Brahms 交響曲第2番二長調/第3番イ長調
(ギュンター・ヘルビッヒ/ベルリン交響楽団)
Brahms
交響曲第2番二長調
交響曲第3番イ長調
ギュンター・ヘルビッヒ/ベルリン交響楽団
CCC 0001122CCC 1977〜79年録音 4枚組1,000円で購入したウチの一枚
相変わらず古今東西名曲中の名曲を少々苦手とする罰当たりなワタシではあるけれど、この第2番ニ長調交響曲は大好きですね。(BBSで募集してみたら皆様にもけっこう人気が高い)こちら「○×を探して幾千里」「なんぼでもカネは出しまっせ!」みたいな音源蒐集癖はなくて、安いCDに出会えば購入する、演奏家・作品の好き嫌いを越え虚心に聴く・・・ことを旨として、このCD購入後2年掛かって第1/4番にも(偶然)出会いました。いずれ数百円の世界。
で、久々聴いてみたけど、ジミで静謐で、自然体な表現に痺れましたね。この録音、世の中では話題になっていないけどどんな評価なんだろう〜参考のためにネット検索掛けてみました・・・ 「『安全運転』に終始してしまっているようで」「『こじんまりとまとめ上げた』というイメージしか残っていない」「重々しさが無いことが救い」「現代の演奏の特徴とも言うべき,高音弦のきんきんした響きが目立つ」「弦楽器が目立ちすぎている」「ティンパニーの歯切れの良いアクセントが効いていると,リズミカルで生き生きした感じになるんですが,それがまったく無いので,ジジくささしか感じません」 〜いや、もう散々な評価が出来ましたね。ひとの好みは様々だなぁ、と感慨深いもの。
音楽の感じ方、好みは多様性があってあたりまえ。それで良いんです。人様のご意見は「ははぁ、この作品にはこんな聴き方のポイントがあるんだな」とお勉強になるが、自分の嗜好を左右されることはない・・・「高音弦のきんきんした響きが目立つ」〜我が家のヘロ・デーディオの高音が伸びないだけの可能性もあるけれど、ここ最近一般普及型コンポはPOP音楽向けの「ドンシャリ」が多いから、その偏見じゃないでしょうか。これは事実じゃないでしょ、と思います。
たしかに金管がほとんど聞こえない、弦と木管主体というのは当たっているんです。その木管と弦のジミさ、深さ、渋さがタマラない。器用で、技術的にうんと切れる!というのではないが。ベルリン・フィルのように流麗ではないし、例えばドイツ・カンマーフィルのようなパツンパツンにテンション高く・鋭く絞り上げたアンサンブルとも縁が薄い方面。ようはするにBrahms になにを求めるか、ということですよ。これは2年前のコメント↓通り。
「云々の演奏と比べて」というのは禁じ手だけれど、最高の演奏との世評も高いモントゥー/ロンドン響(1962年)を確認しました。じつは「?」といった印象があったんです。いえいえ「虚飾なく、淡々とリキまず自然体」演奏のお手本故、「国内盤UCPP-9479の音質問題かな?」と数日間悩んでおりました。(同じの持ってますけど音質に問題ありませんよ、と数人の方からご教授有。ありがとうございます)〜音楽聴取百編、意自ずから通ず!わかった。(音質はモントゥー盤のほうが上でしょう)
優しく、細かいニュアンスと歌に充ち、バランスがとてもよろしい。ヴィオラがここまで良く聞こえるのは珍しいし、金管も存在を主張しつつ出しゃばっていない。振り返ってベルビッヒ盤は、もっと田舎風というか、無骨というか器用じゃないというか、やや洗練されないんですね。自分の嗜好ではそれを求めていたようで、(モントゥー盤は)性格も素直だし容姿もスタイルもいかにも!風女優を彷彿とさせて(例が適切じゃないけど)もっと、悪役憎まれ役とか汚れ役も経験しないと、という不満が少々・・・
Brahms は美し過ぎちゃいけない、ということでしょうか。モントゥー/ロンドン響の弦は切々と歌って抑制も有、ホルンの響きは素直すぎて面白くない・・・ベルリン響への好みが前提にある(ロンドン響も好きです)ということです。ちょいとザラリとした苦みの隠し味が忘れられない。これは純粋な好みの世界です。あえて言わせていただければ、ホルンの深みはこちらが上でしょう。ヘルビッヒは硬派で、雄弁ではないが秘めたる情熱は時に迸り、音が安易に出てしまう瞬間など存在しない。 (2004年11月21日)
ヘルビッヒは1931年生まれと言うから、もう70歳越えましたね。日本にも良く来ているようだけれど、1984年に西側に出てダラス響、その後トロント響の指揮者となって、現在はフリーなのかな?(ザールブリュッケン放響のシェフとのこと)レコード・CDでは昔から見かけていたけれど、何故か聴く機会が滅多になくて、Nielsen交響曲第5番(0001282CCC)くらいしか手持ちもない。(これは素晴らしい演奏)
で、この度少々のダブリ買いも厭わず(だって4枚1,000円でしょ)購入したのも、ヘルビッヒを確認したかったから〜と、CD購入の言い訳はなんとでも付くもんです。ま、正直このBrahms は、ワタシの先入観・凝り固まった石頭を存分に満足させてくれる「地味渋系」でしたね。最高。この人、なぜこんなに評価が低いのか?
Brahms の交響曲はやや苦手で、あんまり聴かないんですよ。ベルリン響(旧東)といえばザンデルリンクでしょ?このオーケストラ、ベルリンの一流オーケストラの中でもやや評価が低いようだけれど、艶消しの良い音で鳴っておりますね。現在もこれが維持されているのでしょうか。ヘルビッヒ〜フロール〜シェーンヴァント、そしてインバルが現在のシェフとのこと。
ニ長調交響曲って、彼の交響曲作品の中では機嫌が良くて、やすらかな雰囲気があるじゃないですか。なるべく虚飾なく、淡々とリキまず自然体でやっていただきたい。でも、それだけじゃココロ震わす演奏になるかどうか微妙でして、やっぱりオーケストラの響きとか、指揮者の隠しワザが必要なんでしょう。
ヴァイオリンの刺激的な高音とか、金属的な金管(当たり前か?)とは縁がない。中低音主体の静謐な演奏で、声高に叫ぶことはないし、重低音の威圧感も皆無。じゃあバルビローリみたいな「とことん歌」方向(これはこれで絶品だけれど)〜それとも親戚関係はないんです。ま、例えば「痺れるような深いフルート」とか「信じられん奥行きあるホルン」「目眩のするようなオーボエ」とか、そういうのもあまり目立たない。
表現としては楷書系で、耳目を驚かすような個性は前面に出さないが、じつは細部に隠し味がジワジワ効いていて、噛めば噛むほど味が出るんです。大げさな揺れを伴わないテンポは、どこをとっても適正そのもの。「保守的でツマらん演奏?」〜とんでもございません。Brahms のシンプルな動機が発展して行く課程を、これほど美しく明快に教授していただいた経験は滅多にございません。
第2番ニ長調交響曲は田園のやすらぎが全編に感じられました。終楽章の爆発も控え目な歓びに溢れて、シミジミと地味で美しい。第3番イ長調交響曲の白眉である第3楽章「ポコ・アレグレット」〜秘めたる情熱が胸の奥に隠れているようで、これほどに説得力のある表現は類を見ません。そして、両曲とも静かに静かに終楽章を終えていくのがなんとも奥床しい。
これほど美しいオーケストラって、ここ最近経験しないなぁ。ベルリン・フィルなんかの超豪華激甘濃厚蜂蜜方面とは、世界が違うんです。田舎風非洗練野暮サウンド、と呼ぶほどではないが、これは「ローカル」でしょ。人それぞれ好みがあるし、音楽はあちこち浮気してもかまわないが、この鈍く輝くほの暗い音の魅力に負けました。これぞBrahms 。録音も悪くない。 (2002年8月9日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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