Debussy 管弦楽作品集
(ピエール・モントゥー/ロンドン交響楽団)


DECCA 475 7798/5,019円 Debussy

牧神の午後への前奏曲
夜想曲(雲/祭)
(1961年英DECCA録音キングスウェイ・ホール)
管弦楽のための映像(ジーグ/イベリア(街の道と田舎の道/夜の薫り/祭りの日の朝)/春のロンド)
交響的断章「聖セバスチャンの殉教」(ゆりの園/法悦の舞曲と第1幕の終曲/受難/良き羊飼いキリスト)
(1963年PHILIPS録音ウェンブリー・タウン・ホール)

ピエール・モントゥー/ロンドン交響楽団

DECCA 475 7798(7枚組)5,019円にて購入

 ピエール・モントゥーは贔屓でして、この贅沢なる(【♪ KechiKechi Classics ♪】相場に非ず)このボックスセットを購入したのが昨年2007年夏。既存所有音源をオークションにて数枚処分したことは既に表明済み。クラシックCD業界も再編が進んでいて、DG、英DECCA、PHILIPSが同じ会社になってしまったのは既にかなり以前。ワタシのような旧世代は各レーベルの色が鮮明に異なる、と認識しているから、こうして「同じ演奏家だし、Debussyだからエエでしょ」的収録は少々悩ましい。でも、ま、筋は通っております。CD一枚80分を超える収納も有り難いもの。

 ワタシの勘違いかも知れぬが、この時期のロンドン交響楽団は格別な水準だと感じますね(実際はジョージ・セルの録音にあたっての逸話にあるように、メンバーの交代期で絶好調とは言いかねるらしい)。LP時代から馴染みの演奏であり、各々個性は異なるが、現在の耳でもかなりの優秀録音。Debussyにはやや”ワカラン!”的印象ないでもないが、いずれ「ヴェリ・ベスト」と呼びたいところ。

 「牧神」はいかにも官能的に気怠い表現を連想しがちだけれど、オケの響きはあくまで清涼、旋律の揺れや詠嘆を旨とせず、粋な雰囲気漂います。静謐なる深呼吸のような、気品溢れる演奏。木管の表情付けが濃過ぎず、そして素っ気なくなることもない。「雲」も同様な曖昧模糊とした雰囲気の作品だけれど、響き渡る表現は”曖昧”ではなく、クリアで明快〜なんだけど、ブーレーズ風怜悧レントゲン的分析ではないバランス感覚溢れるもの。「祭」のリズム感の明晰なこと、明るくノリノリであって、しかもアンサンブルが精緻なことも特筆しておきましょう。(なぜ「シレーヌ」を録音してくれなかったんだ!残念。ボストン交響楽団との1955年録音が聴きたい)

 「映像」からPHILIPS録音となって、豊かな中低音と臨場感が増していると感じます。粋と緻密が同居している表現は同様だけれど、いっそうの昂揚が感じられるのは作品個性の違いもあるのか。時にけっこう金管の絶叫が壮絶な「ジーグ」。「イベリア」はカスネット、タンバリンも大活躍(位置関係明快!)のスパニッシュ・リズムのキレ軽快だけれど、リキみはどこにもなく、颯爽とした風情が爽快。オケの響きはセクシーですね(「街の道と田舎の道」に於ける、やはり金管群)。「夜の薫り」は「雲」に似るが、もっと妖しげなる甘美な闇を連想させますね。ユーモラスな「祭りの日の朝」は、「祭」(夜想曲)の時間的に前段階かな?浮き立って、華やかな気分がじょじょに盛り上がって参りました。

 「春のロンド」は、Caplet編なのかな?薫風のように爽やか、かつ華やかな作品だけれど、三つの作品にはあまり連関はないように聞こえます。モントゥーは淡いが、色彩豊かな表現で愉しませて下さいました。

 ここまでで壱時間の収録だから充分なんだけど、更に(ワリと珍しい)「聖セバスチャンの殉教」(これもCaplet編?神秘劇からの管弦楽作品)収録で駄目押し。これは中世の宗教絵画とか三島由紀夫の(自らモデルの)写真ばかりネットで引っ掛かるが、肝心の筋が詳細よくわからない。ま、キリスト教がまだ異端であったローマ時代の殉教者への称揚なんでしょ、きっと。

 ルイ・ド・フロマン盤辺りで昔馴染みの旋律であり、官能的静謐な旋律サウンドは充分美しいと感じます。が、少々”歯が立たない”といった先入観が先に立つのは、全曲盤(アンゲルブレシュト)でも同様の感触でした。呟くような音楽が感銘に変わるまで、修行が足りません。鬱々とした気分ばかり・・・おそらくは圧巻の感銘が押し寄せるまで、もうちょっとだけ努力しなければ・・・

(2008年8月15日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi