● To CLASSIC ちょろ聴き
CLASSIC ちょろ聴き(31)
●Balakirev 交響曲第1番ハ長調〜スヴェトラーノフ/ソヴィエット国立響(1974年)/第2番ニ短調〜ロジェストヴェンスキー/モスクワ放響(1973年)
安くなければ、ボックス買いしなければ出会うことはまずないでしょ、的選曲。ロシア五人組として教科書でしか見掛けない、または「イスラメイ」くらいしか聴く機会のない作曲家。第1番は40分弱のオーソドックスな4楽章の作品で、平易で(ハ長調!)懐かしい「いかにも平穏なロシア風」旋律が続いて、スヴェトラーノフもいつもながら金管爽快全開!弦の朗々と歌ってメリハリもある、ストレート系わかりやすい作品・演奏でした。これなら「爆演」とは言えませんね。
第2番は旋律に哀愁が深まるし、ロジェストヴェンスキーのオーケストラ(ラジオ・テレビ大管弦楽団との標記)はもう少々ウェットで表情に陰影が感じられます。金管のアクとクセはこちらの方が上か。4楽章33分ほど。両者とも音質良好。迫力充分すぎて余りある・・・ (2004年9月6日)
●Brahms 交響曲第1番ハ短調〜ベーム/ベルリン・フィルハーモニー(1959年録音)
LP時代からお気に入りでした。る細部を忽せにせず、きっちり真面目に、入魂で演奏して、その緊張感・切迫感は、高度成長期お仕事一筋に人生を捧げてきた日本サラリーマン(団塊の世代か。その上の世代か)のストイックさに一脈通じます。ベルリン・フィルの技量になんらの疑念もあるはずなし。その生真面目さが妙に息苦しい。ひたすら「道一筋」的で、「煽り」なんて!とんでもない。ワタシは「歌」に不足すると思うし、ベルリン・フィルにしては少々色気が足りないと感じました。音録りの思想か、弦主体で管が弱い。(「音楽日誌」より抜粋。2004年9月6日)
●R.Strauss「ドン・ファン」「ティル」〜プレヴィン/ウィーン・フィル(1980年)「ツァラ」〜オーマンディ/フィラデルフィア管(1979年)
黄金の組み合わせである「プレヴィン/ウィーン・フィル」が、後のPHILIPS録音とは別物に聞こえます。なんかカラカラに乾いて弦にまったく厚みがない。管に奥行きもない。演奏ともども素朴と言えば素朴なんだけど。表現的には、飾ったところがなくて悪くないと思いますよ。R.Straussって「腕の見せどころ!」的演奏が多いし、こういう素直な旋律の歌わせ方は貴重だと思います。リキみも全然ないし。ところがね、お次のオーマンディを聴くとひっくり返ります。まず録音が全然違う。フィラデルフィア管のシルクのように輝く弦は圧倒的魅力で、オルガンだってちゃんと聞こえちゃいます。奥行きと豊かな残響が素晴らしい。オーマンディ晩年の、余裕と自信に満ち溢れた表現〜「けれんみ」がまったく存在しない。特異な表現は微塵も出現しないが、説得力に不足しない。あちこち細部は必要にして充分な歌に充ちて、美しい。オーケストラは鳴りきって圧倒的だけれど、刺激的にならない。リキみもない。文句なくオーケストラが上手い。ヴァイオリン・ソロにも泣けちゃう・・・(「音楽日誌」より抜粋。2004年9月6日)
●Mahler 交響曲第10番「アダージョ」〜セバスチャン/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管(1961年頃)/Nielsen 交響曲第5番〜ヘルビッヒ/ベルリン響(1966年頃?)
