Dvora'k 弦楽四重奏曲ニ長調(第3番 シュターミツ弦楽四重奏団)


Dvora'k 弦楽四重奏曲ニ長調(第3番 シュターミツ弦楽四重奏団) Dvora'k

弦楽四重奏曲ニ長調(第3番 作品番号なし)

シュターミツ弦楽四重奏団

BRILLIANT 99949/1 1993年録音  10枚組1,650円で購入したウチの一枚。

 Dvora'kの弦楽四重奏曲を全曲10枚分聴こう、なんて、この価格で入手できなかったら実現しないことでしょう。ありがたいことです。たいていは第12番ヘ長調「アメリカ」(たいへんな名曲!)辺りでお付き合い終了・・・ワタシもそんなひとり。交響曲ならともかく、こんな室内楽作品全部で何曲あるの?ってフツウ知らんと思いますよ。(弦楽四重奏曲で20曲ほどですか?)その(ありがたい)ボックス壱枚目がコレ、作品番号なしのニ長調。

 驚きました。美しく懐かしい旋律に。そしてなにより演奏時間が!ナント4楽章72:21!Brucknerの交響曲ちゃいまっせ。生粋の弦楽四重奏曲。20歳台後半、おそらくプラハ歌劇場のヴィオリストを務めていた頃の作品じゃないか、とのこと。試しにネット検索掛けてみたけれど、少なくとも日本語サイトでは出現しませんね。どうしてこんな長大な、そして優美な傑作ができあがったのか。わっかりません。どうして無名な作品であるのかも。

 第1楽章「アンダンテ・コン・ブリオ」=26:20・・・う〜む。辛気くさい旋律だったら耐えられないかも。大編成オーケストラなら、金管の開放的な響きとか、打楽器炸裂!千変万化する各パート楽器音色の妙、など楽しみ方も様々だろうが、弦楽器4本でっせ、大丈夫だろうか・・・とのご心配無用。「新世界」交響曲知ってますよね。あれです。わかりやすくて懐かしい。そんなちょっと素朴で暖かい、溌剌として切ない旋律が延々と続いて、いつまでも聴いていたい、そんな気持ちになります。(実際、いつまで続くんじゃ、というくらいたっぷり長い)

 第2楽章「アンダンテ」だって17:25。これは哀しみのモノローグです。でも詠嘆が色濃くない。悲劇ではなく、もっと内的静的な、そこはかとないココロの落ち込み気分でしょうか。時に弱々しい微笑みも浮かべ、淡々と、いままでのこと、あまりよいこともなかったけど、ここまで生きてきました、みたいな寂寥が感じられました。第3楽章「アンダンテ・エネルギーコ」(14:42)はスケルツォ楽章だけど、抑制の利いた上品な舞曲となっております。溌剌とは仕切れない、柔らかい舞踊はときどきゆっくりと立ち止まり、振り返ります。ちょっと陰もある。

 終楽章「アレグレット」は13:37。基本長調の旋律だけれど、若者の含羞というか、躊躇いと迷いもあって一筋縄ではいかない味わいを持っております。「終楽章はまとめに入って、一発元気良く!」的世界ではなく、師匠筋であるBrahms にも似て、諄々たる説得力ある語りが全曲を締めくくりました。

 初耳の作品でまだまだ馴染みとは言い難い、もちろん「聴き比べ」などの機会もあろうはずはない。でもね、これきっとマトウシェク(v)〜読売日本響のコン・マスとしてお馴染み〜率いるシュターミツ弦楽四重奏団の聴かせる力量なんでしょう。艶々の音色ではないが技術的に問題ないのは当たり前として、 草の香りがするような懐かしい歌ゴコロが溢れました。録音はデジタル臭さの欠片もなく、聴き疲れしません。(Bayer原盤)彼が参加するほかの室内楽も欲しくなりました。

(2005年4月8日)


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written by wabisuke hayashi