Beethoven ピアノ協奏曲第1/2番
(ペーター・レーゼル(p)/フロール/ベルリン交響楽団)
Beethoven
ピアノ協奏曲第1番ハ長調
ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調
ペーター・レーゼル(p)/クラウス・ペーター・フロール/ベルリン交響楽団
W
edel 0002832CCC/CD1 1991年録音 10枚組1,962円にて購入
”BBEやん苦手”と千度サイト上にて公言している罰当たり者であるワタシが、交響曲より更に敬遠しているのがピアノ協奏曲です。歴史の荒波にもまれて評価の確立した名曲中の名曲だし、廉価盤を収集していたら自然と集まる作品でもあります。(ずいぶんと処分もしたが)昨年コメント以降にレーゼルのボックスを入手、その中にしっかり全集3枚分(+ロンド 変ホ長調WoO6)も含まれておりました。(お恥ずかしいが更に第1/3/5番含むCDオークション入札到着待ち状態)
粗忽なワタシが久々、ほとんどこども時代以来の感動を与えて下さったのがこの一枚。もともと(昔)第1番ハ長調協奏曲はお気に入りだったんです。今回、第2番 変ホ長調協奏曲も好きになりました。フロール/ベルリン交響楽団のオーケストラが、味わい深い艶消しの響きを誇っていて、旧東独逸系の録音って意外と良好なものが揃っておりますよね。時にいかにも間に合わせ!的ヘロ演奏の協奏曲バックも楽しいものだけれど、ここではレーゼルと対等の立場(ソロとよく似合っている)で、”いかにも独逸/Beethoven ”的イメージで、エエ感じに鳴っておりました。
ペーター・レーゼルは実力派だけれど、彼の録音集成ボックスがこんな価格で処分されるということは、人気がない、売れない、ということなんでしょう。ワタシには作品のイメージを変えた、という手応え(しっかり)有。第1番がお気に入り〜というのはMozart のテイストが残っているからでして、軽快聡明に演奏していただきたい・・・が、レーゼルはむしろしっとり浪漫の香りを感じさせました。きんきん刺激的ではなく、艶々のセクシーな美音でもない、落ち着いた瑞々しい味わいは他の録音でも同様だから、録音の加減ではないでしょう。
安定した技巧であり、細部まで弾き崩し(流し)のないタッチだけれど、印象としては地味なんです。派手なオーヴァーアクションもなく、華やかさ皆無だけれど自然な流れがある。音に芯があり、重心も低い。Rachmaninov では少々生真面目すぎ、と感じられた表現も、ここでは好ましいものでしょう。第2楽章「ラルゴ」に於ける深遠なる静けさは、ここ最近緩徐楽章への嗜好を強めているワタシには嬉しいもの。
終楽章「ロンド」にはHaydnのテイストを感じます。Beethoven らしいスケールに不足せず、躍動充分ながら”地味”な印象こそ好ましい。重厚だけれど、重苦しくはない、自然な流れが快いもの。
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第2番 変ホ長調協奏曲との出会いは、グレン・グールド(p)/バーンスタイン/コロムビア交響楽団(1957年)のLPであったと記憶します。現在の耳ならわからぬが、若い頃はエキセントリックな演奏(バックもリキみ過ぎ?)を苦手としておりました。こちらHaydnの影響を感じる(オーケストラの編成も小さい)シンプルな旋律の作品也。(第1番より作曲前代は早いそうです)レーゼルは走りすぎないんです。”自然な流れ”を維持しつつ、端正な浪漫方面の表現也。
今回、第2番 変ホ長調協奏曲も好きになりました〜と、先ほど書いたのは、しっとりとした落ち着きがあるからなんです。若書きの作品を、初々しく清潔に表現した演奏もきっと存在するのでしょう。なんせBeeやんに熱心じゃないので、ちゃんと探したことはないんです。レーゼルは慈しむような、丁寧なタッチでHaydnからは遠い世界に浪漫して、別な作品を聴くかのような(やはり地味な)深み、大きさを実現しておりました。
ここでも第2楽章「アダージョ」が胸を打ちます。フロールのオーケストラが纏綿とじっくり歌って、驚くべき甘美な世界を実現させました。終楽章の平明な旋律はHaydnであり、強靱なリズムはBeethoven の個性なのでしょう。レーゼルは安易に走りませんよ。どこにもムリなく、瑞々しい繊細な音色で乗りきります。やはり地味だけれど。
(2008年4月5日)
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