Elgar 弦楽のためのセレナード/序奏とアレグロ/
ため息/エレジー/スペインの貴婦人/ロマンス
(ネヴィル・マリナー/アカデミー)他


DECCA UCCD-3903 Elgar

弦楽のためのセレナード ホ短調
序奏とアレグロ(弦楽合奏と弦楽四重奏のための)
ため息(弦楽、ハープとオルガンのための
弦楽のためのエレジー
組曲「スペインの貴婦人」より(プルレスコ/サラバンド/ブーレ/Percy Young編)
*以上1967年録音
ロマンスニ短調(ファゴットと管弦楽のための)1994年PHILIPS録音

ネヴィル・マリナー/アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ/クラウス・トゥーネマン(fg)

朝の歌/夜の歌 作品15

イ・サロニスティ(1976年録音)

「セヴァーン川」組曲 作品87
ウスター城(序奏) Worcester Castle (Introduction) /槍試合(トッカータ) Tournament (Toccata) /大聖堂(フーガ) The Cathedral (Fugue) / 騎士領にて(メヌエット) In the Commandery (Menuet) /終曲 Coda

エルガー・ハワース/グライムソープ・コリアリー・バンド(1988年)

DECCA UCCD-3903 600円にてオークション入手

 ここ最近、愛するPHILIPSレーベルは姿を消し、音源は英DECCAとして衣装替えされております。どちらも立派なレーベルだけれど、個性が違いすぎて、会社の都合で名前が変えられるのには違和感バリバリ。じつはモントゥーのDebussyもほとんどPHILIPS録音なのに、英DECCAで出されている・・・的時代の遅れの感慨は若い人にはきっと無用なのでしょう。でも、ちょっぴり寂しい。これはもともと英ARGOの録音だったっけ?

 クラシック音楽は嗜好品だから、自分の好きなものだけを聴いたらよろしいのは当たり前。しかも、音源の”保ち”がよろしいから数十年前の録音でも新鮮に愉しめます。今更ネヴィル・マリナー(1924年生まれだから85歳、もう引退か?)の50年ほど前の録音、そしてワン・パターンの”英国音楽大好き”路線だな、との自覚はありますよ。未知の馴染みでない作品、若い演奏家への見聞を広げることのバランスはけっこう難しい・・・思い起こせば20世紀後半は「室内アンサンブル」全盛期の時代でした。ミュンヒンガー率いるシュトゥットガルト室内管弦楽団(現役団体)、パイヤール室内管弦楽団(さすがにパイヤールは引退したのかな?)、オルフェウス室内管弦楽団(これは現役)、イギリス室内管弦楽団・・・他、伝説の団体はたくさんありました。一番録音が多かったのが、アカデミ・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズだと思います。

 バロックから、やがてレパートリーを広げ、意欲的でヴィヴィッドな解釈から、やがて保守的でツマらん演奏に〜そんな個人的感想です。このElgarはもちろん”意欲的でヴィヴィッドな解釈”時代のもの。マリナー43歳壮年の記録が中心となります。弦楽主体の室内オケ編成(小さな)作品が並びます。モダーンで溌剌として、美しい。古楽器研究とは別世界だし、21世紀の耳で聴いてもまったく違和感なし。ワタシの大好きな作品がずらり!並んで壮観。

 「弦楽のためのセレナード ホ短調」はわずか13分ほどの短い、可憐で寂しげな作品です。英国一般に言えるんだけれど、濃厚に演り過ぎると繊細な味わいは台無しになります。素っ気なさが過ぎると、無味乾燥になりがち。マリナーの抑制と充実がバランスして、中庸な魅力を誇ります。「序奏とアレグロ」〜これは英国音楽最高峰のひとつであって、弦楽と弦楽四重奏の”詠嘆合戦”が纏綿と、劇的に続きます。これはかなり濃い表現が許されそうな作品だし、ここではかなりメリハリある表現、当時のアカデミーのアンサンブルの充実ぶりがもっと発揮された作品。

 「SOSPIRI(ため息)」は、荘厳なる哀しみの行進であり、英国音楽の魅力をわずかに.5分に凝縮して見せた静謐。「エレジー」は弦楽セレナードの続編のような、名残のような世界であります。「スペインの貴婦人」はたしか、Elgar未完のオペラだったはずで、そこから3曲を編んで弦楽作品としております。リズミカルで楽しい作品だけれど、相変わらず哀愁の雰囲気満載でウェットな気分はずっと続いております。

 名手クラウス・トゥーネマン(fg)との「ロマンス」は27年後、PHILIPS録音の個性+ディジタル時代ということも含め、前曲とは味わいが異なる音質。しっとりとして中低音も奥行きも豊か、ということです。わずか5分の佳曲だけれど、おそらくはMozart に負けない名曲中の名曲、ユーモラスなファゴットがやはり”哀愁の雰囲気満載”でたっぷり聴き手を魅了します。

 手持ち音源でElgarものを集めた、といったコンピレーションだけれど、イ・サロニスティって、ライト・クラッシク系の団体なんだそう。「朝の歌/夜の歌」はなんとも懐かしい旋律連続だけれど、こんな刈り込まれた室内楽的演奏も新鮮です。ほんま、”サロンの音楽”だ。「セヴァーン川」組曲は初耳の吹奏楽(ブラス・バンド演奏)であって、これは朗々としたコラール風旋律(「ウスター城(序奏)」)で始まり、カッコ良い金管技巧を駆使する「槍試合(トッカータ)」、静謐なるスケールを誇る「大聖堂(フーガ)」、「騎士領にて(メヌエット)」には牧歌的な軽快が漂う。ラスト「終曲 Coda」は朗々とした大団円だけれど、英国の含羞もちゃんとあります。ちょっぴりバロック的なテイストで、前半の”哀愁の雰囲気”満載とは異なる、健康サウンドでした。

 初耳と書いたが、EMIのエルガー30枚ボックスに含まれる(グローヴス/ロイヤル・リヴァプール・フィル1969年)から、ちゃんと一度は聴いていたのだね。すっかり忘れておりました。

(2009年10月30日)


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written by wabisuke hayashi