+オーケストラの技量に感心し、世評高いシャルル・デュトワ盤も(今年2008年5月)ようやく聴くことを得、精密緻密+色気艶+鮮明な音質に感心したものです。で、我らがセルは・・・”精緻極まりない世界!う〜む、やっぱり凄いね。正確さと硬質なテンションの連続。機能美の極致。

 ”色がない。味がない”、”最後まで違和感は拭えない”とは失礼なる言い種でした。1970年の来日時演目になっているくらいだから、得意のレパートリーだったんでしょう。このアンサンブル水準でナマだったら驚異でしょうねぇ・・・再聴の印象は、以前ほどの違和感はないけれど、やはり”香り”みたいなものが(もうちょっとだけ)欲しい。ちょうどコンセルトヘボウとのSibelius (1965年正規盤入手済)同様の感触有。

 「色」「味」など笑止千万!と言われればそれまでなんだけど、正確なる機能とは別のものを愉しむことはあると思いますよ。けっして凡百なる演奏ではないんだけれど、作品より”ジョージ・セル”を強く意識してしまう演奏。時にそれも悪くないが、ワタシは往年のアンセルメの(かなり雰囲気たっぷり)演奏にも共感があるんです。Ravel の多彩なる演奏のあり方のひとつとして、この一枚も拝聴し、堪能いたしました。

(2008年11月28日)

 いかにもセルに似つかわしくない演目だけれど、1988年発売のCDならばBOOK・OFFにて値下げの対象となって、聴く機会を得られる幸せ。厳格セル爺さんの音源は、できるだけ聴きたいもので。このCDは少々盛りが少ない(収録がけちくさい)ですな。ではまず、(旧)文部省選定「ペール・ギュント」から。どーしてこんなマニアックな作品が教科書で取り上げられるか不思議だけれど、素敵な旋律に間違いないでしょ。ワタシはお気に入りの作品です。

 寸分の狂いもない精緻なアンサンブルの集中力が、とことんクールで鮮度抜群です。ひとつひとつの旋律、それは内声部の目立たないものであっても、ていねいに、誠心誠意に歌われます。昔馴染みの旋律が新しい価値を持つ驚き。「オーゼの死」が、万感胸に迫る入魂の歌であることの発見。「アニトラの踊り」って、誰でも知っていると思うが、小学校の音楽の先生は「あにとら姉さんの踊り」と紹介していた記憶も鮮明です。

 これって、中東辺りの妖しいベリーダンス風なんですか?チェロのソロがこんなに雄弁にバックで活躍しているのは、初めて知りました。「ソルヴェイグの歌」には、残念ながら女声は含まれません。しかし、清涼な旋律表現に、奔放なる(アホ)夫の帰りを待つ切ない妻の心がたしかに木霊しました。

 「スイスの精密時計」と評されるRavel の管弦楽作品には、ジョージ・セルにはピタリ!のような気もするし、いやぁ、お仏蘭西の音楽はそんなもんじゃないよ、という予測もありました。「ダフニス」って、超細かい音符ぴっしり並んでいて”いかにも繊細!”音楽じゃないですか。

 嗚呼、こりゃ予想通りの精緻極まりない世界!う〜む、凄いね。正確さここに極まれり!的感慨に充たされました・・・が、なんかおかしい。どこか違う。馥郁たる香りとか、脂粉漂うような妖しい官能とか、そんな不純物が取り除かれ、完全無菌蒸留水のような味わいのなさ。この方向でブーレーズなら、(新旧録音とも)結果として巧まざる”艶”をたしかに感じることは可能だから、音楽とセル爺さんの個性の相性問題でしょうか。

 色がない。味がない。そんなことを考えつつ、音楽は大爆発を迎えて終了〜「逝ける女王のためのパヴァーヌ」へ。ワタシは、どんな演奏でもこの作品に感動を得られなかったことはないんです。しかし、最後まで違和感は拭えない。宿題が残りました。まだ、なんども聴きましょう。

(2006年9月15日)

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written by wabisuke hayashi