ローラ・ボベスコ 「Charm and Violin」(珠玉のヴァイオリン小曲集)
Rachmaninov ヴォカリーズ ローラ・ボベスコ(v)/セルジュ・ベマン(p) OVERSEAS 23DJ-5 (p)1977(録音年不明)中古333円で購入(定価2,300円) 日本でもファンが多かったブロンドの美貌ヴァイオリニスト、ローラ・ボベスコは2003年9月4日逝去。日本では報道もされませんでした。追悼盤が出た気配もない。このCDはメモによると2003年8月13日に購入していて、その巡り合わせの妙に驚きました。ワタシはLP時代にDGから出ていたバロック作品集を愛聴していたし、Franck /Leleu/Debussyのヴァイオリン・ソナタ集(PHILIPS 17CD-88 1981年)のCDも発売されて即購入し、その美音を堪能しております。あくまで偶然。 このアルバムは同世代の盟友・安田さんが(LPにて)取り上げられていて、好みの方向の類似に感心したものです。選曲が凝っていて、なによりヴァイオリンの音色が魅力的〜「蠱惑(人の心を引きつけてまどわすさま)的」と表現したい。(聴き手が勝手に蠱惑されているだけだけれど)しっとりして、鋭い技巧のみが表出しない。あくまで甘く、切なく、そして華やか、上品な歌があって瑞々しい。 テクニックの妙技はSarasate 「サパティアード」を聴いていただければ一目瞭然。高音域の細かいパッセージやら、挟み込まれるピツィカートの完璧な表現、それはアクロバティックな腕の披露ではなくて、あくまで余裕を持って表情細やかに変化していく音楽の悦びです。RaffはたしかLisztと同世代のはずだけれど、ワタシは1曲しか聴いておりません。「カヴァティーナ」は原曲の出典がわからないが、「タイスの瞑想曲」を連想させるような切なく、甘美な胸の痛みを感じさせる名旋律。もしかこの人って、隠れたメロディ・メーカーですか? Gluckの「ガヴォット」って、なんの変哲もない練習曲みたいな作品なんです。ところがボベスコのマジックで珠玉の味わいに変化しますね。淡々として、隠し味のようなニュアンスが横溢するわずか2分22秒。Vieuxtempsの「夢想」は、「短調の”牧神の午後”」かな?ラストには安寧がやってきました。Corelliはヴァイオリン・ソナタからの楽章だけれど、楽しげな表情だとこと! 一番有名な作品は「ヴォカリーズ」だろうが、これは上質なフツウ、だと思うんです。表現が大仰に過ぎず、情感にも不足しない。音色にコクがたっぷりとあって、しかも表現がクサくならない気品もあります。ベマンのピアノは伴奏の領分を超えようとはしないが、かなりの実力者と見ました。録音情報不明だけれど、おそらくアナログ末期の自然で柔らかい音質も魅力です。今となっては貴重な一枚か。(2005年2月25日)
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