Bartok ピアノ協奏曲集+2台ピアノと打楽器のためのソナタ
(ジェルジ・シャンドール)


VOXBOX  CDX2 5506 Bartok

ピアノ協奏曲第1番Sz.83

ハイリヒ・ホルライザー/バンベルク交響楽団(1958/59年録音)

ピアノ協奏曲第2番Sz.95 /第3番Sz.119

ミヒャエル・ギーレン/ウィーン交響楽団(1958/59年録音)

2台ピアノと打楽器のためのソナタ Sz.110 (1965年録音)

ロルフ・ラインハルト(p)/スカッド/ソ−ム(パーカッション)

ピアノと管弦楽のためのラプソディ 作品1Sz.27 (1958/59年録音)

ロルフ・ラインハルト/バーデンバーデン南西ドイツ放送交響楽団

ピアノと管弦楽のためのスケルツォ 作品.2 Sz.28 (「ブルレスク」1974年録音)

ピエール・カオ/ルクセンブルク放送管弦楽団

以上 ジェルジ・シャンドール(p)

VOXBOX CDX2 5506  2枚組1,850円

 あまり系統だってメジャーなところを聴く習慣を持たないので、ワタシのMUSIC LIFEには偏りがあるみたいです。ここ数年のブログ・ブームで多くの意欲的な更新を拝見できるようになったが、いやはや皆様メジャーなところ狙いが多いですね。ワタシは子供時代からの”安物”狙いで、結果的に(廉価盤との)出会いが少なければ、その作品を聴く機会も増えない・・・作品的には大好きなんですけどね、ずいぶんとご無沙汰。他意はありません。久々、気持ちも新たに全2枚分愉しみました。かつて(20世紀中)はこの価格(@926)でも充分”廉価盤”だったんです。(でもLPだったら3枚分だった)

ジェルジ・シャンドールはハンガリー出身の伝説的技巧派のピアニスト(1912〜?)でして、教育者としても著名。

 名曲である「第1番」を聴くたび、ワタシは”旋律がない”〜リズムの変化と強弱だけで成り立っているような印象を受けます。強面な作品だけれど、ジェルジ・シャンドールはリリカルで余裕の明快なる演奏ぶり・・・これはリヒテルによる、極度に集中力の高い印象が脳裏に残っていたのかな?もっと強靱で叩き付けるようなピアノ・ソロ作品かと思っておりました。ホルライザーのオケは不器用ですよ。アンサンブルに精緻さを欠くけれど、硬派に間違いはなくて、ヘロヘロな鳴らないバックということじゃありません。リズムが硬直化していて、時にソロと妙な緊張感(息が合わない状態)を作り出しておりました。

 第2楽章は怪しい歩みですね。引き続く打楽器(もう一方の主役だと思います)のまま、終楽章は金管の象のような雄叫びを呼び込みました。若手技巧派なら、もっとバリバリ正確にやっつけるんだろうな、微妙な”緩さ”が味わいになっているソロ、そしてオーケストラ。音質は非常に良好でして、現代の耳で確認して、そう問題を感じません。

 第2/3番は若きミヒャエル・ギーレンがバックを担当しております。未だ30歳そこそこ。このCD中他の伴奏担当とは一線を画する非常に立派なもの(アンサンブルも優秀)で、リリカルな表情と明るさがとてもわかりやすい。もともと作品が馴染みやすいのかも。シャンドールも強面技巧より、繊細な味わいが前面に出て、この2枚中でも白眉の水準だと思います。ピアノの音色が暖かく響いて、硬質っぽい疎遠感がないんです。第3番第2楽章「アダージョ」は切ないメルヘンですな。音質も良好。

 「2台ピアノと打楽器のためのソナタ」・・・これは結局、録音が少ないんでしょうね。人気ない作品なのかな?久々の再聴は、まったく(子供の頃からの)印象変わらず!あえて加えるならば、意外と音質がよろしい、ということくらいか。

