Brahms ヴァイオリンとチェロのための協奏曲イ短調/
ヴァイオリン協奏曲ニ長調(メニューイン)ほか(フルトヴェングラー)


NOTA BLU  93.5135 9/10  (10枚組3,650円のうちの2枚) Wagner

楽劇「トリスタンとイゾルデ」より「前奏曲」と「愛の死」

ベルリン・フィルハーモニー(1954年録音)

Brahms

ヴァイオリンとチェロのための協奏曲イ短調 作品102

ウィリー・ボスコフスキー(v)/エマヌエル・ブラベッツ(vc)/ウィーン・フィルハーモニー(1952年ライヴ録音)

Brahms

ヴァイリン協奏曲ニ長調 作品77

メニューイン(v)/ルツェルン音楽祭管弦楽団(1949年録音)

Ravel

「ダフニスとクロエ」第2組曲

ベルリン・フィルハーモニー(1944年録音)

以上 フルトヴェングラー指揮

NOTA BLU 93.5135 9/10 (10枚組3,650円のうちの2枚)

 このCDは1996年頃博多で購入した記憶があって、以下の文書はこのサイト初期(20世紀中)のものだと思います(そうとうエエ加減なのはいつものこと)。イタリア製「NOTABLU」という怪しげ海賊盤は、この時期集中的に購入していて、その後(中古含め)あまり見掛けません。かなり粗悪なる板起こしらしく、どれも低音(高音も中音も)不足、どんより電波状況のよろしくないAMラジオみたいな音質に至っていて、あまり好ましいものではないでしょう。ワタシには徒に歴史的録音ばかりを称揚する嗜好はないけれど、個性豊かであった時代を、粗悪な音質乗り越えて愉しむことに対して吝かではありません。

 フルトヴェングラーも然り。時に彼の録音に仰け反ること、再々であります。このCDは9年ぶりほどの再聴か。「トリスタン」はかなり音質厳しく、ボンヤリ・・・それでも雄渾としてゆったり、フルトヴェングラーの深い呼吸がしっかり感じ取ることが可能です。「ライヴとは思えない整った、落ち着いた表現・・・アッチェランドも押さえ気味」とは以前の感想だけれど、エキセントリックではなくオーソドックスな味わいのまま巨魁なるスケールを実現して、オーケストラはまことに深い。

 「二重協奏曲」は評価をまったく変えましたね。やはり音質が平板なのが気になる(とくに伴奏部分)が、昔風収録なのかヴァイオリンとチェロは前面に、とても生々しい。大柄雄弁なるソロじゃないけれど、ゆったりと息があって、柔らかい表現で優しく語り合います。オーケストラと少々違和感あるけれど、まるで室内楽の二重奏のようなテイストでして、馴染みの作品に新しい切り口を提示して下さいました。

 正直言ってあまり好きな作品とは思わなかったが、優雅なソロの掛け合いにはココロ奪われますね。しっとり甘美で切々とした語り口。フルトヴェングラーはウィーン・フィルに主導権を譲っているのでしょうか。第2楽章に感極まるのは、ここ最近の「緩徐楽章好き」個人的嗜好故かな?終楽章はゆったりテンポで、しみじみ噛み締めるように味わい深い。エエ演奏ですね。

 Beethoven の2年後にBrahms を録音したんですね。ユーディ・メニューイン(エフディ・メニューヒン)は社会活動、教育活動に敬意を表したいが、ソロとしては少々?状態といった感想を抱いております。この録音は奥行きと残響があって、ワリと聴きやすい。これも雄渾としてスケール大きな管弦楽ですね。なるほど、後年のケンペ盤に比べて技術的にはまだそう厳しいものでもないし、音色が(必ずしも)清らかでないところだって”個性”として感じることは可能です。

 その”個性”は熱気と誠実に充ちて存分に激しく、流麗ではないにせよ、聴き手の胸を打つに充分なる感銘がありました。先の二重協奏曲とは異なって、明らかにフルトヴェングラーの個性とスケールが前面に出ていて、自在に揺れる魔法のような浪漫が噎せ返るようであります。凄い!第2楽章オーボエ+ホルン+フルートの雄弁は筆舌に尽くしがたい。

 「ダフニス」は(戦中末期)1944年3月19日ライヴ、ソヴィエット軍が持ち帰った音源なのでしょう。これは当時のベルリン・フィルの精緻なアンサンブル、とくに木管の技量には注目すべきであって、音質的にはやや厳しい(オリジナルがどんな水準なのかは知らないが)ものの、そう聴き辛い音質でもありません。非常に流麗かつ重量感のあるもので、ニュアンスには不足しません。けっこう凄い”間”も有。白熱する推進力。軽妙洒脱とはいかぬが、起伏も呼吸も大きな世界であって、雄弁なRavel というのも悪くないものです。

 世間には「明けても暮れてもフルトヴェングラー」「より良き音質求めて出費厭わず」的大フリークが存在するのは周知のこと。あまり天の邪鬼にならず、先人の成果を虚心に受け止めることも時には大切だ、と実感いたしました。

(2007年3月2日)


 このレーベルは、あまり知られていないと思いますが、筋金入りの激安海賊音源流用レーベル。ときどきタワーレコードなどにゲリラ的に出没したり、個人輸入で購入できることもあります。CD一枚当たり200〜400円くらい。10枚セットで買っても、レギュラー盤一枚ぶんにしかならない、という恐るべき掟破りのシリーズです。オリジナル音源は一枚も存在せず、すべて劣悪な既存音源からの「焼き直し」であることはまちがいありません。

 音質も例外なくオリジナルより悪化していて、購入にはそれなりの覚悟は必要です。録音データは最低限コメントされていますが、いっさいの解説は付いておりません。たいていこういうCDはMade in Italyですね。これは(P)1993となっています。お勧めしません。(HISTORYは良心的)

 「トリスタン」は、DGで出ているライヴ音源でフルトヴェングラーが亡くなる年のもの。
 音の状態はわりとよくて、ライヴとは思えない整った、落ち着いた表現となっています。この曲の録音はほかにもたくさん出ているようですが、いつもの彼らしくなく、アッチェランドも押さえ気味で客観的、バランスのとれた立派な演奏となっています。ベルリン・フィルは繊細で深い響き。(とくに弦)

 「ドッペル・コンチェルト」はEMIで出ているもので、ご存じ当時のウィーン・フィルの主席がソロをとったもの。残響も奥行きもほとんどないのですが、ソロのみがオン・マイクで不自然に眼前で演奏しているような音。バックは相当に割れて聴きにくい。
 ブラベェッツのチェロが甘い音色で出色と思いますが、協奏曲のソロとしては、ふたりともちょっと個性不足気味。この曲を聴くためのスタンダードではないでしょうが、ややノンビリとした、ウィーン風の優しい味わいは楽しめます。第2楽章がとくに気に入りました。フルトヴェングラーらしい個性は希薄。

 ブラームスのヴァイオリン協奏曲は有名な録音で、EMIから正規CDが出ています。ワタシ個人的には指揮者としてのメニューインはともかく、ヴァイオリニストとしてはイマイチと思います。技術的に弱く、音色が美しくなく、ヴィヴラートに癖がある。LP時代にはケンペ/ベルリン・フィルのバックでメニューインのこの曲を持っていましたが、ヴァイオリンの技量的にツライものがありました。

 ここでは、まだ技術的衰えが気になるほどではなく、フルトヴェングラーの立派な指揮に支えられ、心打つ演奏に仕上がっています。雄弁ではありませんが、誠実なヴァイオリン。ルツェルンのオーケストラは音色が明るくて重くなりすぎず、逆にフルトヴェングラーとは相性がいいと思います。(メニューイン追悼)
 音の状況はまぁまぁ良好。

   フルトヴェングラーとしては珍しいラヴェル。戦時中の録音を旧ソヴィエット軍が音源を持ち帰っていたという、曰く付きの音源。かなり濁りはきつい。この曲は繊細さが必要な曲ですし、想像通りフルトヴェングラーでは重すぎるものの、ベルリン・フィルの木管の優秀さは確かに感じ取れるでしょう。わるくない。

 それにしても選曲はそうとうメチャクチャです。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi