Debussy 交響的素描「海」/夜想曲/春/
牧神の午後への前奏曲(ヤン・パスカル・トルトゥリエ/アルスター管弦楽団)
Debussy
3つの交響的素描「海」
夜想曲
交響組曲「春」(H. Busser編)
牧神の午後への前奏曲
ヤン・パスカル・トルトゥリエ/アルスター管弦楽団
CHAN10144-47X 1991年録音
Debussy管弦楽作品の有名どころ揃えて、盛り沢山な一枚。既に歴史的音源を聴く機会は減ったけれど、とくに弱音と細部描き込み入念な作品には鮮明なる音質は必須でしょう。こどもの頃「海」との出会いはカラヤン?ブーレーズだっけ。いずれ馴染みの独墺系とは異なる特異な旋法に耳慣れず、名曲と認識するのにずいぶんと時間が掛かりました。カラヤンの重苦しくも分厚く甘美なサウンド、陰影奥行きを完全無視した明晰ブーレーズ(旧録音)といった選択(したわけでもなし、偶然の出会い)がよろしくなかったのか。
アイルランドのベルファストのオーケストラ、仏蘭西音楽には独墺系以上に”本場もん志向”があるから、世間的には少々忘れられた録音かも。ヤン・パスカル・トルトゥリエ(Yan Pascal Tortelier, 1947ー)は仏蘭西の現役、サンパウロ交響楽団を降りたあとはどーしているのか、なんせ世界的にオーケストラ経営はムツかしいからなぁ。 色気とか華やかさともかく、アルスター管弦楽団は繊細清潔なテイスト、整った生真面目端正なアンサンブル、ここでのDebussyも好調です。(管弦楽CD4枚分出ている)Chandos録音も充分な鮮度、たっぷりと残響豊か。
曖昧模糊とは無縁、細部迄鮮明な音質。トルトゥリエの表現そのものが雰囲気重視とは異なってデフォルメに非ず、スッキリとした風情にどの声部もしっかり描き込んで、淡々ストレート表現なんです。「海」〜「海の夜明けから真昼まで」はその代表例でしょう、木管に躊躇いとか要らぬ表情付け色彩無縁。「波の戯れ」も同様、あっさりしたものですよ。「風と海との対話」にごりごりとした激しさはなく、トランペット・ソロやティンパニの一撃!を強調しません。(迫力は充分。カッコ良い音楽でっせ)作品の姿を素直に正確に表現した、といったところ。
音楽は嗜好の世界、いろいろ聴いてきて、ワタシはこんな演奏(録音)が好きになりました。どちらかというとRavel の精緻精密な世界が似合う表現かも(彼の録音は未聴です)。
「夜想曲」。雲 (Nuages)〜どんより無形のものを表現するDebussyの技量、漂うような旋律サウンド、油断すると行方不明になりそうな茫洋とした世界、これもトルトゥリエは淡々と雰囲気を強調せず開始しました。祭 (Fetes)はメリハリたっぷりの迫力リズム、管楽器の上手さも光りますね。シレーヌ (Sirenes)に於ける女声合唱は後方添え物色付けとしてではなく、しっかりと存在を主張します。雰囲気ニュアンスのみを強調しない、潔い風情であります。充分デリケート。
「春」には2台のピアノが入るんですね。もともと若い頃25歳頃の作品、この頃から作曲者の個性全開!長老達(サン・サーンスとか)には評判悪かったそう。旋律は後年の傑作に比べ、ずいぶんと甘美に親しみやすく、気怠い雰囲気満載です。ご存知「牧神」をラストに配置するのも、適度なクールダウン。管楽器は淡彩だけど、技量は抜群です。これも淡々とした、飾りの少ない表現に好感を持ちました。 (2014年8月30日)
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