Brahms ホルン・トリオ/ピアノ五重奏曲(ナッシュ・アンサンブル)


BRILLIANT 99649
Brahms

ホルン・トリオ 変ホ長調 作品40
ピアノ五重奏曲ヘ短調 作品34

ナッシュ・アンサンブル; ロイド(hr)クレイフォード(v)ブラウン(p)/レイトン(v)チェイス(va)カンペン(vc)

BRILLIANT 99649 1991年録音  12枚組2,830円にて購入したウチの一枚

 Brahms のホルン・トリオは持っていたかなぁ、と、このCDを聴きながら棚を探しました。するとザイフェルト(ベルリン・フィルの名手)/ドロルツ/エッシェンバッハのDG盤を発見。でも、曲にまったく記憶がない。同じCDに収録されているライスター等によるクラリネット・トリオには覚えがあるのに、どうしたことでしょう。閑話休題(それはさておき)、この曲、素晴らしい名曲なんです。なんかとても得した気持ち。

 第1楽章。シンプルに上下する主旋律がなんと懐かしくも、もの哀しい。これは第4交響曲を始めとして、彼特有のマジックでしょう。若い団体なのに、ずいぶんとロマンティックで繊細、細かい味付けの節回しが極限に美しい。室内楽なのに、ホルンの残響が遠くを見つめるような距離感を感じました。

 これもBrahms お馴染み、元気の良い第2楽章スケルツォ。大管弦楽では少々うるさい感じもないではないが、室内楽なら気持ちヨロシ。浪漫派のBBではホルンとチェロがキモだと思うが、(ここではチェロがないので)ホルンが存分活躍するところがポイントでしょう。工事現場のドリルのようなピアノの低音に乗って、ホルンは気持ちよく鳴ります。中間部のやすらぎも欠かせない。

 第3楽章アダージョは、密やかな悲劇の物語。この楽章は録音が新しく鮮明で、ほんとうに映えます。小さな音まで明快。終楽章は、浮き立つような祭りの踊りでしょう。こうしてみるとイアン・ブラウンのピアノがアンサンブルの柱なんですね。珍しい編成の曲だけれど、ホルンの朗々とした歌声が効果的な、なかなか聴き応えのある名曲でした。演奏には艶がある。


 ピアノ五重奏曲は、例のロシア民謡風の切ない旋律が有名です。ウィーン・コンツェルトハウス/スコダによる、少々懐かしい演奏で先日聴いたばかりでした。ところが、この若い団体の演奏もほのかに揺れるテンポが切なくて、往年の名団体に負けない味わい有。

 第1楽章の最終版の囁くような、ひっそりとした表現。劇的なラストとの対比。第2楽章における、淡々としたピアノの味わい。・・・・・いつものことながら、Brahms の室内楽やピアノ曲を聴くと、気分的に黄昏(たそがれ)ました。前途洋々の若者には似合わない曲かも。ワタシも若い頃は、ちっとも良い曲と感じませんでした。いまならじ〜んと胸にシミます。

 ところで、この12枚組セットのウチの一部に、ちゃんと再生できないものが含まれている?という話し有。インターネットの書き込みで目撃。ピアノ・トリオ?〜2枚分聴いてみましたが、ワタシのはまったくOK。(・・・というか、カリクシュタイン(p)/ラレード(v)/ロビンソン(vc)の演奏に、ぐっと引き込まれてしまって・・・)全部のCDを聴いていないので、油断できません。でもねぇ、この曲目、価格、演奏、録音水準はホントに魅力。おじさんなら聴いてみて。(女性でもかまわないが)


ホルン・トリオ 変ホ長調 作品40

ザイフェルト(hr)ドロルツ(v)エッシェンバッハ(p)

DG  437 131-2 1968年録音 購入価格失念〜きっと2枚組3,000円弱くらい。

 これを聴いてみて、なぜナッシュ・アンサンブルの演奏から、記憶が戻らなかったか理解できた思い。

 まず、録音の鮮度がさすがに少々落ちること。内省的で地味な演奏であること、テンポも速め、ということで味わいがずいぶんと異なるんです。ホルンの豪快さ、素朴さはなんと言えない味わい。終楽章の躍動感も素晴らしい。ドロルツのヴァイオリンには「泣き」があり、エッシェンバッハのピアノはリリカル。(2001年6月23日)


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written by wabisuke hayashi