Beethoven 交響曲第6番ヘ長調「田園」
(ヤッシャ・ホーレンシュタイン/ウィーン・プロ・ムジカ交響楽団)
Beethoven
交響曲第6番ヘ長調「田園」
「献堂式」序曲(以上1958年)
「プロメテウスの創造物」序曲(1953年)
ヤッシャ・ホーレンシュタイン/ウィーン・プロ・ムジカ交響楽団
VOX Legends VOX7808-CD2 モノラル録音 8枚組 3,990円で購入したウチの一枚
このボックスは2001年に購入していて、不遇だった巨匠(1898〜1973年)の業績と、実力を偲ぶに充分なるセットだと思います。「新世界交響曲」に対するコメントは購入直後にサイト上梓済み。ワタシはBeethoven の音楽を「敬意を失わないが、苦手」と公言していて、超・人気である交響曲中この「田園」は、もっとも敬遠して聴く機会が少なくなっております。もしかしたら、カラヤン/ベルリン・フィルの1962年録音との出会いが悪かったのか・・・あれはハナモチならぬ気障で、いやらしい演奏だったと記憶(あくまで個人の嗜好也)。
2007年転居に伴い、Beethoven の交響曲全集計6セットをオークション処分いたしました。手持ち在庫を少々縮小集中して仕切り直しのつもり。ホーレンシュタインの「田園」は購入したことさえ失念していたけれど、久々の聴取にすっかり感動いたしました。VOXといえば、そのどんよりとした音質が一般に心配だけれど、ここではモノラル収録ながら、それなり聴き苦しくはない水準にて収録されておりました。「ウィーン・プロ・ムジカ交響楽団」とは、ウィーン交響楽団のことでしょうか。このセット中には「ウィーン交響楽団」と明記されているものもあって、その辺りの経緯はよくわかりません。(LP時代からお気に入りでした。VOXレーベルの場合よくあります)
久々の聴取、たまたまの体調故かワタシは「田園」に、ほぼ20年ぶりにしみじみ感動いたしました。第1楽章「田舎に到着して晴れ晴れとした気分がよみがえる」〜心持ち速め、適正なテンポで意外と淡々、すっきり自然な流れで進んでおります。大げさ粘着質なテンポの揺れや、細部旋律の品を作らないが、じゅうぶんに説得力ある(どちらかというとストレート系)表現となっております。第2楽章「小川のほとりの情景」だって、さらり繊細な味わいがあって、弦も木管も優しく歌い交わして優秀なアンサンブル(オーケストラの力量も)であります。
第3楽章「農民達の楽しい集い」は、逆にやや噛み締めるような表現になっていて、牧歌的な味わい漂います。第4楽章「雷雨、嵐」は切羽詰まって急(せ)いた、といった印象ではないが第3楽章との対比は鮮やかでした。(これは「第1スケルツォ」〜「第2スケルツォ」といった構成でしょうか)あまり、喧(やかま)しくヒステリックに叫ばない「嵐」であります。
第5楽章「牧人の歌〜嵐の後の喜ばしく感謝に満ちた気分」・・・万感迫り、静謐な心情が表現されます。テンポはあくまで中庸。安定感があり、オーソドックスなる表現であります。個々も第2楽章に負けず、弦と木管が良く歌って柔らかい。繊細。ようはするに全曲通してあまり奇を衒わない、粛々とした演奏であるということでしょう。「新世界」ではかなり乱れたアンサンブル+テンポ設定が異形であったが、ここでの安定ぶりには少々驚かされました。
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Beethoven では少々マイナー系の序曲が二つ収録されます。「献堂式」序曲には落ち着きとスケールがあり、Haydn風の序奏にHandel 風の主部が続く作品・・・(戯言です)「プロメテウスの創造物」は劇的な表情が加わって、これは5年の収録差による変化なのでしょう。 |