Beethoven ピアノ・ソナタ第32番ハ短調/Ravel ソナチネ/
Bach トッカータ ホ短調 BWV.914/Debussy 練習曲集より(クララ・ハスキル(p)(1953年)


DOCUMENTS 232868/E CD4  10枚組970円 この写真なんとかならんか Beethoven

ピアノ・ソナタ第32番ハ短調 作品111

Ravel

ソナチネ

Bach

トッカータ ホ短調 BWV.914

Debussy

練習曲集より「対比的な響きのための」

クララ・ハスキル(p)(1953年 南西ドイツ放送局音源 ルートヴィヒスブルク?ライヴ)

DOCUMENTS 232868/E CD4  10枚組970円

 この一枚が特別に凄い説得力を持っているとか、そんなことでもないんです。音質もぱっとせんなぁ、ミスタッチ云々ともかく、ハスキルの強靭かつ明晰デリケートな個性が充分発揮されているとも言いがたい演奏。でもね、2010年格安にて(ここ最近円安値上がり気味)せっかく入手した10枚組、残さず味わい尽くしましょうといった趣旨であります。ディジタル・データ(CD)に劣化はないはずなのに、最近(以前に比べ)妙に音質ばかり気にするようになったバチあたり者、虚心に音楽を傾聴いたしましょう。

 一般にBeeやんは眉間にシワ、人類の懊悩はすべてワシが背負う、的(勝手な思い込み)イメージつきまとって敬遠気味。それでも名曲は名曲として感銘を受けること再々であります。ラストのピアノ・ソナタは凝縮された緊張感が、堪らぬ知的感興を醸しだして絶品、若い頃LPにて拝聴した(アルフレッド・ブレンデル旧録音)刷り込みでしょう。第1楽章(Maestoso - Allegro con brio ed appassionato)は切迫したハ短調の和音で開始、劇的な楽想が緊張感を孕んで〜ミスタッチ頻出、ハスキルの体調もよろしくなかったんでしょうか、やや集中力散漫かも。第2楽章(Arietta. Adagio molto, semplice e cantabile)は安寧なハ長調主題16小節が自在に変奏される13:37。表情は刻々と変化し、途中から32分音符三連音のハズむようなリズムに至って、天才は深淵かつ多彩な世界を作り出します。

 後半戦、ハスキルも立ち直ったのか、あまりよろしからぬ音質から、繊細かつ明晰なタッチを聴かせてくださいました。

 Ravel は3楽章わずか10分ほど、美しい旋律の宝庫。この10枚組ボックスの録音情報は必ずしも正確ではないらしいので、この一枚がすべて「1953年ルートヴィヒスブルク・ライヴ」音源なのか確証はありません。音質(ぱっとしない)様子はよく似ていて、会場ノイズは時に偽装付加もありえるから油断ならない・・・閑話休題(それはさておき)。華やか明晰なタッチはハスキルの世界であって、繊細を前提としてこの人のリズムは強靭であります。この作品も技巧的にはかなりの難度とのこと、ハスキルは完璧に粒の揃ったタッチ、ミスタッチもほとんどありません。

 唐突に(途切れなく収録される)Bach はかなり濃厚な表情にて開始、やがてデリケートな旋律の歌が繰り広げられました。後半、フーガのノリ、リズム感の良さはみごとなもの。タッチはかなり明晰にしっかりして、風情は浪漫、情感豊かにスケールもあります。ラストDebussyっって、この人の旋律和声って独特やなぁ、そんなことをいつも感じます。Ravel のソナチネが古典的なスタイルを風貌していたのに比べると、まるっきり天衣無縫というか、別世界のエキゾティズム。ハスキルはかなり入念であり、技巧も完璧であります。

 CD一枚計42:50。かなり大きな協奏曲もう一曲入りまっせ。聴き手の集中力問題+音質問題もあってこのくらいが適正収録かも。

written by wabisuke hayashi