Beethoven ヴァイオリン協奏曲ニ長調/
Brahms ヴァイオリン協奏曲ニ長調(ヤッシャ・ハイフェッツ(v)1955年)
Beethoven
ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品61
シャルル・ミュンシュ/ボストン交響楽団
Brahms
ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品77
フリッツ・ライナー/シカゴ交響楽団
ヤッシャ・ハイフェッツ(v)(1955年)
CD写真は20年前に入手し、先日330円にて処分したもの。太古1955年録音ながら驚異的ステレオ録音(もちろん現役CD/でも売り切れみたい)はパブリック・ドメインとなってネットで拾えるんです。.mp3→.wavファイル変換自主CDだし、オリジナルにはるか及ばぬ音質なのだろうが、まずは日常不自由なく音楽を堪能可能なる水準と(勝手に/聴き手の耳は安物だし)感じております。だいたい2大ヴァイオリン協奏曲CD一枚に収納!というのが凄い、じつは80分収録に少々余裕があって、更にBach の平均律クラヴィア曲集第1巻より2曲ほど(ヨセフ・レウノフ/ディルディエール・ブレスト(p))を詰め込んでみました・・・というくらい快速〜
〜という感じは、じつはあまりしません。苦手系Beeやん作品中別格のお気に入り、優しい旋律作品(リファレンスはヨゼフ・シゲティ)ながら、ハイフェッツを聴いていると”別作品?”といった感慨に至ります。さらりと素っ気ないほどスリムなヴァイオリン、旋律は粘らない。あちこち寄り道せず、ストレートに音楽は進むんです。ニュアンスに不足はないが、詠嘆やら雄弁とは無縁、色気は自ず作品の素から滲み出るといった具合か。うむ、第1楽章「アレグロ」はたしかに速い!ミュンシュのオーケストラはいつものようにざっくりとして、熱気のあるもの。カデンツァはは師レオポルド・アウアーのものらしい。
第2楽章「ラルゲット」は安寧の変奏曲であって、これはBeeやん熟達のワザなんです。楚々と歌って欲しいソロだけれど、ハイフェッツは手慣れた鼻歌でも歌うように、それでいて丁寧に、そっと流れよく進めております。ここもテンポはかなり速いが、急いた印象はありません。名曲!ここ最近、緩叙楽章への嗜好いや増すばかり。気持ちよく油断していると、あっという間に終楽章「ロンド・アレグロ」に至って、なんせ汗水、眉間に皺、精一杯努力!とは無縁のスタイルだから 流れは自然なんです。
音楽が弱いワケではないのだな。テンポが速い、という意味ではなく、あっという間に全曲終わっていく感じ。ここは一発盛り上げて!みたいなタメとは無縁なんです。ま、ざっとこんなものですよ、的ハイフェッツのマジック。完璧の技巧。
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ここ最近集中力が落ちていて、Brahms そのものを(室内楽/ピアノ・ソロを除けば)聴く機会が減ったし、ましてやBeeやんに続けて!なんて信じられん。オーケストラはライナーに変わりました。アンサンブルが入念、サウンドが厚く重いのは個性の違いです。作品は浪漫に移行していて、細部作り込みはかなり凝っておりますね。旋律は細かく装飾されるが、なんの苦もなくさらりと進んでいくハイフェッツのクールさに変化はない。なんというさっぱりとした透明な気品。囁くような、そして時に決然としたストレート系表現の極北。
第1楽章「アレグロ」はBeeやんに比べ、ずいぶんと甘美劇的な旋律でしょう。ハイフェッツ圧巻の技巧!グイグイとした、というより、さらさらと前向き推進力。過度の情感に色付けしない。カデンツァはハイフェッツ自作らしい、他では聴けない壮絶技巧の披瀝となっております。そのあとの第1楽章ラストの美しいこと!第2楽章「アダージョ」の長大なるオーボエ・ソロはレイ・スティルですか?いくらでも歌謡的に、表情豊かに歌える旋律だろうが、ハイフェッツは意外と素っ気ない。粘着質表現皆無。だからこそ作品が映えるんです。テンポは速いなぁ、違和感はないけれど。ここ、”ヴァイオリンのコロラトゥーラ”と呼ばれるんだそうです。
終楽章「アレグロ」。ここのジプシー風主題はあまりに”それ”らしく仰々しくて好きじゃないんです。オーケストラも全開。いかにも難しそうなパッセージ連続して、ヴァイオリニストの腕の見せどころなんでしょう。ま、ハイフェッツは易々と、すいすいと例の如しのスタイルを崩しません。やはり、こちらもあっという間に終わって、いつもの結論だけれど、作品よりハイフェッツが前面に出た演奏でしょう。両曲とも必ずしもヴェリ・ベストとは感じません。でも、やっぱり凄い。文句なく、上手い。 (2010年4月30日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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