de Falla バレエ音楽「恋は魔術師」
(レナード・バーンスタイン/マリリン・ホーン(ms))
バレエ音楽「三角帽子」(ピエール・ブーレーズ/デガエターニ(ms))
/ニューヨーク・フィルハーモニック
de Falla
バレエ音楽「恋は魔術師」
レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック/マリリン・ホーン(ms)(1976年録音)
バレエ音楽「三角帽子」全曲
ピエール・ブーレーズ/ニューヨーク・フィルハーモニック/ジャン・デガエターニ(ms)(1975年録音)
CBS/ODYSSEY MBK 44721 500円にて購入
光陰矢の如し、以下の恥ずかしい文書は既に10年以上前となって、異動転居二度経験。このCDを聴いたのもそれ以来じゃないか・・・その後、de Fallaはお気に入りとなって、ヘスース・アランバリ、アルヘンタとかペドロ・デ・フレイタス・ブランコ、エンリケ・ホルダ、ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス、エドゥアルド・マータ〜ネット音源も含め、ごっそり聴くように至りました。「賛歌」、「アトランティーダ」等、あまり知名度の高くないもの、もちろん(有名な)歌劇「はかなき人生」もすっかりお気に入りに。(ケネス・ジーンのCD(NAXOS 8.550174)は棚中見当たらぬので処分したのでしょう)
1989年に発売されたCDは、2作品にてトラック2つしかない、といった驚くべきもの。コンピレーションとしても少々乱暴なるバーンスタイン/ブーレーズの組み合わせ。バーンスタインによる「恋は魔術師」は1976年録音、既にブーレーズ時代に至ったニューヨーク・フィル。既に欧州進出していた頃の録音、バーンスタインの前のめり情熱的な推進力の下、オーケストラはかなり整ったアンサンブルを聴かせます。少々粗っぽくても良いから、1960年台の「三角帽子」組曲を併せるべきでしょう。かなり仕上げ入念を感じさせるような時期に至っておりました。「火祭りの踊り」は期待通りの躍動有。以前はマリリン・ホーン絶賛!していたけれど、あちこち聴くともっと泥臭い歌い手はいるもので、そう驚くようなパフォーマンスに非ず。豊かな表情、低音の迫力、はみごとなる貫禄であります。
ここ数年、de Fallaを数多く聴くように至って、考え方を変えました。西班牙の民族色濃い作品演奏には、Ravel ばりの緻密さ、集中力、色彩が必要かと。かつてブーレーズとの相性に疑念を抱いていたけれど、焦点はそこなのか。ブーレーズはクールであって、情熱バーンスタインとの違いは明快。オーケストラのアンサンブル細部描き込みも徹底され、それこそ緻密なアンサンブル、洗練が凄い。オーケストラも絶好調に上手い。音質も極上。10年以上前の自分は”クール”、”緻密”、”洗練”に違和感を持ったのだろうな、おそらく。しかしde Fallaの作品って、本来そんな表現を要求すると思います。彼はRavel とかStravinskyと同様の対峙をしているのでしょう。ジャン・ガエターニ(s)も現代音楽を得意とする人だったらしい。
粉屋の女房に横恋慕する市長の(ユーモラスな)物語にしては、ちょっと気取り過ぎ?諧謔性とか爆発とか無縁、美しく繊細、淡々と涼しげなるリズムに支配され、スペイン系ローカルな(骨太)演奏に耳馴染んでいると、精緻な完成度に少々たじろぐほど。ブーレーズはラテンの味付け優先ではなく、楽譜の正確な読み込み、入念なる再現に傾注したのでしょう。数多く「三角帽子」を聴いてきて(かつては組曲版と全曲盤の違いも知らなかった)、こういった演奏に真髄があるのかも〜宗旨替えです。
但し、バーンスタインと続けると(やはり)違和感多大。LPオリジナル同様、チェンバロ協奏曲(イーゴル・キプニス(cem))を持って来るべきでしょう。 (2013年7月28日)
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最初に、余計なる蘊蓄を。いつもながらCBS/SONY系の廉価盤は音源組み合わせが滅茶苦茶で、ブーレーズだったらキプニス(cem)とのチェンバロ協奏曲を持ってくるべきだし、バーンスタインだったら「三角帽子」第1第2組曲の音源が存在するはず。まぁ、誰が聴いても「これが同じニューヨーク・フィル?」というくらい音が見事に違う!それに全部でトラックが2つしかない。以上、無用なる蘊蓄でした。
「第1第2組曲」といったが、全曲の録音は意外と少ないのでCDを買うときは気を付けましょう。組曲版には、歌も、冒頭の派手派手しいカスタネットも入っていなくてオモロくない。掛け声も手拍子もない。一番ラストの長々しいカスタネット「総動員」さえなくて、間が抜けている感じ・・・・って、コレ、もしかしてワタシの持っているCDだけ?(ジーン/スロヴァキア放響 NAXOS 8.550174)もしかして、版の違い?