 シロウト印象で申し訳ないが、これも”旋律がない”〜リズムと強弱だけ+打楽器の響きの変化だけで聴かせている、まったくエキサイティングな音楽だ、ということです。(第3楽章にはコミカルな旋律が愉しめるが)たった4人の演奏だけれど、巨大な広がり(以前の自らの表現では”最小限の楽器編成で無限の広がり”)を感じます。Bach ですな。相変わらずリリカルな味わいのピアノであり、おそらく打楽器は超絶技巧、打楽器の多彩かつ刻々と変化する”色付け”をたっぷり堪能できます。

 強面でもない、喧しくもない、美しい作品であり、演奏であります。名残惜しく、小太鼓の後ろ姿が去っていくようなラストも印象的。

 「ラプソディ」(「スケルツォ(ブルレスク)」も)は1904年初期作品となります。Liszt風であり、メロディアスで、ゴージャスなテクニックを披瀝すべき作品であります。ラインハルトのバックは少々響きが濁りますね。アンサンブルもかなり厳しい。(南西ドイツ放響って、こんなオケだったか?)ピアノ・ソロは鮮やかであって、まったく雄弁でした。こういった旧来スタイルの作品のほうが、演奏映えするかも知れません。

 「スケルツォ(ブルレスク)」のみ、おそらく協奏的作品揃えるために追加録音したものでしょう。ルクセンブルク放送管弦楽団のアンサンブルは、ちょっと散漫でいただけませんね。ずばり”ヘロヘロ”系か。録音もあまりよろしくはない。ピアノは立派で鮮やかな技巧ですよ。後年のドライな作風とは異なるが、Liszt風から少しずつオリジナリティを発揮してきた感じであって、もちろん甘美な旋律もたっぷり。

 後半がちょっと(オケが)ダレ気味だけれど、たっぷり硬派Bartokが愉しめるCD2枚分也。

(2007年3月23日)


 「ソナタ」は、ワタシとBartokとの出会いの曲です。小学生の時、雑誌の付録に「ゲルマニウム・ラジオ」が付いていて、しばらくイヤホン(片方のみ)で聴いていたと思うのですが、その時この曲に出会いました。そこいらのガキが貧しい音の環境で聴いても、一撃で心臓を鷲掴みにしてしまうほどこの曲は魅力的。当時のワタシには「協奏曲」としか聴こえなかった記憶もあります。

 数十年経った今聴いても、その衝撃はなんら変わらない。心の奥底から沸き上がるような不安感、激しいリズム。ピアノを旋律楽器としてでなく、打楽器として、リズムと響きの多彩さで表現していく天才の作品。現代人に避けて通れない悲劇の数々への直視を連想させ、「何故、こんな鋭く、悲しく、冷たい音楽をわざわざ聴かなくてはいけないのか」と疑問に思いながらも、心動いてしまう不思議さに打ちひしがれるばかりです。

 演奏云々はわかりません。このCDは10年ほど前に買ったもので、こればかり聴いてきました。LPでも所有しなかった曲のはずで、切りつめられた必要にして充分な響きと緊張感があると思います。アルゲリッチとフレイレが「協奏曲版」を録音しているが、オケが蛇足と思います。原曲のほうが最小限の楽器編成で無限の広がりを感じさせて、ストレートに胸に飛び込んできました。

 録音は上々でしょう。おそらく、いくらでも録音状態のよいものはあるのかもしれないが、ワタシはこのCDに不満を感じませんでした。

 このBOXは2枚組でピアノ協奏曲が全部揃うんです。ラインハルトはVOXにBartokの録音がいくつかあったと記憶しています。「ラプソディ」のバックも録音年代的に少々音が濁る(トータルとしては出色の音質)が、余裕のサポートぶり。シャンドールのピアノは輝かしく(もうバリバリといった感じ)て、この初期の作品をわかりやすく、明るく表現してくれます。もともと民族的な、親しみやすい旋律・リズムの曲ですが。少々「甘み」もある。

 「スケルツォ」は関連曲録音を完成させるため、後で録音したものでしょう。当時のVOXの主力・ルクセンブルグ放送管が登場。いつもながら芯のない、不安げなアンサンブルが懐かしい。曲的には、かなり浪漫的で官能性も感じます。ピアノ・ソロは少々派手すぎるくらいでわかりやすい。(2002年1月17日)


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written by wabisuke hayashi