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「B級クラシック」乃至はそれに類する呼称について


 今回は、このHPをよく見ていただいて方には、ちょっと苦言めいて申し訳ない話しになるかも知れません。戯言ですので、ご容赦。あまんじてご批判はメールにて受けます。エラそうに云っていて、このHPでもけっこう「B級」なんていうコメントがありました。反省します。許して下さい。(反省)

 「B級演奏家」とか、ゲテモノ、なんていう言い方があるじゃないですか。ワタシ、その呼び方は演奏者に失礼だと思うし、なんかブランド指向の裏返しみたいで好きじゃありません。「マイナー」は、少数派ということですからワタシも使います。でも名前が知られていない(しかも、東洋の端っこで、ですよ)からといって、なんでそんな呼ばれ方をしなければいけないんでしょう。(と、いいつつワタシも使っているかも)

 口の悪いのは自分自身いつも反省してばかりですが、「ヘタクソ」とか「気のない音色」は事実だと思うので、これからも使うつもり。「B級」って、きっと「B級グルメ」辺りからの流行言葉だと思います。「安くて、おいしくて、手軽で、気取りがなくて、そして懐かしくて」という愛情だったら正しい使い方でしょうが。

 カラヤン、ショルティ、小澤が「マエストロ」で、ホルヴァート、ガラグリー、セバスチャンが「ゲテモノ」というのはいかがなものでしょうか。ショルツ、アドルフ、リッツイオみたいに架空の演奏家ならまだしもね。ときどきHPで見たり、ワタシにわざわざ(暖かい)メールをいただくなかでも、その類の表現は見かけるんですが、愛情表現の裏返しでしょうか。

 そんなことをつくづく思ったのは、N響のスーパー・オーボエ茂木さんの著作「続・オーケストラは素敵だ」で、シュトゥットガルト・フィルの厳しいオーディション風景が出ていて、感動したからなんです。シュトゥットガルト・フィルって、ほとんどCDが出ていないでしょ?(E.シュトラウスのウィンナ・ワルツとか、オークレールのヴァイオリン協奏曲のバックで出ていたりする)
 そういった意味じゃ、マイナー(日本じゃ。ちゃんと来日もしているんですけど)な存在ですが、団員募集のオーディションは本当に厳しくて、真摯な情景が描写されています。伝統ある団体のようです。

 有名なバイエルン放響のオーディション風景もありました。(茂木さんは最終審査で落とされる)そういった欧州のオーケストラへの就職状況が出ていて、地方都市の小さなオケで、町の人に愛されながら和気藹々と音楽生活を営むのも悪くない、といった意味の話しも出てきます。日本と違って、もっとナマの音楽が日常生活に息づいているんですね。(オペラ・ハウスが多くて、コンサート専門のオケは少ないんだそう。日本にはオペラ・ハウスなどひとつもない)

 そんなドイツの田舎のオケのCDが、日本に紹介されることは滅多にないと思います。たまたま、そういった音源が激安CDで日本に売られたものを、「B級」とか「ゲテモノ」呼ばわりする権利なんてあるんでしょうか。

 岩波新書に小川和男さん著「東欧 再生への模索」(1995年第1刷)という本があって、「欧州の伝統」ということは日本人の想像を超えるものであることを教えてくれます。「東側陣営の崩壊」とか、かんたんに評論しがちですが、「伝統」はちゃんと息づいていて「回帰」している様子が伺えます。
 (この本に直接出てくるわけではありませんが)経済的には崩壊状態らしい、ロシアとかルーマニアとか、そんな国でもちゃんとオペラや演奏会は続いている。

 で、ここから先がワタシの想像なんですが、1980年前後に登場した例えばナヌート/リュブリャナ放響の膨大な録音(ストラディヴァリウス、とかメディアフォン)、1980年代の後半に登場したNAXOSが起用した、ブラティスラヴァの辺りの団体(スロヴァキア放響、カペラ・イストロポリターナetc....、コシツェのオケもありました)のこと。これが、ちょうどCD普及の時期と噛み合って、日本にも廉価盤として流れてきたんじゃないかと。

 旧東側にも、それなりの実力のオケは存在し、政治・経済的な崩壊で貨幣価値の大混乱の中、安く契約して録音したんでしょう。デジタル・コンソールも小型化して、安くなってきた時期でしょうし、ちゃんとした(?)デジタル録音が実現しています。
 その後、ご存じのように旧ユーゴ周辺は戦乱に巻き込まれてしまいました。(だから新しい録音が出ません)ブラティスラヴァのオケは(きっとギャラ・アップを要求したんでしょう)最近録音は少なくなり、録音用オケ(ラズモフスキー・シンフォニアとか)に替わられました。

 ARTE NOVAが、ルーマニアの「ジョルジュ・エネスコ・フィル」を起用したのも、似たような理由かと思います。(ノヴォシビルスクとか、グラン・キャナリアなんかも渋い)NAXOSは、旧東側に限らず世界的に「隠れた実力団体」を発掘して偉いですね。アイルランド国立響、ウクライナ国立響、サン・ディエゴ響(ナントつぶれてしまったが)、オセアニア、アイスランド、イタリア辺りの無名の団体も出てきて楽しみ。(書いているウチに思い出したけど、かつてNHK-FMではその辺りの全世界のオケのライヴを放送していた記憶がある)

 ASVも、メキシコとか、アルメニア・フィルなんて興味深い団体を紹介してくれました。DISCOVERでは、イランのオケ(ペルシアなんとか、という団体を目撃)もありました。日本のオケが廉価盤に登場しないのは気にくわない。(噂によるとNAXOSからのオファーを「マイナー・レーベルだから」と断ったとか?→ARTE NOVAから京響登場!とのこと。買います!)

 そんなこんなで、あんまり有名でないオケ、指揮者、ソリストのCDが次々と、しかも廉価盤で登場してくれて・・・・・KechiKechiClassicsが成り立っているわけでして、ゲテモノ・・・・なんか妖怪みたいな、そんなんじゃありません。

 たしかにベルリン・フィルやCSOは凄い。圧倒的なオケの威力は魅力的です。でも、ちょっとヘボい鄙びた響きとか、思わぬ親密な味わいとか、音楽の楽しみかたっていろいろあると思うんですよ。ましてや、ナマの演奏はなにものにも替えがたい魅力的な世界。

 現在ワタシが居住している岡山にも、いくつか団体があって、アマ・オケは技術的にどうの、とかいう話しじゃないけど、楽しさはひとしお。プロの岡山フィル、アマの岡響、岡大響、川崎医大室内管、川崎記念管弦楽団等など、ふだんお世話になっている団体は「超マイナー」でしょう?でも、「B級」とか「ゲテモノ」とは絶対に呼ばない。

 で、ワタシのHPはマイナーかもしれないけど、安くって、素敵な音楽を楽しむものなんです。自分ではそんなにマニアックとは思っていないのですが、如何?ブランドではなく、自分の耳でちゃんと確かめて音楽は楽しみたいもの。高いお金を払って、それだけでありがたがっている時代じゃないでしょ?・・・・と思うのですが、ご意見を賜りたい。

 


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written by wabisuke hayashi