Brahms ピアノ五重奏曲ほか(コンツェルトハウスSQ/スコダ)


Brahms

ピアノ五重奏曲ヘ短調 作品34
クラリネット五重奏曲ロ短調 作品115(第3楽章抜け)

ウィーン・コンツェルトハウス弦楽四重奏団/スコダ(p)/フックス(cl)

NHKライブラリーのFM放送よりDATへ〜MD化  おそらく1960/1962年来日時の録音

 ワタシの廉価盤好きを知って「ブラームスの室内楽全集が安いですよ。ワタシ買いました」などというメールをいただきます。ブラームスの室内楽ねぇ・・・いろいろと持ってるんですよ。好きなんだけど、ちゃんと聴いてなくて、新しいCDはそうそう買えません、なんていう返事を出したのに〜でも、我慢できず結局、買ってしまうバカなワタシ。

 通販で届いて梱包を外し、つくづく眺めているときの幸せ。でも、次の行動がヤバイ。同一曲の棚卸しをやってしまうんです。いや、出てくること。あ、これ、良い演奏なんだよね。ん?こんなのもあったの、と聴き出したのがこの演奏。オールド・ファンには懐かしいかも知れません。一時CDも出ていました。

 ブラームスは交響曲よりピアノ曲、それより室内楽がもっと好きなんです。聴けば必ず精神的に黄昏てしまう。若い頃は陰気で小難しい音楽、と思っていました。やがて、少しずつ人生の先行きが見えてくると、こんな地味な曲がジンワリと心を捉えるようになる。切なくも哀しい旋律。

 音の状態は自然で、やや旧さを感じさせるのが逆に味わいがあります。鑑賞にはまったく差し支えなし。ワタシはここ最近の録音をほとんど聴いていないので、比べようもないのですが、懐かしく、やさしく、ゆったりとして気持ちよい演奏でした。

 ピアノ五重奏曲は、ロシア民謡のようなもの悲しい旋律で始まります。ピアノは訥々として暖かいし、弦の甘い音色が魅了します。どこもすすり泣くようであり、静かに嘆いているようでもある。アンサンブルの密度は濃い。濃密すぎて、時代を感じさせるかも知れません。

 第2楽章はやすらぎが溢れました。とぎれとぎれのため息のようなピアノは、やがて弦の歌に包まれて美しい。こんなにも切々と歌ってくれるのに、なぜか感動とともに寂寥感が漂う不思議。第3楽章スケルツォは、やや不気味な行進曲から、喜び溢れる高揚を迎えます。リズム感はやや緩めかも知れませんが、響きの充実ぶりには文句なし。

 クラリネット五重奏曲のほうは全曲ではないとはいえ、フックスのソロが貴重でしょう。詳細はわかりませんが、ウラッハ〜アンリ・ボスコフスキー時代辺りのウィーン・フィルのメンバーでしょうか。透明でふくよか、ヴィヴラートもほとんどない真っ直ぐな音色で魅了します。

 こういった「いかにも泣ける」旋律には、淡々としたクラリネットが似合うんです。弦はこれ以上ない、というくらい練り上げられて極上。自然な呼吸で魅了します。若い頃はなんとも感じなかったのに、こどもが産まれ、やがて大きくなって、人生の苦みが感じられるようになると、この曲の哀しみが見えてくるんです。ブラームス晩年の諦観がここにある。

 第2楽章の囁くような静けさが白眉。目眩がするような陶酔感。クラリネットはもちろんだけれど、アントン・カンパーの甘く遣る瀬ない、すすり泣くヴァイオリンが最高です。たしかMozart の五重奏曲も録音していたはずだから、一度聴きたいものです。(2001年2月16日)


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written by wabisuke hayashi