Mozart
セレナーデ ト長調 K.525 「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」
嬉遊曲 第11番 ニ長調 K.251 タビュトー(ob)シュナイダー(v)
交響曲第29番イ長調 K.201
カザルス/ペルピニアン音楽祭管弦楽団(1951年)
ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488
ルービンシュタイン(p)/ゴルシュマン/セントルイス交響楽団
ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K.216
スターン/コロンビア室内管弦楽団
THE 50's THE50-13 2枚組 890円
2003年に登場した「THE 50's」レーベルは、久々「海賊盤の本場・イタリア」の面目躍如たるレーベルです。1950年代の「著作隣接権」切れ音源の流用だけれど、貴重な音源が含まれること、音質、価格とも良心的なことで注目でしょう。すぐに消えてしまう可能性も高いので、店頭在庫あるうちにすこしずつ収集中。
この二枚組は、おそらくCBS録音でしょう。カザルスの音源は存在を知っていた程度、協奏曲は存在さえ初めて知りました。もちろん初耳。人工的な音場の広がりを付加しているようでもあり、たいへん聴きやすい音となっております。
カザルス/ペルピニヤン音楽祭管弦楽団〜骨太で躍動感溢れる、まさに豪快なる演奏。従来のMozart 観を一蹴するゴリゴリ演奏に目も覚める思い。
「アイネ・ク」。骨太で、堂々たる厚みがあるのに動きは軽快。重量級レスラーが、信じられないような空中戦を繰り広げるような塩梅ですか。
嬉遊曲第11番ニ長調K.251、交響曲第29番イ長調(1951年)〜これは「アイネ・ク」とまったく同じ印象で、ど〜んと芯を感じさせる音楽がぐいぐい推進する感じ。躍動するチカラ強い音楽。名手タビュトー(ob)やらシュナイダー(v)も参加しております。ニ長調の嬉遊曲が知名度的に落ちるかも知れないが、一度聴いたら忘れられない明るい表情の名曲でした。音質も悪くない。
(いずれも音楽日誌より)後年マールボロでのライヴでも一緒だけれど、表面的なアンサンブル云々より、本質的な音楽の悦びをダイレクトに伝えるような、素晴らしい演奏だと思います。本質的には、自発的で自由な発想に溢れた古楽器系演奏にも一脈通じるものがある、と連想を馳せました。(表面上は違いますよ、全然)
「アイネ・ク」〜このような名曲中の名曲は、多様なる表現を許容するんですね。室内楽編成でも、カラヤンの豪華演奏でも、ショルティの激しい、ワルターの優雅な、イ・ムジチやマリナーのような清潔でオーソドックスな表現でもいずれ楽しめます。そして、カザルスは「躍動する重量感」。
嬉遊曲にせよ交響曲第29番にせよ、巨大なる造形を感じさせて、それに違和感はない・・・
ルービンシュタイン/ゴルシュマン/セントルイス響の演奏は、少々大柄すぎてデリカシーに乏しいか?スターンの弾き振りによるヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216は、躍動感に充ちて幸せな演奏(コロムビア室内管)。
ピアノ協奏曲第23番イ長調K.488〜ルービンシュタイン(p)/ゴルシュマン/セントルイス響(録音年不明だけれど、1950年代)ことし7月に購入して「少々大柄すぎてデリカシーに乏しいか?」との自らの評だったが、この溌剌として傲慢なくらいの勢いと明るさには、あながち否定的な評価ばかりもしていられない。
(いずれも音楽日誌より)ゴルシュマン/セントルイス響といえば、1950年代アメリカ最良の時代のコンビでしょう。ルービンシュタインも最晩年の枯れた味わいとはほど遠くて、「溌剌として傲慢なくらいの勢いと明るさ」は時代の反映だったのかも知れません。ちょっと熱狂するような、こんな大胆な演奏はもう現代には存在しません。
このTHE 50's レーベルには、スターンのモノラル時代の録音が数曲含まれますが、いずれ「最良の時」(こんな無責任なこと言っちゃって・・・晩年の演奏はほとんど聴いていないのに)を収録していて、「躍動感に充ちて幸せな演奏」に間違いはない。粘りすぎず、走りすぎず、しかし推進力はそうとうなもの。輝かしいテクニックと明るい表情。
「THE ESSENTIAL Mozart 」〜題名に偽りなし、でした。(2004年3月26日)