Brahms 交響曲第4番ホ短調 作品98
(ズービン・メータ/ニューヨーク・フィル)


これはLPの画像 Brahms

交響曲第4番ホ短調 作品98

ズービン・メータ/ニューヨーク・フィルハーモニック

1970年代後半の録音 CBS 76949  LPよりいただきもの音源

 行きすぎたマニア道も正しい音楽聴取姿勢の障りでしょう、ということで、最近Brahms の交響曲を聴く機会が増えました。きっかけはブルーノ・ワルターのステレオ録音がパブリック・ドメインになったことかな?このズービン・メータの音源はおそらくCD化されていない、忘れられた存在かも。一連のメータ/ニューヨーク・フィル時代(1978-1991)録音はほとんどそんな感じです。前任ロサンゼルス・フィル時代(1962-1978)は凄い人気でして、現在も数多くCD入手可能です。ニューヨーク・フィルとのBrahms は交響曲全集になった記憶もあるし、ピアノ協奏曲は2曲ともボレンボイムの再録音があったはず・・・ネットで検索すると、SONYはイスラエル・フィルとの再録音を優先して、ニューヨーク・フィル音源の情報にはほとんど言及していない。(自らの棚中にもほぼ残っていない→処分済)

 聴いたのは(おそらく)LPからの板起こし音源也。なかなかエエ感じの音質です。演奏も世間から無視されるほど出来の悪いものだろうか・・・独墺好みの日本だから、不当に軽視されているんじゃないか。んなことないか。

 哀切の吐息から始まる第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ 」。やや明るく、骨太豊かなサウンドはいつものまま、悠々と歌ってスケール大きく、緻密な仕上げであります。当時メータ40歳代中盤、若い頃のヴィヴィッドな勢いから成熟し、落ち着いた味わいに移行すべき時期だったんでしょうか。ややオーソドックスに過ぎ、”サウンドが泣く”状態に非ず。ゾクゾクするような深遠なる響きに非ず。でも、悪くない完成度だと思うんだけどなぁ。

 第2楽章「アンダンテ・モデラート」のキモは冒頭ホルン〜沈静した木管〜華やかな弦でしょう。ホルンはフィリップ・マイヤー就任(1980年〜)以前?充分豪快、いずれバーンスタイン時代の記憶とはずいぶんと異なって、微細なるニュアンスに充ち(とくに弦)、ていねいな仕上げであります。ここもオーソドックスだなぁ、適度なメリハリを以て恰幅よい悠々演奏也。激昂して涙!みたいなものとは、ちょっと違います。

 第3楽章「アレグロ・ジョコーソ 」は華々しいスケルツォ楽章。ここもバランス感覚にて、もの凄い爆発に非ず、必要にして充分なる迫力でしょう。第4楽章「アレグロ・エネルジーコ・エ・パッショナート」は「シャコンヌ」ですよね。Bach を連想すれば、深遠なる劇的主題が次々と変奏され、ついにクライマックスを形成する・・・ここでも語り口の上手い、間の取り方も充分、各変奏曲の性格を描き分けて抜群の構成感。

 ま、ド・シロウトの聴き方なんだけど、Bruckner、Brahms 辺りはホルンとチェロがキモ、全体サウンド(会場の響き含む)を聴くべきと考えております。上手いが、オーケストラのサウンドがややツマらない?耳目を驚かすような、セクシー個性的なサウンドじゃないし、若々しいヴィヴィッドな躍動でもない、よくできたフツウに立派な演奏と言うことか。勝手な感想で申し訳ない。

(2012年6月17日)


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written by wabisuke hayashi