Sarasate ツィゴイネルワイゼン/カルメン幻想曲/
Dvora'k マズレック ホ短調/ヴァイオリン協奏曲イ短調
(諏訪内晶子(v)/イヴァン・フィッシャー/ブダペスト音楽祭管弦楽団)


* Sarasate

ツィゴイネルワイゼン/カルメン幻想曲

Dvora'k

マズレック ホ短調 作品49
ヴァイオリン協奏曲イ短調 作品53

諏訪内晶子(v)/イヴァン・フィッシャー/ブダペスト音楽祭管弦楽団

PHILIPS PHCP-11188 1999年録音

 女性に年齢は失礼だけど1972年生まれ、妙齢となってますます美しい晶子さま。ネット上ではやれ泥沼の離婚劇とか高額脱税の話題に、例の如し匿名上から目線のコメントは、やれ”あれでチャイコフスキー・コンクール優勝だからたいしたことはない”とか、言いたい放題好き放題〜アホか。幼少からヴァイオリン一筋、若くしてスターダムに乗ったら、そりゃ世間知らずですって。ましてや彼(か)の容姿でしょ?狭い世界にちやほやされるから、出会いもオトコを見る目も養うヒマはない、自ら税金申告なんかするハズないじゃん、マネージメントが悪いんですよ。やはり人間って、若い頃の下積みとか苦労は必要なんでしょう。ジャック・ティボーはカフェでバイトしていたらしいし、騙されて無一文、異国に放り出されたユージン・オーマンディは映画館でヴァイオリンを弾いていたらしい・・・閑話休題(それはさておき)

 彼女のCDって、ほとんど聴く機会を得なくって、これが実質上初耳。美しいお写真ですねぇ、芸術に容姿など関係あるのか!という高尚なご意見には、芸能だから見た目は重要なポイント、と答えておきましょう。所謂テクニック披瀝系作品であるSarasate始まりました。気分転換やストレス解消にハイフェッツ!CD一枚あれば充分、そんな作品であります。これが素晴らしい、というか”テクニック披瀝系”を感じさせぬ、しっとり美しい作品として聴かせる演奏。ハイフェッツを思い起こせば、テクニックのキレにはちょいと差があるかも知れぬが、音楽ってそんなものじゃないでしょ。HMVのユーザー・レビューは概ね好感を以ってコメントされているけど、一部辛口も・・・曰く これは裏

うーむ、チゴイネルワイゼンは諏訪内の「できる事、できない事」がもろに暴露されている。技術で征服する事が音楽ではなく、それ以上のところに飛び出さなければ芸術として長く付き合う価値のものとはならない。彼女はまだ芸術家としての自分の方向性に悩み葛藤しているのだろうか?それとも諦めてしまって、これだけ弾ければ満足と思っているのだろうか。デビューの鮮烈さを知るだけに複雑な気持ちだ。
 う〜む、女性は美人にいっそう手厳しい。でも、この指摘って正鵠を射ていると思います。一聴、彼女の個性が刻印される水準、人気はあっても圧巻の説得力というものは、たしかに不足かも。それでも、このウェットな気品はまさに日本人好み(?)作品そのもののイメージを上品に変えて、”これだけ弾ければ満足”と聴きました。こちら残念、美人を苦手としているけれど(出典は古典落語「まんじゅうこわい」より)

 ウェットな気品、それはメインのDvora'kにいっそう顕著。マズレック ホ短調ってほんの5−6分、わかりやすい民族的なリズムと哀愁漂う名曲(と初めて自覚)、これがウェットな音色に似合って、しっとりとした風情いっぱいにデリケートな”泣き”を感じさせるもの。美しく洗練された音色、適度に抑制されたヴィヴラート、表現としては素直、クサい個性をバリバリ表出するものに非ず。

 マズレックは旋律知っている程度、ヴァイオリン協奏曲には少々苦手意識が・・・何故?記憶辿るとオイストラフじゃないな、イリヤ・カーラー?違う、おそらく出会いはルジェーロ・リッチ(VOX)、彼(か)の少々素っ気ない快速演奏のイメージかも。晶子さんは第1楽章「Allegro ma non troppo」から強靭、アクの強い表現から遠く、優しい伸びやかな歌に溢れて美しい。人によってはアクとか個性、線の太さを求めるかも。しかし静謐なところの気品洗練は出色、東欧の民族的テイストには遠いのかも知れぬが、作品そのものの価値を上げていると思わせます。

 故に第2楽章「Adagio ma non troppo」緩徐楽章は絶品!オーケストラとのバランスも良好。走らず、力まず、細部の描き込みも爽やか。終楽章「Allegro giocoso ma non troppo」の躍動するリズム(一歩間違えばとてもツマらない)も軽快であり、そっとデリケートなソロが床しく活躍します。線は細い?迫力不足?いえいえ、この洗練されたヴァイオリンを愛して止みません。

 言うまでもないけど、PHILIPSの中低音重視の音質、イヴァン・フィッシャーの配慮あるオーケストラがしっかり支えております。

(2014年7月12日)


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written by wabisuke hayashi