Beethoven ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品61
(ヨゼフ・シゲティ(v)/アンタル・ドラティ/ロンドン交響楽団)
Beethoven
ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品61
ヨゼフ・シゲティ(v)/アンタル・ドラティ/ロンドン交響楽団(1961年録音)
写真はPHILIPS 32CD-3039
Lily KLD-28(PHILIPSの海賊盤)Made in Korea(中古250円)棚中現役
YouTubeでも聴けます。
1932年シゲティ最初の録音を聴いて、深い感慨を覚えました。その流れで10年ぶり、この(お恥ずかしい)筋金入り駅売海賊盤を再聴してみました。Szigeti Jozsef (1892-1973洪牙利)は往年の名ヴァイオリニスト。いつまでも大昔の録音ばかり聴いていても仕方がないし、できるだけ若手や現役世代を聴くように心掛けてきたけれど、時に昔馴染みな歴史的録音を振り返るのも悪くないでしょう。これは最近やや不遇っぽくて、もともと優秀録音で有名だったMercury音源であった由。
CDはけっこう処分してきたけれど、さすがにこんな怪しいのは売れんですよ。すっかり存在さえ忘れて、それでもちゃんと再生できるのが凄い250円也。この作品は”強面Beeやん”に非ず、シンプルかつ優しい風情が漂う名曲中の名曲!大好きでっせ。久々の拝聴や如何。
25:08-10:27ー9:40=46分を超えるからテンポは遅め、それは老境に至ったシゲティへの配慮でしょう。音量ボリュームが低めなのはオリジナルを聴いたことがないから、この駅売海賊盤(おそらくLP板起こし)の責任なのか判断は付きません。ボリューム上げて拝聴すれば優秀録音であることは理解できました。1932年録音を聴いて、不器用なボウイングは昔からの個性、それでも技巧的に30年後はいっそう苦しいことは理解できます。しかも、テンションがかなり落ちて”枯れた”ことは間違いない・・・と、ここまで書いて、11年前のコメントと寸分違わぬことに気付きました。以下、繰り返しみたいな要らぬコメントばかり。
いつもの強面、前向きに戦うぞ!1960年代的風情に非ず、諄々と味わい深い名曲、先入観前提なしに聴けば終楽章「Rondo Allegro」辺り、かなりよれよれ、息も絶え絶えといった風情でしょう。美音から程遠くても、この演奏は美しいと思いますよ。ここ2日ばかり幾度繰り返して飽きることはない。ゆったりとした昔語りのように静かなな第1楽章「Allegro ma non troppo」、カデンツァはBusoniだそうです。消え入りそうに淡々とした第2楽章「Larghetto」、どれもほっとするような安寧に充たされます。
アンタル・ドラティのバックが端正に整って、ほとんど自らの個性を主張しない、ソロを前面に立てる姿勢も賞賛いたしましょう。昔馴染みの音源を21世紀、サラリーマン半引退に至った聴き手はどう受け止めるのか。ちょっと不安だったけれど、演奏芸術について深く考えさせられましたよ。新しい切り口はなにもありません。
(2019年8月17日)
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これは好きな演奏だなぁ。LP時代からお気に入りでした。CD入手していなかったもの。ゆったりとしたテンポは技術の衰え故だろうが、それがどうした?というくらい、高貴で誠実で、枯れた味わいが素晴らしい。ぎくしゃくした不器用なテクニックがなんと美しい。この演奏はワタシの出会いであり、”Beeやんは苦手”の数少ない例外(大好き!)の所以であります。
・・・それはエエけど、環境で選ぶクラシック名曲集「心は美人〜音楽美肌健康美容法」(知的で美しい女性になりたい貴方に)〜なんと怪しい!フツウ誰もこんなCD買わんから@250は適正価格なんです。(+Ravel 「夜想曲」〜「雲」〜アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団も収録)定価1,500円。実際その価格で購入された方も存在することでしょう。幸多かれ。(2006年6月「近況」より)
お気に入り作品へと至るには、それに相応しい出会いがあるのでしょう。このシゲティ盤はLP処分後、FMエア・チェックで残しておりました。←かなり思い入れの強い文章ですな。遅めのテンポはシゲティ69歳の技巧の衰えをカバーする意味もあろうが、非・流麗ごつごつした表現は若い頃からのものであって、いっそう枯れたと評すべきでしょう。じっくり腰を落ち着けて、しみじみ切なく聴かせて下さいます。こんなエエ加減駅売海賊盤でも、おそるべき優秀録音。
美音からほど遠く、訥々として既に技巧的な危うさ(そして線の細さ)は誰にでも理解できることでしょう。ワタシはメニューイン(のクセ)とは質的に違うものを感じるんです。表面を磨かない本質的な”美”、それを言っちゃお仕舞いよ的”高邁なる精神性(!)”、汚れを知らぬ静謐誠実と厳格・・・よれよれのボウイングを聴いていると、やがて胸もアツくなってくる第1楽章・・・これは毎度、何度聴いても同じ感動であります。カンデツァはBusoni。
ここ数年の緩徐楽章嗜好とも相まって、第2楽章「ラルゲット」は聴き手の精神を沈静化させる説得力有。まさに天国的安らぎ、神々しい輝きに溢れた変奏曲であります。同じ繰り返しだけれど、これを美しいと感じ取れない音楽愛好家がいるのでしょうか。ワタシは陶然となってしまいました。
ここまで到達すれば、たどたどしい、少々弱々しい終楽章旋律パッセージにも違和感はないはず。技術的にスムース、豊満な美音が耳当たり良いに決まっているが、それを凌駕する”何か”が、たしかに存在します。それは”精神性”なのか。彼のBach を聴いたときにも同様の手応えがあったものです。
ドラティのバックは特筆すべき充実を誇ります。シゲティのテンポをしっかり支えて、ニュアンス配慮行き届いて、ソロとのバランスも最高。稀代の名曲故、表現の方向は数多く存在するだろうが、音質含めヴェリ・ベストの確信を持ちました。
(蛇足だけれど、アンセルメの「雲」も音質演奏ともに立派なものだけれど、あまりに違和感収録也)
(2008年9月26日)