コンヴィチュニー時代のオーケストラだけど、ずいぶんと緻密で集中したアンサンブル。録音も出色で、浪漫的な旋律が洗練されて表現されます。(この指揮者、LP時代に「浄められた夜」を持っていたような記憶有。George Sebastian〜ジョルジュ・セバスチャン?ゲオルグかジョージか〜誰なんでしょう)引き続き収録されるNielsen は、冷涼たる味わいと、二台の小太鼓がまったくカッコ良い!録音も優秀。37分ほどの作品。(「音楽日誌」より抜粋。2004年9月6日)
●Beethoven 交響曲第3番「英雄」(1954年)/第5番「運命」〜ベルリン・フィル(1939年)/アーベントロート
昨年(2003年)でしたか?まとめて購入したアーベントロートのセット物(クロアチアVIRTUOSO)〜これは正直、かなり苦戦(聴くのがツラい)をしておりまして、悩みのたねのひとつでした。「英雄」・・・速めのテンポ、表情も一見端正で爆演系ではないと思うが、妙な重さ、暗さ、勢いがあって、意外と楽しめました。「運命」〜ベルリン・フィル(1939年)・・・こちらにさすがに少々音質は落ちます。が、演奏的には同様。録音状態のイメージで損をしているでしょうか。燃えるようなアッチェランドとか、茫洋たるスケールを呼ぶルバート、極端なるテンポ設定、みたいなものは見られないが、少しずつこの「暗い世界」にも馴染んで参りました。(「音楽日誌」より抜粋。2004年9月6日)
●Chopin ピアノ協奏曲第1番〜ギレリス(p)/オーマンディ/フィラデルフィア管(1964年)/第2番〜ワッツ(p)/シッパーズ/ニューヨーク・フィル(1965年)
ギレリスは明快でクール、あわてず騒がない。ひとつひとつの音、旋律をていねいにあつかって曖昧さ皆無の演奏です。これはこれで美しいピアノで、いわゆるロシア風のアクみたいなものもありません。(スケールは大きいが)オーマンディのバックはとても豪華で、とくに弦の響きが魅力的でした。
ワッツのほうはギレリスとは対照的な揺れるような情熱!演奏でした。ま、好みだな。バックもソロも甲乙付けがたいが、こちらはシッパーズのホットな充実した伴奏が楽しめます。(「音楽日誌」より抜粋。2004年9月6日)
●Bach 「音楽の捧げもの」〜パイヤール室内管メンバー(1974年録音)
これはもっとも最初期のディジタル録音であり、パイヤール盤による室内楽編成によるもの。ま、ジャリ(v)もラリュー(fl)も音が出た途端「この人」と理解できる、ヴィヴラートたっぷりで明るい音色です。Bach は表現の多様性を許容するし、厳格なる演奏には少々カタが凝るのも事実ながら、ワタシはこのゆったりとした優しい演奏には少々違和感がありました。でも、トリオ・ソナタはワタシがもっとも愛する音楽のひとつですから・・・イヤ・ホンで聴くと個々の楽器(=パート)がバラバラに聞こえてくるような感じで気に食わない印象もあったし、ワタシの慣れ・好みの問題だけれど、チェンバロ・ソロがもっと活躍してして欲しい要望も有。部屋のコンポで再聴すると、結果論として各パートが溶け合って音楽の印象が変わります。演奏的にはやや叙情系のまったりした語り口があるが、曲が進むに連れて感動が押し寄せ、47分はあっという間に過ぎゆきました。(「音楽日誌」より抜粋。2004年9月6日)
●Ravel 「ボレロ」「ラ・ヴァルス」〜バーンスタイン/フランス国立管(1975年)/Debussy 「牧神」「海」(1959年)「逝ける女王のためのパヴァーヌ」(1957年)〜オーマンディ/フィラデルフィア管
ははぁ、なるほど。ワタシ、この作品は超難曲(演奏する側もそうらしい)と思っていて、ココロから楽しい!演奏は少ないと感じます。ようはするに、いつもバーンスタイン節全開で横幅の広い、少々粘着質で粗削り、彫りが深く情熱的な表現というと言うことです。オーケストラがフランスである必要性をほとんど感じない。これはこれで個性が明快で嫌いじゃないし、ファンの方はタマらんだろうな。
オーマンディは、手慣れた、というか、やや走り気味(間が足りない)っぽいが、豪華な雰囲気もあって完成度が高い。曖昧に細部を流したような演奏じゃありません。但し、「牧神」「海」ともブーレーズに心酔仕切っているので「ま、こんなものかな」程度の感心度合いか。オーケストラは厚みがあって、とても上手い。音質だって悪くない。コンピレーション的には珍妙です。(「音楽日誌」より抜粋。2004年9月6日)
●Shostakovich 組曲「ボルト」、ジャズ組曲第2/1番、タヒチ・トロット(二人でお茶を)〜ヤブロンスキー/ロシア国立響(2001年録音)
もうこの一枚最高!苦手方面の作曲家だけれど「二人でお茶を」は、なんて小粋で、繊細な世界なんでしょ。ジャズ組曲は、ジャズというよりサーカスのジンタっぽいし、幼稚園の運動会風の音楽(木琴の成果か?)にも聞こえるが、哀愁の味わいもあって、カバレットの音楽(妖しげなギター?ソロも入る)にも思えます。映画「ドクトル・ジバゴ」のテーマってあるでしょ?あれにもよく似ている。演奏は雑にもならず、細すぎもせず、ノリも迫力もある〜たいしたアンサンブル。録音極上ですね。これほどの鮮度を感じたのも久々。(「音楽日誌」より抜粋。2004年9月6日)
●Mozart 交響曲第41番/Schubert 交響曲第8番「未完成」〜ヨッフム/ボストン響(1973年録音)
期待に違わぬ濃厚な内容でした。最初にコメントしておくと、弦がやや刺激的(但し、ディスク・マンで聴くと。室内のコンポだとそんなことはない)ながら、ボストン響の落ち着いて涼やかな響き(独墺系重さはない)が理想的に生かされ充実しております。かつて聴いたことのない内声部の美しい旋律(例えばヴィオラ)など纏綿と歌わせ、細部にアクセントやら主張をちりばめて、一見自然体、じつはこれはもの凄く個性的なワザです。(「ジュピター」終楽章繰り返しも衝撃的)
「未完成」も同様。落ち着いた味わいだけれど、聴き手をけっして飽きさせない主張と歌と味わい有。(けっこう煽ってますよ)嗚呼、ボストン響って素晴らしく優秀なオーケストラだね。(「音楽日誌」より抜粋。2004年9月6日)
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