Mahler 交響曲「大地の歌」(ベルベルト・カラヤン/
ベルリン・フィル/ルネ・コロ(t)/クリスタ・ルートヴィヒ(a))
Mahler
交響曲「大地の歌」
ベルベルト・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー/ルネ・コロ(t)/クリスタ・ルートヴィヒ(a)
DG UCCG4527 1972/3年録音
カラヤンは新旧様々太古SP〜ディジタル時代迄録音は多いので、LP時代以来聴く機会は数多くあります。但し、今も昔もあまり好みではないのは一貫していて、数年前Mahler 交響曲第9番ニ長調(1979年録音)をBOOK・OFFにて入手、一度聴いて絶望、即売り払いました。それ以来の”カラヤンのMahler ”再聴は意外な結末へ〜あまり世評高い噂は聞かぬが、これは極上の演奏なんじゃないか。オーケストラも声楽も、そして音質も。ちょっと驚き。聴き手のノーミソも日々変化(劣化?)しておりますから、嗜好だって変わるのかも。ここ最近、室内楽やら独奏曲、そしてMahler ばかり、”変わる”んじゃなくて、”偏っている”のか。この声楽メンバーはバーンスタイン/イスラエル・フィルの同時期録音と同じです。カラヤン盤のほうがずっと出来がよろしい。
古今東西一流演奏家が録音している「大地の歌」だから、その中に存在感を示すのはたいへんですよ。第1楽章「大地の哀愁に寄せる酒の歌」〜コロも70歳過ぎているから既に引退しているのでしょう。この時点40歳の最盛期、硬派のMahler 好きには、声質が浮わついて云々といった酷評をネットで拝見したが、少々素直過ぎて力感存在感(悲哀?)に不足するような気もするが、朗々と美しいテナーであります。ホルンを先頭にオーケストラは圧巻の迫力と艶、厚み。充実。
第2楽章「秋に寂しき者」〜オーボエ、フルートと弦の絡みはムーディーであり、作品に艶を与えている、というか、そちらが主役になっていると思いますよ。クリスタ・ルートヴィヒはスペシャリストであり、貫禄と深みのある歌唱はいつも通りだけれど、華麗なるオーケストラに少々埋もれた印象有。第3楽章「青春について」〜いかにも中国的な旋律が素敵であり、弾むようなユーモラスなリズム感が大好きなところ。ここでの主導もカラヤンであって、しっとり耽美的に歌って(リズム少々流し気味)、コロの存在は少々薄い。第4楽章「美について」はいっそう耽美が増したオーケストラ・サウンドに、こちらルートヴィヒは存在を主張して対等であります。カラヤンは微妙にテンポを揺らせて微細なる(イヤらしいほどの)味付け、馬駆ける勇壮なる若者の場面はバーンスタインほどの爆発を期待できません。
第5楽章「春に酔える者」〜ここが一番好き。詩の内容と旋律サウンドがぴたり!似合って、テナーは酔漢をユーモラスに演じて欲しいもの(ワルター盤に於けるパツァークこそお手本)。コロは意外と優雅に好演していて、オーボエ、ヴァイオリン・ソロ、フルートの絡み合い掛け合いも素晴らしい。カラヤンのオーケストラが上手いなぁ!どのパートも極上に存在感を主張して、全体音響に埋もれることはない。但し”迫力爆発”はないけれど。録音関係は門外漢ながら、これほど細部鮮明な、そして自然な位置関係、奥行きを感じさせるカラヤン録音はほとんど初耳。
第6楽章「告別」〜クリスタ・ルートヴィヒの存在に何らの疑念はないんだけれど、あまりに艶やかなるベルリン・フィルに聴き惚れちゃう。ホルン、オーボエ、フルートですよ。この辺りの首席は誰なんだろう?ザイフェルト、コッホ(?音色が違うような・・・)、フルートはゴールウェイかブラウ?受け持ちパートが出てくると、んもう耳が釘付け状態に。弦もムーディそのもの。声楽と対等平等、というより明らかに主導権はそちらでしょう、なんせ交響曲ですから。ひたすら耽美的、聴かせ上手な「告白」であります。
若い頃なら、明らかに嫌いな方向の、作りすぎ、味付けすぎ、化粧濃すぎの演奏か。たっぷり堪能いたしました。 (2011年1月29日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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