Chopin アンダンテ・スピアナートと華麗なるポロネーズ/
「奥様、お手をどうぞ」の主題による変奏曲
(ヴァクトリア・ポストニコヴァ(p)/ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー)


YedangClassics  YCC-0144 Chopin

アンダンテ・スピアナートと華麗なるポロネーズ 変ホ長調 作品22(管弦楽伴奏版/1990年ライヴ)
Mozart 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より「奥様、お手をどうぞ」の主題による変奏曲 変ロ長調 作品2(1984年ライヴ)

ヴァクトリア・ポストニコヴァ(p)

Debussy

劇音楽「リア王」〜「ファンファーレ」「リア王の眠り」
歌劇「ペレアスとメリサンド」前奏曲(1989年ライヴ)

ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー/ソヴィエット国立文化省交響楽団

YedangClassics YCC-0144

 旧ソヴィエットには膨大なる音源が眠っていて、ここ最近ネットにて、名前のみ知っていた、時に名前さえ知らなかった演奏家の音源が入手可能となってきました。ドミトリ・バシキロフ(グルジアのピアニスト/エレーナ=バレンボイム夫人の父)とか、アレクサンドル・イヴァノヴィッチ・オルロフ(1878-1948)なんか音源ダウンロードしたまま腕組みして(きっと音質厳しいやろうなぁ)呆然としているところ・・・閑話休題(それはさておき)

 米PIPELINE原盤の旧ソヴィエット放送音源は現在BRILLIANTにて入手可能(この音源は再発されていないんじゃないか?)、21世紀入りたての頃、韓国YEDANDGCLASSICSにて豪華装幀発売!やがて投げ売りのように激安化して消えました。その時に小遣いはたいてどっさり入手したもの。拍手を素っ気なくカットしたり、コンピレーションが珍妙だったり(このCDがまさにそれ)、時にもの凄い悪質音質が紛れ込んだり・・・悩ましいシリーズでありました。今は昔。  

 これはワリと新しい音源だし、音質はリアルな会場の雰囲気を捉えております。ご夫婦の共演、といった趣旨。Chopin とDebussy、ややマニアックな選曲組合せは微妙です。ヴァクトリア・ポストニコヴァは1944年生まれだから、未だ現役でしょう。あまり聴いた(もちろん録音)ことはないけれど、バリバリ華麗なるテクニック前面!豪快なタッチ!といった先入観。Chopin はこのシリーズにも収録されていて、もしかして意外ではないレパートリーなのかも。

 「アン・スピ」はお気に入りでして、それはルービンシュタインが刷り込みであります。(←リンク先駅売海賊盤になっているけれど、ちゃんと正規盤入手済)まったりと手馴れて、ちょっと安易ですか?(誰?気の抜けたサイダーって言ったのは。今になってみれば音質問題含め、やや納得気味)管弦楽伴奏は蛇足に感じぬでもないけれど、このご夫婦の顔合わせだったらちょっと聴いてみたい・・・硬質に尖って繊細、冷たくキラキラ清潔なタッチは、甘美な旋律と中和されるのでしょう。やや辛口っぽいけれど、気に入りました。やがて華麗なるポロネーズにダンナのオーケストラ参入、美しく、控えめに支えてますよ(金管に品はない)、奥様を。ポストニコヴァはローカルなリズムを強調することなく、洗練され流麗な語り口がなかなかよろしい。スケールかなり大きい。

 気に入りました。

 「奥様、お手を」変奏曲は、もともと原曲の”愛の語らい(もしくは口説き)”テイストは途中から、元気の良い行進曲に変身していて、なんか妙じゃないっすか。冒頭、ロジェストヴェンスキーのオーケストラはかなりていねいな味付け、しっとり開始、ピアノの序奏は”愛の語らい(もしくは口説き)”テイストを予感させるもの。細かい装飾音もぴたり!決まって素晴らしいテクニックを以ってオーケストラと語らい、朗々劇的に絡み合います。相変わらずの硬質なタッチ、スケールは上々の出足。

 問題は馴染みの主題登場以降、スタッカートして楽しく弾むよう〜って、あそこは口説かれ揺れ動き逡巡する女性の心情なんですって。こんな野の道を軽やかにステップしちゃいけん、変奏曲に入ったらジョギングしてますもんね、ほとんど。テクニックは壮絶でして、この作品ってこんなんでしたっけ。伴奏も美しく堂々と寄り添って、やがて快速に走り出し、詠嘆し、ついには堂々たる行進曲へ、って、そんな作品なのでしょう。表情は刻々と変化し、ライブとは思えぬ錚々たる完成度。お見事です。大きな、大きな演奏也。ヤワなChopin ちゃいまっせ。

 後半のDebussyも、通常演奏には出現しない作品でしょう。「ファンファーレ」はオーケストラの金管技量顔見世、「リア王の眠り」もあっという間に終わります。歌劇「ペレアスとメリサンド」前奏曲というのがわからない。この歌劇って、すぐゴローの歌(br)が始まってメリサンド(s)も登場するじゃないの。ただ歌い手を抜いただけなのか、ロジェストヴェンスキーが再編成しているのか?わからない、というか、しているんでしょう。約21分弱、幻想的な風情に木管がよく歌って、色彩豊かにたっぷり聴かせます。このオーケストラは優秀ですね。但し、こういった作品は、歌が入らぬといまいち物足りぬ印象が拭えません。美しいけれど。

(2013年6月1日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi