Brahms 交響曲第1番ハ短調/ハイドンの主題による変奏曲
(ギュンター・ヘルビッヒ/ベルリン交響楽団)


この写真はKICC9424 Brahms

交響曲第1番ハ短調
ハイドンの主題による変奏曲

ギュンター・ヘルビッヒ/ベルリン交響楽団

CCC 01172CCC 1978年録音 (写真はKICC9424)

 かなり以前に交響曲第2番二長調/第3番イ長調にコメントを残して、久々に拝聴。ド・シロウトが安易に連想する独逸の音を感じさせて、悠々とジミな歌にすっかり感心いたしました。じつはGunther Herbig(1931-捷克出身独逸)によるBrahms交響曲全4曲はCDを揃えて、世間では誰も自慢していないでしょう。現コンツェルトハウス管弦楽団も、ザンデルリンクのが有名でも、こちらは話題になっておりません。第1番も聴いてみようと思い立ちました。以前の「音楽日誌」コメントは以下の通り

まことにジミ臭い、中庸オーソドックスな演奏を時々愉しんでおりました。数カ月前の記憶では、ジミさにも限度がある、鳴らんオーケストラやなぁ、薄い響きに閉口していたはず。昨夜、今朝と繰り返し聴いて、最近の機能的なアンサンブルとは異なる質実木目の響き、スタイリッシュなカッコ良さとは無縁なサウンドに耳馴染みつつあります。ほとんど目立たぬまるで木管のように響く金管、深い味わいを湛える木管、艶やかさとは無縁な弦、大仰に揺れぬ節回し・・・これが理想と思えぬけど、立派なBrahmsであります。「ハイ・バリ」はいままで聴いたなかでは最高、好みの作品ではないけれど。(2016年頃のコメント)

自分が所有しているCDはCCC 01172CCC(写真はネットより見栄を張って入手)これが曇ってあまりよろしい音に非ず。しかし上記印象と寸分違わない。 Gunther Herbig(1931-)も高齢だから、もう実質引退ですか?ド・シロウトがイメージするところの生真面目な独逸でっせ、この地味臭い音。そんな印象が続く鬱蒼とスケール大きな世界、金管は前面に出ないけれど、やがて終楽章「Adagio - Piu andante - Allegro non troppo, ma con brio - Piu allegro」に於けるホルンのコラールは痺れるような音色(ややヴィヴラート有)+呼応する木管も同様。弦の第1主題も雄弁、クライマックスを終楽章に持ってくるワザなのですね。音質云々もここ迄たどり着けば耳慣れるもの。(2018年のコメント)

 さて久々の拝聴や如何。ものものしい第1楽章「Un poco sostenuto - Allegro」は提示部繰り返しなし(残念)。音質に文句付けるほどに非ず、”生真面目な独逸でっせ、この地味臭い音”に間違いはないけれど、響きが薄いとか技量的にも問題を感じません。金管が突出しないマイルドな響き、弦もジミ、ティンパニやら低音も強調せず、落ち着いた風情に木管が味わい深いもの。徒にスケールを強調して煽ることもない、テンポの揺れも自然な”渋い”演奏でしょう。(14:15)第2楽章「Andante sostenuto」名残惜しい静謐さを湛える緩徐楽章、演奏も然り、しっとり落ち着いたもの。オーボエのヴィヴラートが痺れるほど美しくてもジミ、木管に絡む弦がデリケートに、朗々と歌ってもやはり艶やかではない。オーケストラの厚みは充分でっせ。ヴァイオリン・ソロとホルンがユニゾンで、そして装飾的に絡むところが白眉、ホルンは名手、ヴァイオリンは控えめ。(9:26)

 第3楽章 「Un poco allegretto e grazioso」ここはスケルツォじゃないのですね。木管群の絡みが優雅そのもの、このオーケストラの木管は魅惑の”ジミ”さ加減。やがてやがて拍子が変わって音量増加、途中クライマックスがやってきて、金管がエエ感じに厚みを加えても華々しさを感じせぬサウンド。やがて弦も優雅に歌って(graziosoだから)ものものしい第1楽章終楽章のイメージが先行する作品だけど、なんかほっとする「間奏曲」は名残惜しくテンポを落として終楽章へ。(4:58)

 第4楽章「Adagio - Piu andante - Allegro non troppo, ma con brio - Piu allegro」。風雲急を告げる不安な出足、不気味なピチカートも加わって・・・やがて痺れるようなホルン・ソロ(クララ・シューマンへの愛なんだそう)〜フルートへ旋律は引き継がれて、この音色がジミ、これが独逸なんやな(ド・シロウト勝手な先入観)やがて満を持して弦が「歓喜の歌」を歩みだして(速めのテンポ)それは木管が引き取って、ま、四角四面なシンプル旋律ですよ。これを変奏させ、テンポも上げて熱狂へと導くBrahmsのワザ、たっぷり見せていただきました。弦の響きは相変わらず滋味深く、金管も低音も突出しないバランスは録音に非ず、おそらくそんな表現でありオーケストラの個性なのでしょう。ラスト「マイスタージンガー」によう似た場面にティンパニの付加はありません。威圧感の少ない、落ち着いたBrahms。(17:26)

 「ハイドン・ヴァリエーション」の主題は、Haydn ディヴェルティメント第1番 変ロ長調 第2楽章コラール「聖アントニー」より。原曲はステキな管楽アンサンブル、そのまた原曲がきっとあるのでしょう。シンプルな主題をつぎつぎ立派に変容させるワザがBrahmsでっせ。この作品を面白おかしく聴かせるのは至難のワザでしょう。かつての自分は”いままで聴いたなかでは最高”と。そんな力説するほどの個性かな?落ち着いてメリハリある、力強い風情では・・・やがて無理なく怒涛のクライマックスに導かれて感銘がやってきました。

(2019年7月20日)

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written by wabisuke hayashi