Bruckner 交響曲第9番ニ短調(インバル/フランクフルト放響)


TELDEC   WPCS-6049
Bruckner

交響曲第9番ニ短調(原典版)
フィナーレ(サマレ/マッツカによる)

インバル/フランクフルト放送交響楽団

TELDEC   WPCS-6049 1982年録音 420円(中古)で購入

 数ヶ月前、インバルの第8番を中古で手に入れて、この度、第5番を除くすべての録音を手に入れることが出来ました。初出当時たいへん話題になった全集で、演奏云々より珍しい使用版に、やや話題が集中していたような記憶もあります。最近の(数度目の、いや常に?)復古ブーム、ティントナー、スクロヴァチェフスキ全集の登場、著名来日演奏家の音源復活で、やや話題から遠ざかった感もあるでしょうか。

 結論的に、この演奏はたいへん興味深く、一方で支持者を失うかもしれない理由も納得しましたね。ワタシは、たいへん気に入りました。その前に・・・・・

 フランクフルト放響はドイツの名門だけれど、インバル時代は1974〜(実質)1990年迄、その後、キタエンコ(〜1996)、現在ウルフがシェフとのこと。あくまで他人の評価だけれど「音が変わった」とのこと。つまり、ここでも存分に感じ取れる、明快、引き締まった、やや冷たいくらいの怜悧な響きは失われてしまった、とのことです。

 「Mahler とBrucknerは両立しない」〜と言われることが多いでしょ。例えばクナッパーツブッシュ、フルトヴェングラー、ベーム、バレンボイムはほぼBrucknerのみ。逆に、バーンスタイン、アバド、バルビローリ、小澤はMahler 中心、両方こなすのはクレンペラー、ジュリーニくらい?(ホーレンシュタインがいたか。若杉さんも)ティントナー、スクロヴァチェフスキもMahler は想像しにくい。(実演ではやっているでしょうが)カラヤンは意味がやや異なります。ショルティもね。

 これは、そもそもの音楽のあり方が違うからでしょうか。同じ指揮者、オケで両方全集を完成したのはインバルとハイティンク(+ショルティ)のみと思います。演奏会場を揺るがすトータルの「和音」「響き」を楽しむべきBruckner(=オルガンと同じですね)、複雑で美しい旋律と歌が絡み合うMahler の違い。リズムも前者はシンプル、後者は揺れ動きます。閑話休題。

 これほどに、こだわりのない、明快なBrucknerってほかにあるでしょうか。「こだわりのない」というのは間違いで「こだわりかたの方向が違う」といったほうが正しいのかな?第9番の冒頭、例の如しのBruckner開始〜原始霧なんて?〜弦の細かいきざみから、鮮烈なるホルンが夜明けを伝えるでしょ。

 霧は出ていないんですよ。快晴。ピーカン。テンポも速めかな、ずいぶんとさっぱり日が昇る。リズムのキレが爽快。引きずったり、思わせぶりな重量感もありません。当時、フランクフルト放響のアンサンブルは非常に緻密で(1990年来日ライヴ・エア・チェックでも確認)、やや神経質すぎるくらいの異形のBruckner(一般にラフで骨太が喜ばれる、はず)でしょうか。

 そりゃ録音は新しくて鮮明な方が望ましいが、意外と太古戦前録音でも雰囲気あるやつ、あるでしょ?全体の響きがかなりダンゴ状態でも、ああ、それがBrucknerか、なんて思ったりする。この第9番はね、かなり細部の(個々の、ひとつひとつの楽器・パートの)美しい旋律が際だちます。彼の第8番を聴いたときに「雑?」(アンサンブルのことではない)といった印象があったが、ここはかなり緻密です。

 やや分析的で、知的な演奏でしょうか。ワタシは涼やかで冷静な表現が気に入りました。「法華の太鼓」と比喩されるリズムの激しいスケルツォも、キレがあってひんやりとした感触が明快そのもの。終楽章の美しさは、例えばワタシが(別な意味で)大好きなカイルベルト盤とは大きく異なります。あちらは、もっと自然体で素朴さが支配している。

 人工的で、良く磨き上げられた各パートが鮮明に絡み合います。明らかに異形なる演奏。これはMahler よりの演奏であって、現代社会の懊悩を表現しているのでしょう。神経質なるBrucknerなどっ!と敬遠せずに、この磨き上げられた世界を楽しんでください。ワタシは精緻なるアンサンブルを堪能いたしました。

 「フィナーレ」は評価が難しい。良くできていると思いますよ。勇壮なる旋律でね。でも「アダージョ」で消えゆくように終わるパターンで慣れているじゃない。なんやら、一度静かに安らかに天国へ上ったはずなのに、また、戻ってきて先頭切って戦っているような、そんな違和感が拭えません。ま、別な曲として楽しみましょ。(2002年11月26日)


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written by wabisuke hayashi