平井満実子/佐野健二1993ダウランド・リサイタル


John Dowland(ジョン・ダウランド) (1563-1626)

「帰っておいで」
「行け、わが窓辺より」(リュート独奏)
「百合のように白く」
「彼女は泣いていた」(リュート独奏)
「常にダウランド、いつもエンドレス」
「彼女は許してくれるだろうか」
「ファンシー」(リュート独奏)
「暗闇に住まわせておくれ」

平井満実子(s)/佐野健二(リュート)

1993年6月12日大阪録音(のFM放送〜ライヴではない) カセット〜MDへ

 これも「岡山ポリフォニー・アンサンブル」絡みで取り出した録音。ふだん聴きませんけどね、ナマなら清廉に心洗われるような気持ちになるし、もしかして手持ちでこんな音楽あったかも、と思い出したりします。演奏会の古金千枝さんもよかったが、平井満実子さんの細部まで配慮の行き届いた歌いぶりは、さすがプロとしての自信に溢れていました。

 「ダンスリー」というバンドを知っていますか?LP時代には、坂本龍一の作品も入っていて「THE END OF ASIA」は気に入っていました。平井さんは一時そこにも参加していたらしい。ヴィヴラートがほとんどなくて、軽やかなリズム感もある。第1曲目の「帰っておいで」が、かそけきリュートに乗って歌いだされると、高原の涼風のような青空が広がります。まるで、雪が解けて春の訪れを表現しているかのような、希望に満ちた表情。

 ワタシは英語のことはようわからんが、言葉がとても明快で綺麗だと思うんです。はっきりとしたフレージング、語られるような清潔な発生・発音が感じらました。透明で、ヴィヴラートがほとんどない、後年のオペラとは無縁の世界。旋律が平易で、難しくて縁遠い昔の歌、といったイメージはありません。

 リュートは、ギターに比べると自由が利かなくて、素朴な音色でしょう。まるでトツトツと語られるような、さびしげな味わいが深い。(これ実演で聴くと、音量が小さいんですね)「百合のように白く」〜冒頭、高音で静かに歌いだされるところは、人の声とは思えない〜まるで天上の響きのようでした。深い悲しみは、甘い痛みのように語られ、歌われました。

 「彼女は泣いていた」の密やかな悲しみに浸っていたら、残念ながらテープが反転、気持ちが途切れます。「常にダウランド〜」の華やかな舞踏のなかに感じる一抹の寂しさ、変拍子の効果的なこと。これ、皆さんよくご存知の「スカボロフェア」なんかに一脈通じていて、いっそう躍動感がありました。

 ダウランドの曲は題名だけ見ていても、なんか悲しげで、曲を聴いてみるとほぼ題名どおり。心癒される音楽を堪能しました。


 MD余白にはBrahms の室内楽を・・・・・

ヴィオラ・ソナタ第2番 変ホ長調 作品120-2

守山ひかる(va) /荻野千里(p)

 これも1993年くらいのスタジオ録音。(カセットにて録音)インターネットで検索してみたら、守山さんは現在新日フィルの主席らしい。ま、この辺りの曲は、ややお疲れ気味の中年男性の胸を締め付けるような黄昏の世界があって、お気に入りの曲です。もの悲しく、諦念に満ちた旋律の魅力は、女性や若者には理解できんであろう・・・・(と、愚痴)。

 ヴィヴラートも豊富で、陰影は強くありません。重すぎず、濃厚になりすぎず、華やいだ感じもあって、これはこれとして魅力的な演奏でした。

 ラストEnescu「演奏会用小品」も収録。これは珍しい曲でしょう。旋律の美しい佳曲です。(2001年12月14日)


 

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written by wabisuke hayashi