Tchaikovsky ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調/
Franck 交響的変奏曲/D'indy 「フランスの山人の歌による交響曲」
(チッコリーニ(p)/クリュイタンス/パリ音楽院管弦楽団)


EMI 7243 5 73177 2 6 Tchaikovsky

ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調(1951年)

Franck

交響的変奏曲(1953年)

D'indy

「フランスの山人の歌による交響曲」(1953年)

アルド・チッコリーニ(p)/クリュイタンス/パリ音楽院管弦楽団

EMI 7243 5 73177 2 6  4枚組3,090円で購入したウチの一枚

 購入既に7年は経っているが、ちゃんと聴いておりませんでした。更に途中でFranck /D'indyはTESTAMENT SBT7247(CD4)にてダブり購入に気付いたのも情けない。閑話休題(それはさておき)やや敬遠気味であったのは、もっぱら音質問題でした(TESTAMENTは雰囲気あるが、少々ぼんやり〜EMI盤のほうが明るく、乾いて、奥行きが足りない)。ワタシはことあるごとにEMI録音を悪し様に酷評し、オーディオにこだわりを持った方々から窘められること再々〜最近、そんなこと言わなくなったでしょ。ハラの中では思っているが。今回も例外じゃないですよ。

 ま、慣れでしょうか。これはこれで、アルド・チッコリーニの繊細でカルい響きやら、パリ音楽院の妖しいホルンなどが楽しめるようになりました。(イタリアのファツィオーリではない〜この時期まだ生産されていないから)もともと「伴奏者としてのクリュイタンス」というセットものであって、チッコリーニとの協奏的作品を一枚にしたものだけれど、作品の組み合わせとしてはムリムリです。(TESTAMENTのほうは+Franck 交響曲ニ短調であって、配慮有)Tchaikovskyは誰でも知っている豪放なる作品だけれど、チッコリーニ(p)/クリュイタンスというのはいかにも縁が薄そうな担当じゃないですか。先入観で聴いちゃいけないが。

 Tchaikovsky ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調は、おそらくこの時期(LP初期モノラル)からフランスでも人気No.1であって、レーベルとしては録音が必要だったんだろうと思います。もともとが大柄な作品であり、チッコリーニは豪放なるテクニックに不足するものではなく、パワーも充分。でも、やはり弱音で繊細に歌う部分に彼の個性が生きていると思います。クリュイタンスの配慮の行き届いたバックと噛み合って、美しい優雅な演奏に仕上がっております。

 打鍵を叩き付けないこと。流れの良い柔らかで暖かいタッチは、第2楽章「アンダンテ」で確認できるでしょう。(木管の夢見るような美しさも)終楽章も強面にならず、細かい音型を正確に、リリカルに表現して威圧感は存在しない。

 Franck /D'indyといえば、ロベール・カサドシュと同じ組み合わせですな。「交響的変奏曲」は、(ワン・パターンだけれど)エッチな作品だと思います。息も絶え絶えのピアノ・ソロは、挑発的な静けさ。この作品に限れば、バックの繊細はオーマンディの比ではないでしょう。やがてピアノは熱を帯びつつ変奏を展開させ、成長していくが、馥郁たる薫りを湛え、しっとりとした雰囲気はかつて出会ったことはない。

 「フランスの山人」は、民謡風の旋律が〜ソロもバックも(高音ホルン+ヴィヴラートが効果的)懐かしく歌われます。その華やかで、爽快な爆発は、壮麗なる山の風景を彷彿とさせます。こんな音楽を聴いていると、自分がBeethoven を避ける理由が納得できるような・・・謹厳実直四角四面じゃなくて、もっとエエ加減で、自在で、勝手気儘で・・・そして粋な旋律の宝庫。

 とつとつとした暖かいピアノ・ソロは、第2楽章にて時折顔を出します。絡み合うヴァイオリン・ソロ、オーボエ、ホルン(エッチな響きだ)がしっとりとした相性であります。終楽章の躍動は、慌てず、ゆったりとしたリズムが優雅で華やかでした。これでもっと鮮明な音質だったらなぁ・・・って、これはきっと嗜好の問題であって、もっと優秀なる再生装置だったら別な感想が出るのでしょう。チッコリーニの繊細かつ瑞々しいピアノ・ソロは充分に感じ取れました。

(2006年11月10日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi