Elgar 序奏とアレグロ 作品47/「エニグマ」変奏曲 作品36/
Britten 「狩りをするわれらの祖先」作品8
(ベルナルト・ハイティンク/ロンドン・フィルハーモニック/
ヘザー・ハーパー(s))


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序奏とアレグロ 作品47(1984年ライヴ)

Britten

「狩りをするわれらの祖先」作品8(1979年ライヴ)
ヘザー・ハーパー(s)

Elgar

「エニグマ」変奏曲 作品36(1986年ライヴ)

ベルナルト・ハイティンク/ロンドン・フィルハーモニック

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 ベルナルト・ハイティンクがロンドン・フィルのシェフを務めたのは1967年〜1979年、この録音を聴くと、その後も良好な関係であったことは想像可能です。PHILIPSレーベルが吸収解消されてしまったこともあるけれど、このオーケストラとの正規録音は意外なほど(現在)発売されていないと思います。Elgar/Brittenはエエ出来ですね。この人の質実な表現は英国音楽に似合っていると思いますよ。

 「この作曲家がお好きですか?」「指揮者は?」「お気に入り作品は」〜こんな質問をいただくと、思いっきり当惑してしまう。Bach 、Mozart は別格としてMahler 、Stravinsky辺りか。いえいえBartok、Sibelius を忘れちゃいけない、イタリア・バロックはどーした?肝心の英国音楽を忘れもらっては困る・・・指揮者嗜好は(いっこうに定まらぬので)さておき、この美しい「序奏とアレグロ」は大好きな作品と言い切ってもよろしいでしょう。

 幅広く恰幅の良い「序奏とアレグロ」は、バルビローリのグラマラスな詠嘆とも、ボウルトの剛直な雄弁とも異なる、清潔誠実な魅力を持っておりました。劇性に過ぎず、情熱や歌にに不足しない。アンサンブルの仕上げは極上。リズムと流れにムリがなく、陰影ある響きはふくよかに穏健・・・ロンドン・フィルの弦がこれほど豊かに、味わい深く響くのもそうザラに経験できるものではありません。(ここまで序奏)後半「アレグロ」に入っても、印象変わらず。デリカシーと推進力が両立する希有な完成度!これでライヴ、というか、それ故にアツさが付加されたでしょう。

 音質は会場の雰囲気、空気を捉えた素晴らしいもの。

 「狩りをするわれらの祖先」作品8(1936年初演)は(このCDにて)初耳作品だけれど、ハーパーの強烈な熱唱に目も眩むほど!凄い迫力、一期一会的壮絶な歌声、それに負けじ、とばかりオーケストラがアツく爆発しておりました。自由奔放なる旋律リズムは、まさに現代に近い破壊的な魅力有。30分弱。女性に年齢は失礼ながら、1930年生まれハーパー円熟49歳の記録となります。もちろんオーケストラは抜群に上手い。とくに金管。

1.プロローグ(Prologue)* ちょっと深刻なる前口上かな?
2.ねずみよ去れ!(Rats away!) * 緊張感のある打楽器群と、奔放なる金管の自在なる掛け合いが凄い。もちろん主役はソプラノだけれど
3.メッサリーナ(Messalina)* 叙情的な朗詠であります。切迫感有
4.死の舞踏(Dance of Death)* 超絶技巧のソプラノ、跳躍する旋律はオーケストラが後追いします。後半の金管+打楽器は圧巻、カッコ良い!
5.エピローグと葬送行進曲(Epilogue and Funeral March)* やや素っ頓狂、ユーモラスな打楽器にソプラノの詠嘆が絡みます。やがていかにも”それ”らしい(乾いた)葬送行進曲へ・・・消え入るように・・・

 なんせ歌詞の意がワカラん(ド・シロウトな)ので、純粋サウンドとしてたっぷり堪能いたしました。こんな出会いがあるから、音楽は油断できん。

 「エニグマ」は文句なく、いつでもどこでも誰の演奏でも痺れる名曲〜1970年代にハイティンクはロンドン・フィルと来日していて、ワタシはテレビで「エニグマ」聴きましたよ、子供の頃。でも、ちっともエエ曲に思えなかった。オトナにならぬと、こんな地味な(全編モノローグのような)魅力は理解できないものなのか。抑制を基本にした集中力、細部ていねいな配慮、質実で淡彩、そして暖かい表現、安易に流さない、空虚に爆発しない。第4変奏曲「W.M.B.」さえ喧しく響きは濁らない。第7変奏曲「Tryote」も同様、カッコ良く躍動いたします。各パートが突出することなく融け合い、第9変奏曲「Nimrod」にて黄昏の詠嘆に至る・・・

 大仰な色付けせんでも第12変奏曲「B.G.N.」は充分深みがある〜というか、ほとんどこれ以上の情感演奏は出会えんでしょう。ラスト第13変奏曲「E.D.U.」(作曲者)の着実な歩み、奥行きあるサウンド、昂揚、万感胸に迫りました。ここで初めて全力渾身の爆発来る!実力あるオーケストラは弱音でも音楽が弱くならず、最強音にてさらに余裕があって響きは濁らない。

(2011年8月4日)

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written by wabisuke hayashi