Bruckner 交響曲第7番ホ長調
(エリアフ・インバル/フランクフルト放送交響楽団)


TELDEC WPCS-6047 Bruckner

交響曲第7番 変ホ長調(ノヴァーク版)

エリアフ・インバル/フランクフルト放送交響楽団

TELDEC WPCS-6047 1985年録音

この人のBrucknerは一時ほど話題になりませんね。ずいぶんとさっくりとして、素っ気ないザッハリッヒな演奏と感じました。こんな演奏だったかな?と自宅オーディオで再確認すると、「さっくりとして、素っ気ない」ということでもなくて、但し、やはり纏綿としっとり系ではない。茫洋系ではなく都会的クールでスリム、明快優秀なアンサンブルがたしかに個性的であります。TELDECとDENONの録音の思想相違も興味深くて、こちらはかなり会場全体の残響を捉えた、雰囲気トータルのサウンドが優秀でした。(「音楽日誌」2006年8月)
 ・・・もう10年前のコメント出現。その時点既に「一時ほど話題になりません」と書いて、10年を経てその状況は変わりません。初出時には珍しい版の問題も含め大絶賛!連続だったんだけどなぁ。ここ最近Bruckner自体ほとんど聴いていなくて、かつて第7番は大好きでした。先日亡くなった某大物評論家に影響されて、若いころはシューリヒトの音質劣悪音源を後生大事に聴いてましたよ。久々に聴いた印象は「都会的クールでスリム、明快優秀なアンサンブル」に間違いなくて、10年前と変わらず。テンポはどこも中庸といったところでしょう。なんせ最近、チェリビダッケによる微速前進ばかり聴いてましたので。版のことには疎くて、第2楽章「Adagio」のクライマックスに打楽器が入るか入らないか、そのくらいの知識しかありません。インバルは打楽器有、なぜかトライアングルは入らない。

 音質は良好。30年を経、現役でしょう。全体に寒色系、クールな音録りになっております。

 第1楽章「Allegro Moderato」。チェロが息の長い優雅な穏健旋律(第1主題)を歌って開始。金管の炸裂は少なくて、第2主題も木管がユーモラスにリズムを刻んて、やがて緊張感を高めます。フランクフルト放送交響楽団(現 hr-Sinfonieorchester)って、Mahlerではあまり気にしなかったけれど、Brucknerだったらもっと包容力とか、旋律に甘美な歌が不足?ちょいと違和感サウンドかな、と思います。アンサンブルは整って、かっちりしているけれど、やや窮屈な感じ。

 第2楽章「Adagio」“Sehr feierlich und sehr langsam”(非常に荘厳に、そして非常にゆっくりと)。ここがこの作品の白眉か。寄せては返すため息の波、みたいな悠然たる風情は細部描き込みていねいに、テンポは揺れずクールな風情を崩しません。クライマックスへの誘導、金管の炸裂も文句なし。個人的には打楽器なしを好むけれど、賑々しい爆発も悪くないでしょう。怜悧に整ったアンサンブルは、この美しい旋律満載な楽章にバランスして高い完成度。

 第3楽章「Scherzo」“Sehr Schnell”(非常に速く)。本来Brucknerのキモは「スケルツォ」なんでしょう。ごりごりと粗野なリズムを刻んで、思い切り演って欲しいところ。表情の変化、剛と柔の対比もお見事、しかし、いかに金管が爆発していてもここには”粗野”が足りない。破綻なくクール、四角四面な印象から逃れられません。第4楽章「Finale」“Bewegt, doch nicht schnell”(運動的に、あまり速くなく)はワリと”尻切れトンボ”っぽい感じさせる演奏もあって、インバルの構成感、バランスはみごとなものでしょう。しかし前楽章「Scherzo」よりいっそう冷静な堅苦しさ、醒めた印象がつきまとました。金管鳴り響いて、アンサンブルの縦線の相方もみごと、旋律のニュアンス、各パートのバランスも完璧、それでも聴き手をアツくするような説得力に弱いかも。

(2016年9月25日)

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written by wabisuke hayashi