Enescu ルーマニア狂詩曲第1番/組曲第2/3番
(クリスティアン・マンデール/”ジョルジュ・エネスコ”・ブカレスト・フィル)
George Enescu
ルーマニア狂詩曲第1番イ長調 作品11
組曲第2番ハ長調 作品20
組曲第3番ニ長調 作品27「村人たち」
クリスティアン・マンデール/”ジョルジュ・エネスコ”・ブカレスト・フィルハーモニー
ARTE NOVA 74321 37855 2 1995年録音 オークション340円(総経費込)にて入手
お気に入りはあるけれど、聴取の幅を広げてこそ、より楽しく、深く音楽を堪能できるようになるもの。マンデール/”ジョルジュ・エネスコ”・ブカレスト・フィルのBrahms の全集は処分してしまい、このGeorge Enescuの4枚組を入手いたしました。このセット、一時けっこう出品が連続しました。たしか無競合で落札入手したはずだし、その後もっと安く出現(それでも入札者はいなかったとと記憶)したのも目撃。このオーケストラは少々響き薄く、色気も足りないが、作曲者の名を冠したオーケストラが、誇りを以て演奏して下さることを期待しての入手でした。
ルーマニア狂詩曲第1番イ長調は、唯一無二、Enescuの作品として演奏機会の多いもの。ワタシ、小学生の時、岩城宏之/NHK交響楽団の札幌公演で聴きましたよ、振り間違いでやり直した記憶も鮮明。いかにも”狂詩曲”風、素っ頓狂ユーモラスで明るく、自由自在なる躍動であって、彼の歴史的録音の深遠なるBach を期待していた人々を、落胆させるに充分なる名曲。
この作品の存在が、逆に彼の作品が広く聴かれることを妨げていたのでしょう。演奏は、やや生真面目で節度があり、この作品単品で聴けば面白みが足りない。演奏会のアンコールだったら、もっと羽目を外して(爆発して)いただきたいところだけれど、おそらくEnescu作品連続演奏中の流れ、という捉え方なのでしょう。
組曲第2番ハ長調は、「序曲」「サラバンド」「ジーグ」「メヌエット・グラーヴェ」「エア」「ブーレ」から成る29分ほどの作品。これってまさにBach 時代を彷彿とさせる舞曲の連続であって、穏健派擬バロック風作品であります。これは作曲者のBach への尊敬を表現しているのか、楽器編成は結構多彩で、ちょうどストコフスキーの編曲ものを聴いているような雰囲気有。けっこう甘美なる後期浪漫の残り香もあって、Mahler 編の管弦楽組曲(またはScho"nbergの編曲作品)を連想させたりすることもあります。バロックの衣装を付けてはいるが、作品が進むにつれシニカルな諧謔が巨魁なるスケールを加えて、ますますオモロい作品也。
ルーマニア狂詩曲で感じた(演奏上の)不足感は存在しません。
組曲第3番「村人たち」は、「田園の春」「戸外で遊ぶこどもたち」「幼い頃に住んだ古い家が夕焼けに染まる/羊飼い/渡り鳥とからす/晩祷野鐘の音」「川面を照らす月光」「農民の踊り」の5つのヴァリアントから成っていて、先の擬バロック作品とは異なって、田園生活風景に素材を採っております。26分ほど。 いかにも穏健、柔らかい旋律が連続して、世代(1881-1955)時代的にはかなり保守的な作風なのでしょう。しかし極上に美しい。いかにも懐かしい「田園の春」でスタート。
「戸外で遊ぶこどもたち」はユーモラスにハズむようであり、「幼い頃〜」は9分を越え全曲中もっと長い楽章であって、静謐な回想瞑想が続きます。「川面を照らす月光」はまさに妖しい幻想風景、「農民の踊り」はもっと粗野でシンプル、激しいリズムを予想していたけれど、Bartokの旋律テイスト(ルーマニア系の旋律作品ありましたよね)を感じさせつつ、かなり変化に富んで複雑なものでした。
予想通り、少々響き薄く、色気も足りないが、作曲者の名を冠したオーケストラが、誇りを以て演奏しておりました。
(2009年3月20日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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