Faure 歌劇「ペネロープ」前奏曲/組曲「ペレアスとメリザンド」/
Debussy「忘れられた小唄」/交響的素描「海」
(ロビン・ティチアーティ/ベルリン・ドイツ交響楽団/マグダレーナ・コジェナー)


Linn CKD550 Faure

歌劇「ペネロープ」への前奏曲
組曲「ペレアスとメリザンド」(前奏曲/糸を紡ぐ女/シシリエンヌ/メリザンドの死)

Debussy

「忘れられた小唄」(Brett Deanによる管弦楽版)(やるせない夢心地/巷に雨の降るごとく/木立ちの影/木馬/グリーン/スプリーン)
交響的素描「海」「海上の夜明けから真昼まで」「波の戯れ」「風と海の対話」

ロビン・ティチアーティ/ベルリン・ドイツ交響楽団/マグダレーナ・コジェナー(s)

Linn CKD550 2017年録音

 Robin Ticciati(1983-英国)はこれからが愉しみな世代、2017年よりベルリン・ドイツ交響楽団の首席です。手許にたくさん貯まった昔の音源を大切に聴いて、同時に未来ある若手の成果も確認したいもの。英国の指揮者がドイツのオーケストラを振っての仏蘭西音楽というのも一興、「忘れられた小唄」(管弦楽版)は初録音とのこと。

 Faureの管弦楽作品はアンセルメの記憶が色濃く残って、クールかつセクシーな旋律はデリケートな魅力に充ちております。歌劇「ペネロープ」への前奏曲は吐息のように静謐な音楽、サウンドはちょいとザラリとして劇的深淵に硬派、力強いもの。結末がはっきりしないのは、おそらくそのまま歌劇本編に入るのでしょう。(8:00)組曲「ペレアスとメリザンド」も同様の風情、前奏曲は控えめな詠嘆に充ちてデリケート+陰影豊か(6:23)糸を紡ぐ女は弦がくるくる回る糸車を表現して、オーボエの音色は濃厚でした。(2:42)シシリエンヌは一番人気、遣る瀬ないとはこのこと。フルートの音色は仏蘭西風色気ではない、全体に淡彩に淡々さらりとした抑制でした。(3:42)メリザンドの死は葬送音楽。ゆったりとした歩みは劇的にパワフルに力強さを感じさせるもの。これも結末がはっきりしません。(4:30)雰囲気で聴かせるヤワに甘いサウンドに非ず、デリケートさに厚みもありました。

 Debussy「忘れられた小唄」は捷克の名花Magdalena Kozena(1973ー捷克)の歌、作品は初耳かも。言語不如意、言葉の意味さておき「ペレアス」をしっとり彷彿とさせる朗唱の連続は、妖しくも静謐な風情に充ちておりました。「巷に雨の降るごとく」ってポール・ヴェルレーヌですかね。Brett Dean(1961-濠太剌利)の管弦楽化は絶品の静謐透明かつ色彩豊かなもの。やるせない夢心地(3:41)巷に雨の降るごとく(2:47)木立ちの影(3:00)木馬(2:55)グリーン(2:45)スプリーン(2:48)

 交響的素描「海」はあまりに有名な名曲、古今東西の名演奏揃えてその実納得できるものは少ない、難解な作品と感じます。 「海上の夜明けから真昼まで」は夜明け光と波の動きがはっきりと理解できるところ。旋律の膨らませ方、微細なニュアンスの配慮、テンポの動き、勢い、生真面目に緻密なアンサンブルはみごとなものでしょう。(9:32)「波の戯れ」はスケルツォに当たるのだそう。(Wikiによる)自在な木管の躍動はオーケストラの技量を物語って、華やかにユルい軽妙さは期待できないけれど、デリケートな精密さが光ります。(7:18)「風と海の対話」風雲急を告げる嵐の接近か。トランペットによる主題は朗々として、これは名手によるものでしょう。集中力高く、入念なる細部描き込み、響きは濁らない、パワフルにキレを感じさせるもの。(8:31)

 正確なリズム、アクセント、立派な完成度に間違いないけれど、もっと燃えるような眩さとか情感、華やかさを求めたいのは聴手の嗜好です。

(2021年8月28日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi