Bartok ピアノ協奏曲第1/2/3番
(イェネ・ヤンドー(p)/アンドラーシュ・リゲティ/ブダペスト交響楽団)


NAXOS 8.550771 1994年録音 中古@250入手 Bartok

ピアノ協奏曲
第1番 Sz83
第2番 Sz95
第3番 Sz119

イェネ・ヤンドー(p)/アンドラーシュ・リゲティ/ブダペスト交響楽団

NAXOS 8.550771 1994年録音 中古@250入手

 馴染みの作品なのに、正直ぴん!と来たことがない・・・ジェルジ・シャンドールによる全集も(読み返すと)妙によそよそしいコメントです。ちゃんと再聴しなくっちゃ。でも「ラプソディ」「スケルツォ」ともかく、意外と3曲揃ったCDって入手しにくくありませんか。そんなことないかな?ワタシが安物狙いしているだけか。棚中より、ある日こんな一枚発見!

 アマゾンのユーザーレビュー氏によると「すさまじい熱演を繰り広げる・・・のだけども、なんだろうなあ。ちっとも心に響いてこない」、そしてシャンドールは「味はあるけどテクニック的にはへろへろ」と・・・そうか、シャンドールってへろへろだったのか。十数年こればっかり聴いていたんだけれど。閑話休題(それはさておき)ハンガリーの名手イェネ・ヤンドーのこと。謙虚なコメントでして「もちろん好みの問題もあるだろうから俺のレビューあんま参考にしないでね」〜その姿勢や潔し。おみごと。ならばワシも真摯に聴いてやらねば。

 土門拳だったか?焼き物かなんか、ひたすら対象物に集中すればその真贋は見抜けると。ワタシのような俗人には”比較対照”が必要です。その結果がどうあれ愛着に変わりはないけれど。このCDの印象は「すさまじい熱演を繰り広げる」という一言に共感いたしました。録音はきわめて鮮明、ブダペスト交響楽団も絶好調の鳴りっぷり、なによりヤンドーの技巧が壮絶な熱気と精密を誇って圧倒される・・・たしかにシャンドール盤とは全然風情が異なって、とてもわかりやすい世界也。

 第1番 Sz83は「ピアノが打楽器的に使われている」との専門家の分析、なるほど、ワタシはこの作品(ピアノ・ソロ)を聴く度、”旋律がない、リズムのみ”(実際はそんなことはないんだけれど)印象を得ておりました。少なくとも甘美なる旋律のハーモニーは出現しなくて、粗野で原始的な激しいリズムが全編を支配して、Stravinskyを連想させる作品です。打楽器と金管の多彩で華やかな響きも印象的。

 ヤンドーを”なんでも屋”と揶揄する声もあるようだけれど、どれも中庸で水準以上の演奏を繰り広げる、といった意味か。このBartokは”正確な中庸”を誇って、つまり技術的に完璧であって、壮絶なんだけど、エグいような強靱な世界に至らない・・・Bartokって、もっと危うい音楽でしょ?と言う方も出現してもおかしくないかも。ワタシはヤンドー全面支持派ですが。

 第2番 Sz95は、前曲とがらりと雰囲気変わって第1楽章には弦が登場せず、華やかな金管と打楽器が目立つ開始となります。シロウト耳にもそうとう難しそうなソロであって、第1番に比べれば明るく流麗なる旋律続きます。ま、相変わらず激しい原始的リズムは全編支配しているんだけれど。ブダペスト響の技量と音質に助けられ、ピアノ・ソロとオーケストラの絡み合いの妙を細部まで、たっぷり愉しめます。

 静謐なる第2楽章は弦(+打楽器)のみの伴奏。これもエチゾチックで素敵(深刻?)な旋律と思います。中間部のスケルツォ(?)風疾走の驚異的に細かい音型+スピード!完璧なるテクニックの妙。終楽章は駄目押しのような打楽器の爆発(凄い迫力)から、華々しい金管が(第1楽章)回帰して、ソロは縦横に走り回って、息も吐かせぬ壮絶なる”華々しい”フィナーレを迎えました。(3曲中ではこれが一番好き)

 第3番 Sz119は、Bartokの遺作であり、未完成の作品とのこと。シェルイ・ティボール(Serly Tibor)補筆。これは誰が聴いても晩年の平易で穏健な作風に気付くでしょう。先ほど迄の原始的ハードなリズムや、不協和音の連続ではなく、ちゃんとしたわかりやすい旋律が続きます。ド・シロウト聴き手には関係ないことだけれど、演奏も比較的ラクとのこと。第2楽章「アダージョ」はソロと弦の瞑想的な対話であり、終楽章に至っては明快な民族的旋律が支配して、打楽器の迫力に少々溜飲を下げる思い。

 「管弦楽のための協奏曲」を連想しますね。霊感に乏しいとか、ツマらないとは思わないが、前2曲の破壊的な快感とは方向は異なります。いずれ、徹頭徹尾ヤンドーは立派なソロに間違いなし。このCD一枚、作品そのものにちょっと目覚めました。

(2009年8月14日)

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written by wabisuke hayashi