Beethoven 交響曲第7/8番
(ロイ・グッドマン/ハーノーヴァー・バンド)
Beethoven
交響曲第7番イ長調
交響曲第8番ヘ長調
ロイ・グッドマン/ハノーヴァー・バンド
NIMBUS NI 5144〜8 1988年録音 5枚組 定価9,000円表示だけれど7,000円台で購入
このCD、購入17年目でとうとうダメになっちまいました・・・まだ、時に運良くプレーヤーで鳴らせるときがある(ノイズは乗るが)ので、長年お世話になった供養にちゃんと聴いて、更新しておきましょう。当時はこれでも充分安かったし、古楽器による最新録音(当時)は貴重だったんです。オフ・マイク気味で音量レベルが少々低いが、残響豊かで鮮度高い音質です。ベーレンライター版による録音(と、いうが相変わらず正直ようワカラン。録音当時未出版のハズだけれど)。
ワタシはBeethoven の、強靱、決然とした音楽を苦手とする罰当たり者です。分厚く、重い表現もちょっとご遠慮したい感じ。だから、軽妙、洒脱なる演奏を求めていて、それは使用楽器に限定されないが、小編成古楽器が比較的好ましい・・・このハノーヴァー・バンドによる全集は(その後続々登場する)その嚆矢となったもの。価格はこれでも当時、ずいぶんとお徳用だったんですよ。フェレンチーク盤辺りが「ホームセンターのかご中なんでも@1,000」で存分に安かった記憶もありますし。
「英雄」と並んで、もっとも激しい作品である「第7番イ長調」だけれど、粗野で素朴な力感に充ちて表現されました。やや速めのイン・テンポで統一され、第1楽章提示部も繰り返し有り難く、管のバランスが強い。リズム感はそう強調していなくて、溌剌感はあるけれど、過激ではない。弦は薄目でノン・ヴィヴラートだけれど、豊かな残響に守られて粗雑に響きません。会場残響(ロンドン、オールセインツ教会)見事だけれど、クールに(素っ気なく)鳴り渡るのが、現代楽器演奏に聴き慣れた耳には、違いをいっそう際だたせました。
こどもの頃は一番好きだった第2楽章「アレグレット」は、深淵なる情感(”泣き”ではない)から遠く、淡々粛々と演奏されました。表現そのものは入念丁寧でして、作品の素の味わいがそのまま表出されているのか。後年の録音に見られるような、硬く薄っぺらいティパンニの音色ではなくて、聴き慣れた重いアクセントに近いのも意外。(純個人的な好み問題で)元気良すぎ、やかましく感じて、敬遠し勝ちの第3楽章「スケルツォ」だって、清涼爽快素朴なる味わい崩れませんね。鳴り渡るトランペットはまるで「水上の音楽」か。間に挟まる木管の牧歌的な味わいも愉しい。
「いや、もう運動会で全力疾走できまへん」的最終楽章は、期待通りの勢いがあり、そしてほとんど虚飾がない。ラスト、ホルンを先頭とする金管は、粗野な迫力に溢れました。全体として、ほとんどなにもしない、歌に不足する、素っ気ない・・・この「古楽器サウンド」嗜好に外れる方には、単なるツマらない(工夫のない)演奏に聞こえるかも知れません。ワタシには、余計な色付け、味付けがなくて、馴染みの音楽(素材)を素直に堪能できたものです。
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第8番ヘ長調は、ワタシの相対的お気に入り作品でして、小ぶりで素っ頓狂、かつ哲学的なる名曲。作品的に、上記縷々述べてきた方向にピタリ!+リズム感も充分であります。第1楽章「アレグロ」から躍動とスピードにのってノリノリ、メリハリあって楽しい。白熱、といっても過言ではない。もっとも「哲学的」なる第2楽章さえ、快い陽光のような暖かさと微笑みがあって、無機的ではないんです。
第3楽章「メヌエット」には、カラヤンの優美優雅な遅さが懐かしいが、正統的な「メヌエット」舞曲のテイストが、速めのテンポで颯爽と表現されます。ティンパニとトランペットのアクセントは的確であって、やりすぎではない。中間部のホルンとオーボエの絡み合いは、よりいっそうの粗野な味わいを求めたいところ。
終楽章も超特急ですね。金管の爆発は望み通りの野生の風情があって、一気呵成に走り抜けます。繰り返すが、威圧と過重がないのがよろしい。フルトヴェングラーに圧倒的説得力を感じたり、トスカニーニ白熱の集中力テンションに(時に)ココロ奪われる時もあります。でも、ワタシにとってのBeethoven は、このような粗野で素朴ですっきり爽快な方向か、と。
長い間、お世話になりました。ワタシの粗雑な聴き方深く反省。再購入するかどうかは決めておりません。
(2006年5月5日)