初演者でもあるアンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団のステレオ全曲盤が最高評価とされております。(国内でも手に入りやすい、はず。聴いたことなし)ワタシは個人的にはLP時代愛聴したホルダ/ロンドン響盤が忘れられないが。バーバラ・ホヴィット(ms)の「ほとんど地声の絶叫」が壮絶でした。
では、最初に収録されている「恋は魔術師」〜「火祭りの踊り」で有名です。ここでは26:20収録だけれど、じつはオリジナル版があって「イ・カメリスティ」という団体(室内楽編成というか、演奏者数人しかいない感じ)の素晴らしき演奏で、NAXOS 8.553499 で手に入ります。ご参考まで!バーンスタインの演奏がほんま凄いっ!アツい!これぞニューヨーク・フィルの骨太の響き。
これ、録音年代はインターネットで調べたが、たしかに1960年前後の荒々しいアンサンブルではないし、あちこちと細かい思い入れの表情が入念で、感心します。でも、問題はアツき情熱ですよ。なんやら、やたらと胸が切なくなるようなリズム感が溢れて、これほど気持の入った演奏は滅多にないはず。
で、ツボはマリリン・ホーンさんの歌。「おっ!」というくらい、ドスが効いてて、コブシが回っていて、いやこれもう演歌の世界でっせ。数回登場するが、なんども聴きたくて、聴くたび「くうぅ〜っ!!!」ってな感動が怒濤の如く〜参りました。バ〜ロー中途半端は許さんけんね(椎名誠読み過ぎ)風演奏で、痺れますっ。保証します。
残念ながら「恋の魔術師」にはカスタネットは出番はないようですね。でも、ラストにちゃんと「NHKのど自慢の鐘」(「伊藤家の食卓の鐘」とも言う)が登場して、幻想的に奥深いサウンドを醸し出します。(ちなみにオリジナルにはチューブラーベルは登場せず)正直、旋律的にも「三角帽子」よりワタシ好み。あくまで好みで。
「三角帽子」〜いつも奇妙な三角帽子をかぶった市長は、美人で有名な水車小屋のおかみさんをものにしようと計略をめぐらす。自分のベッドに市長が寝ているのを見た水車小屋の主人(粉屋〜どうしてかわかる?昔は水車で粉を挽いたんだよ)ルーカスは、脱ぎ捨てられた市長の衣装をまとい、市長の邸に向かう・・・。〜というような(きっと)「スペイン人なら誰でも知っている」風ストーリー。(「フィガロ」にも似ている筋)
ワタシはブーレーズの大々ファンだけれど、とにかく4〜5回聴いた結果はちょっと「ウ〜ム」。冒頭ティンパニ連打+トランペットの勇壮なファンファーレ〜舞台いっぱいに広がってカスタネットが盛大に!(何人くらいいるのかな)+「オレ、オレ、オレ!」の掛け声(手拍子付き)に「気をつけなはれや・・・」と、デアガエターニさん登場。
これがいけん。さっき、マリリン・ホーンさんの美空ひばりのような歌声聴いているでしょ?いかにも細いなぁ。ブーレーズのアンサンブルは、ええっ!これがほんまニューヨーク・フィル?というくらい緻密でクールな演奏に仕上がっていて、緩くないし、ティンパニ、シロフォンのリズムの確かなこと。いい音で鳴っているんですよ、あらゆるパートが。録音も極上。
ディスクマンなんかで集中するとわかるが、あらゆる細部に配慮があって、並々ならぬ集中力に間違いなし。美しい。de Fallaの旋律の美しさを、とことん教えていただきました。500円なら断然安い!買ってちょうだい、って東京で手に入れたんだけど。(沢山あったから過剰在庫かも)
ところがね、何度聴いても「ああ、きれい」とは思うし、メリもハリもあるけど、さっきの「恋は魔術師」(バーンスタイン)のように燃えない。ドキドキしない。けっしてダメな演奏とは思いませんよ。でもねぇ、色恋沙汰を真顔で理論的哲学的数学的に分析しても・・・みたいな印象。なにが足りないんだろう、並の緻密さや迫力、リズムじゃないんだけど。
有名なる「運命の動機」(これ、警察の踏み込みを表現している)も、出てくるし、ほんま良くできた曲。あと、これにバーンスタインの情熱が加われば・・・みたいな贅沢望みます。洗練されすぎているのかな?シロフォンが効果的、ほか、いろいろ沢山打楽器あるみたいです。ピアノもあるのかな。(ようわからんが)技術的には最高に近い切れ味。それはそれで充分聴く価値有。
ラスト終曲で、ようやくカスタネット再登場(というか、途中でパラリパラリ登場するが)例の舞台いっぱいに広がった盛大なる総動員ですよ。いやはや、ここは存分にアツくなってます。文句ありません。かなり、聴いたあとスッキリする曲ですね。こりゃ、カスタネット弾く人にはタマらん逸品ですな。(2002年12月20日)
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