Brahms ピアノ協奏曲第1番二短調
(アルトゥール・ルービンシュタイン(p)/ズービン・メータ/イスラエル・フィル1976年)


LONDON 223E 1152 いただきもの Brahms

ピアノ協奏曲第1番二短調 作品15

アルトゥール・ルービンシュタイン(p)/ズービン・メータ/イスラエル・フィルハーモニー(1976年)

LONDON 223E 1152 いただきもの

 ルービンシュタインのBrahms 9枚組届きました。既存ダブり所有分を事前にオークション処分して万全の入手。そこに収録されるピアノ協奏曲第1番ニ短調は1954年のフリッツ・ライナー盤〜それはそれで久々の再聴を楽しみしているが、最晩年御年89歳の録音を思い出しました。

 ネットで情報検索すると”メータ盤のような老醜をさらすような堕演”との酷評があって、ふ〜ん・・ ・てなところです。ま、一理も二理もあって89歳の爺さんでっせ、しかも超難曲なこの作品、メータ入魂の序奏が終わってルービンシュタイン登場、いきなりぐっとテンポが落ちます。タッチのキレが弱い、リズムのノリがよろしくない。音に芯がない・・・

 でもね、先入観で音楽聴いてもよろしいでしょ?ズービン・メータは大先輩の様子を伺いつつ、慎重に伴奏を合わせていきます。だから、流れとか勢いとかほとんど台無し。時々、音楽が行方不明に、この作品なんだっけ?状態に陥ります。そうとうヤバい。ご老人が昔日の思い出を懐かしげに、脈絡なく、静かに語っている風情もあります。

 ワタシは”Brahms の大型作品”を少々苦手としていて、とくにこの作品には強靱なる威圧感をモロに感じちゃって、少々敬遠ぎみなんです。ま、クリフォード・カーゾン(p)/ジョージ・セル辺りの緊張感は並じゃないっすよ、たしかに。若い頃は耐えられたが、ここ最近華麗なる加齢を重ねて体力精神力モロ落ち。こんなゆるゆるな爺さん演奏も悪くないな、いや、これだったら、ココロ安らかに作品旋律を堪能可能じゃないか、と感じます。

 したがって、第2楽章「アダージョ」が絶品!”ご老人が昔日の思い出を懐かしげに、脈絡なく、静かに語っている風情”が、たしかにここに存在します。淡々粛々とつとつゆったりとして、どこにも力みはない。味わい深いものですよ。終楽章「ロンド/アレグロ・ノン・トロッポ」はそれこそ重量級機関車が疾走するところだけれど、いくらマスターズ全国優勝の技量を以ても89歳でっせ。しかも、Bach とかMozart じゃない、Brahms でも内省的なソロ作品じゃなく、バリバリ腕が鳴るような技巧と迫力を要求される作品でしょ?やはり客観的には”老醜”と酷評されても仕方がないかも知れぬが、”堕演”ではない。

 若々しい技量を誇って表現するのが正しいのでしょう。これはもちろん標準になりえません。でも、栄光の晩年を迎えた巨匠が、懸命に作品に向き合う姿勢は胸を打つものです。バリバリ先入観で聴いております。贔屓の引き倒しかも。でも、音楽って嗜好品ですから。音質は余りよろしくないように聴きました。

(2010年10月24日)

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written by wabisuke hayashi