de Falla バレエ「恋は魔術師」(1915年初演版)/歌劇「ペドロ親方の人形芝居」
(ディニ・チアッチ/イ・カメリスティ)
de Falla
バレエ「恋は魔術師」(1915年初演版)
ディエゴ・ディニ・チアッチ指揮
歌劇「ペドロ親方の人形芝居」
マウリツィオ・ディニ・チアッチ指揮/イ・カメリスティ
ナンシー・ファビオラ・エレーラ(ms)/ジョルディ・ガロフレ(t)/ナターシャ・ヴァリャダーレス(s)/イスマエル・ポンズ=テーナ(br)
NAXOS 8.553499 1995年録音 880円(?)
de Fallaには歌劇「はかなき人生」という名作があって、なかなか(CDでも)聴く機会を得なくて、ようやくBRILLIANTが痺れるような素晴らしい録音を廉価で発売してくださって、その悪魔のような魅力に連日連夜浸っております。スペインのリズムやら濃厚な旋律に脳髄も痺れる思い・・・エドゥアルド・マータ/シモン・ボルヴァル響(ベネズエラ)という魅力あるコンビでde Fallaを楽しんでいたら、ああ、そういえば、と思い出したCDがコレ。
これはヴェローナで録音されたみたいだし、イ・カメリスティは「トレント、ヴェローナの室内管」となっているから、オール・イタリア・チームなんじゃないかな?ことあるたびに厳しくNAXOSの制作姿勢を批判する人(まさにこのCDを「おっそろしくオーケストラが下手。弦が薄い、録音悪し」と手厳しい。編成がうんと小さいだけですよ)もいらっしゃるけれど、ワタシはこんな素敵で貴重な録音を準備してくださるNAXOS支持派であります。(価格はもう少々努力を望む)「火祭りの踊り」で有名な「恋は魔術師」だけれど、初演版というのは(ネットで検索する限り)これしか存在しない。
スペインって、情熱的な筋書きのドラマが多いみたいですね。(以下、粗筋。勝手にあちこち引用抜粋ごめんなさい)
賭事に興じている二人の男が、幼い息子(ホセ)と娘(カンデーラ)の結婚の約束を交わす。その光景を悲しそうに見つめているもう一人の少年(カルメロ)はカンデーラへの愛を心に秘めていた。やがて成人したホセとカンデーラの婚礼の日がやって来た。だけれど浮気なホセは婚礼の日でありながら、若く美しい娘ルシアのあとを追い回す。
ジプシー村のクリスマス。不実な暮しをしていたホセは、ルシアを他の男と争ううちに刺されて死んでしまう。嘆き悲しむカンデーラ。カルメロは、彼女をかばったばかりに、誤って投獄されてしまった。
それから4年、刑を終えて戻ってきたカルメロはまだカンデーラを愛していた。しかしカンデーラは、夜ごとホセが殺された荒野にさまよい出て、夫の亡霊と踊っている。
「死者を遠ざけるのは火よ」〜妖術師の呪文の助けをかり、亡霊を追い払う“火祭りの踊り"が行なわれる。これに失敗したカルメロは、妖術師から、ルシアを犠牲にすることを教えられる。カンデーラの呼びかけにより、ホセが現われる。そしてルシアはホセについて行った。夜明けを迎え、呪いから放たれたカンデーラと、愛を得たカルメロの姿があった。
う〜む、なるほど。「火祭りの踊り」ってそんな場面だったのね。「はかなき人生」とは違って、ハッピー・エンドというのも嬉しいではないか。通常演奏される組曲版では、20数分というところだけれど、初演版では第1場(17分ほど)第2場(20分ほど)、台詞入りなんです。なにより違うのが楽器編成でして、ほとんど室内楽(詳細説明がない。もしかしてワタシが読めないだけかも)風。弦は(ほぼ)一人ずつ、ピアノにトランペット、トロンボーン、フルート、ピッコロ、ホルン、オーボエ(・・・以上想像。違ったら御免)〜んもうこれが滅茶苦茶上手い!ノリノリ。録音も最高。(某氏と正反対の感想)
フル・オーケストラの豪華迫力も楽しいけど、繊細で親密なる室内楽風編成も魅力的でして、歌い手の様子がよく見えるんです。台詞も生きます。もともとバレエだから、ぜひナマで拝見したいものですな。「悩ましい愛の歌」って、ほんまに悩ましくって、妖しい官能振りまいてますね。ワタシはこれを「演歌」(「怨歌」でもいいや)と呼びたい・・・ここのメゾ・ソプラノは低音に凄みがないといけない。(バーンスタイン盤に於けるマリリン・ホーンにその理想を見る)エレーラもなかなかの説得力でした。
●
歌劇「ペドロ親方の人形芝居」のほうは、セルバンテスの「ドン・キホーテ」の一挿話を使った一幕もののオペラ(人形劇かな?)だそうです。ムーア人に囚われたメリセンドラ姫(シャルルマーニュ大帝の娘)の救出劇を観にきたドン・キホーテが、劇と現実の区別がつかなくなって劇中に乱入するというまさしく劇中劇
・・・とのこと。こちらはフツウの室内オーケストラ編成で28分ほどの作品。剽軽で気紛れな旋律が躍動して、打楽器多数がいろいろたっくさん大活躍!あるときは切々と静謐であって、ヴァリャダーレス(s)の語りのような歌も、哀しげでエエ感じです。(言葉はわからないが)
エキゾチックな旋律を、とくに金管(ほとんどソロ)が上手く(技術的にもまったく立派)表現していて、こちらも「恋は魔術師」に負けない魅力ある作品でした。チェンバロもハープも出てきますよ。ラスト賑々しく盛り上がって、暑苦しい日々にはピタリ!の味わいでして、Beeやんよりは夏向け作品・・・ワタシの肌合いにフィットするということですね。