Khachaturian バレエ音楽「ガイーヌ」 (ヤンスク・カヒッゼ/モスクワ放送交響楽団)
Khachaturian
バレエ音楽「ガイーヌ」(1958年ボリショイ劇場上演版全曲)
ヤンスク・カヒッゼ/モスクワ放送交響楽団(USSR Radio & TV Symphony Orchestra)
1978年録音 MELCD1001599
14年ぶりの再聴、というか音源を再発見しました。VOX CDX 5119はいささかトラック分けが乱暴で、なにか別の同作品音源を入手したのをキッカケにCD処分したのでしょう。しかし、レズギンカの仰け反るような迫力、小太鼓リムショットのカッコ良さは他ではとうとう味わえなかった。Jansug Kakhidze(1936ー2002)は旧ソヴィエット/グルジア共和国出身の指揮者とのこと。録音年もネットより特定できて、オーケストラの表記も通称に合わせました。現在はチャイコフスキー記念交響楽団と呼ぶそうな。1974年以来フェドセーエフが頑張っております。Khachaturian(1903-1978)は、どの作品もクサい民族的な個性的旋律、土俗的な激しいリズムが魅力的、いつもいつも座右に置いて愛聴するにはこちら、ちょいとエネルギーと根性が足りません。でも、時々激辛音楽を聴いて刺激を愉しみたくなる・・・もの。
久々の拝聴に驚いたのはリアルな音質のこと。旧ソヴィエット音源には先入観を持っていて、こりゃまたずいぶんと肌理の粗い録音やな、そんな記憶だったのに、この粗野なサウンドは録音問題に非ず、ほんまに”粗っぽいド迫力サウンド”なオーケストラをみごとに捉えて、響きの濁り(音が割れること)だって元が(ほんまに)そうなんじゃないの?これはこれで、じつはリアルな録音かもと納得いたしました。VOX盤のトラック分けには閉口したけど、今回入手音源(データ)はCD1が23トラック(プロローグ「友好」/シーン1「春」/シーン2「修復」/シーン3「妬み」)CD2は25トラック(シーン4「愛」/シーン5「良心」/シーン6「贖罪」)〜親切なものでっせ。当たり前か。
小学校の音楽の時間に聴いて、主たる有名旋律は耳に焼き付いておりました。筋書きは旧ソヴィエットの集団農場(コルホーズ)を舞台に正義は勝つ!的陳腐なもの、現代でも上演機会はあるのでしょうか。(きっと少ないことでしょう)強烈なリズム、アクの強い魅惑の旋律は管弦楽組曲版として録音はけっこうありますよね。「レズギンカ」はシーン1「春」〜「若者の踊り」・・・これって楽譜はどーなってんの?作曲者自演とかいくつか聴いてフツウの小太鼓連打がほとんど、リムショットを使っての多彩なアクセントは奏者アドリブというか、各自工夫ですか。専門の方に教えてほしいところ。山本さんの説によるとこのオーケストラには名人がいるらしい。木管のめまぐるしい繰り返しも超絶技巧っぽいですよね。ラスト金管のオブリガートが参入してわずか2:28、聴き手の興奮の渦に巻き込んでぐうの音も出ないほど。シーン2の「アイシャの修復(Recoveryって訳がこなれていないな)」はチムチムチェリーに似ている素敵な哀愁の旋律です。
あとはロジェストヴェンスキーで馴染んだ旋律が時々登場するから、CD2枚分飽きずに聴けるけど、その暑苦しい馬力に負けそうになりますよ。「剣の舞」は後半に登場して、彼(か)の強烈なリズムは世界的人気なのも納得のわかりやすさ。いわゆる名曲集に収録されるような、フツウにようできた演奏とは一線を画す濃厚さ。はっきり云って疲れました。せめて馴染みの旋律をカヒッゼ風個性表現への言及をすべきところだろうけど、本日はここまで。お粗末。 (2016年4月17日)
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1998年、このサイトのオープン時には掲載していたけれど、あまりの内容のなさを自覚し削除。厚顔になった現在なら、そのままにしたことでしょう。今更棚からCDを取り出してみたら、いろいろと問題があることに気付きました。カヒッゼも亡くなったらしいので個人的に追悼です。
まずオーケストラがよくわからない。てっきりモスクワ放響と信じていたけれど、「USSR Radio & TV Symphony Orchestra」とのこと。だいたいロシアでは国内と対外的には呼称が全く違うらしいし、このオーケストラのことも(時々CDを見かけるが)ようわかりません。もしかしてオスタンキノ響のこと?
カヒッゼは親子が存在しているそうで、これは「Djansug」という人。Khachaturianは、アルメニアとか中央アジア方面のエキゾチックな甘く切なく、激しいローカルな旋律が魅力横溢で、カヒッゼもきっとその辺り(かなりアバウトで申し訳ないが)の出身でしょ。「ガイーヌ」は「剣の舞」のみが有名だけれど、ぜひ全曲を聴いて欲しいですね。どこもかしこもクサい旋律横溢で楽しめます。(これ、1942年初演版ではなく、1958年ボリショイ劇場上演版とのこと。曲数が多いらしい)
CDケースの裏には、各曲ごとのタイミング詳細が表示されるが、実際は各幕ごとのトラックしかないんです。だから一枚目は3トラック、2枚目は2トラックしかない、じつに不親切なCD。でも、価格は良心的で、なにより全曲は希少価値の録音だから文句言っちゃいけません。
冒頭から順繰りに聴いても、なんとなく常に賑やかだし、大衆演劇風盛り上がりもあって楽しいが、まず一枚目、トラック2の2曲目「レズギンガ」を聴いたいただきましょう。(ちなみに有名な「剣の舞」は、二枚目第3幕大詰めラスト方面に収録)その、ドラムの強烈でハデハデしいリズムの爆発(スーパーテクニック?と、思う)、わずか2分半ほどの短い曲ながらドキドキもの。ま、おおよそ、どこでもリズムがハッキリした個性的な曲ばかりだけれど。
これバレエ音楽だけれど、ワタシの数少ないナマ・バレエ体験は「白鳥の湖」のみなので、センチで甘い旋律とは一風違った「ガイーヌ」ではどんな舞台になるのか想像すると興味深い。一度見てみたいもの。久々に聴いた感想は、記憶では「レズギンガ」の印象が強烈だったためか、「激しく燃えるようなアクの強い演奏」だったはずなのに、少々異なりました。
まず、録音はそう悪い方でもないが、肌理は細かくない。これ、ロシア方面の録音って、いつもそんな感じがあるじゃないですか。鮮明で目の覚めるような音ではないが、舞台の雰囲気はあるんです。これは演奏ぶりにも言えて、おそらくカヒッゼの個性でしょうが、しっとりとした緻密なアンサンブル方面ではなくて、大づかみでラフな感じが好ましい。
もちろん、リズム感はあるし、力強いし、ツボはしっかり押さえていて文句はないんです。でも、このオーケストラ、それほど泥臭い田舎風オーケストラじゃない。もちろん独墺系一流団体の洗練された響きとは大違いだけれど、ロシア風コテコテ、乃至、中央アジア系爆裂風でもないんです。意外とオーケストラそのものは都会的なサウンド。うんと上手いオーケストラじゃないけど。
ふつう「ガイーヌ」は2〜30分の抜粋で聴くでしょ?これ全曲で2時間22分ですよ。どれもけっこう楽しめる旋律ばかりなので、ぜひ全曲聴いて欲しいが、アクの強さもこのくらいが限界なんでしょう。ただし、気に入った旋律が出てきて「もう一度聴きたい」とか、「ここは飽きたから飛ばしたい」と思っても、トラックが少ないからできないのは不便でした。交響曲じゃないし、全部最初から最初まで、順繰りに聴く必要はないでしょ。
たしか筋的には、社会主義的正義を表現したような女性の物語じゃなかったかしら?(記憶曖昧)こどもの頃から聴いていた曲なので、なじみの旋律が出てくると切なくなりますね。(第2幕「乙女の踊り」など)ロジェストヴェンスキー/レニングラード・フィル(DG)とか、フィストラーリ/ロンドン交響楽団(EVEREST原盤)のLPをよく聴いたもんです。(当時の音楽の教科書に「剣の舞」が載っていたんです。なんとマニアックか)
VOXが己の音源の旧さを嘆いてか、一時MELODIYAから借りてCD化してくれた一連のシリーズでした。その路線が正しいとは思わないが、これに限っては上手い具合に出てくれた、と思います。まだ、現役でしょうか。(2002年6月14日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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